六本木ヒルズ森タワーの最上階に位置し、東京で最も高所にある現代美術の企画展を開催する森美術館が今年で開館20周年を迎えます。ということは六本木ヒルズも20周年ということになります。
森美術館開館20周年を記念展「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」が開幕したので早速内覧会に参加させていただきました。
今回の展覧会は「ワールド・クラスルーム」に続く20周年記念展の第二弾。環境や生態系、そして人間をテーマにした約100点の作品が4つの章で紹介されています。
もはや避けて通れない喫緊の課題でもある環境問題に現代のアーティストたちがどのように対峙し、どのな未来を描いているのか知ることができる機会です。
会期中に何度か足を運んで随時追記したいと思います。
PR展覧会構成
展覧会は「第1章 全ては繋がっている」、「第2章 土に還る 1950年代から1980年代の日本におけるアートとエコロジー」、「第3章 大いなる加速」、「第4章 未来は私たちの中にある」の4つのセクションで構成されています。
出展アーティストは34名、約100展の作品が出展されています。
それでは、各セクション事にいくつか作品をピックアップしてご紹介します。
第1章 全ては繋がっている
展覧会の冒頭はハンス・ハーケからスタートです。
▲1960年代から活動するドイツのコンセプチュアル・アーティストコスーストで、1965年から1972年にかけて制作された生物学的彫刻「システム」の記録が展示されています。
▲ひときわ目立つのがニナ・カナルの《マッスル・メモリー(5トン)》。
約5トンにもなる貝殻を敷き詰めたインスタレーションで、鑑賞は自由に貝殻の上を歩き回ることができます。ただ貝殻は危険なので素足、ハイヒールなどを履いていくのは避けましょう。
開幕当初は大きな貝殻が敷き詰められていますが、会期が進むにつれ多くの鑑賞者が歩き回り、貝殻は踏み潰され小さく、そして粉々になっていくと思います。まさに人間が環境に対して影響を与えていることを実証するような展示です。
その貝殻が砕けていく様子も何回か訪問してレポートしたいと思います。
▲開幕1週間後。
大きめの貝殻はほとんどが砕けてきました。
▲開幕3週間後。一部は砂粒のように細かく砕けていますが、まだまだ貝殻の原型を留めています。
そろそろスニーカーで歩いたくらいでは砕けなくなってきているので、体重のある方大歓迎。
▲リトアニアの映像作家エミリヤ・シュカルヌリーテの《時の矢》。約16分のビデオ・インスタレーションです。
時間を超越したSFチックで幻想的な映像作品です。
▲水の底に沈む古代の都市、海底で稼働するハイテク装置、古代か遙か未来の海を往く人間らしき生物・・・地球が水の惑星でもあることを再認識させてくれる映像です。
第1章ではこのエミリヤ・シュカルヌリーテの作品の他に、タイのアーティスト、アピチャッポン・ウィーラセタクンの《ナイト・コロニー》という作品も上映されています。
2本併せても30分弱です。これらふたつの映像作品は必ず観ておきたい作品です。
第2章 土に還る 1950年代から1980年代の日本におけるアートとエコロジー
第2章では日本の高度成長期に活動していた日本人アーティストたちの特集です。
ただ第2章はほとんどの作品が撮影禁止となっていて、ビデオアート時代の中谷芙二子、中西夏之や岡本太郎といった作品を紹介できないのが残念です。これらは実際に会場に足を運んでみてください。
古来から長く自然と親しんで来た日本のアーティストが近代化による弊害の結果、より環境やエコロジーに向かい合わなかればならなくなった時代で、もしかしたら図らずも世界の先端でこうした問題と向き合わざるを得なかったのだと感じさせます。
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第3章 大いなる加速
第3章では急激な工業化、グローバル化による地球環境の変化が加速し、それに伴い表現活動も先鋭的にならざるを得ない現代のアーティストたちの作品です。
▲クウェート籍のアーティスト、モニラ・アルカディリの《恨み言》。
真珠をモチーフにした球体がぶら下がる空間に言葉(恨み言)が流れるインスタレーション。
真珠と人間の関係や工業化やグローバル化による社会や環境の変化などを表現しています。
▲パリと日本を拠点に活動する日本のアーティスト保良雄(やすら・たけし)のインスタレーション《fruiting body》。
自然界から得られる大理石と、人間の経済活動によって生み出された人工的なスラグを使った作品。
金属音が鳴り響き、電球が点滅する空間です。
▲第1章のエミリヤ・シュカルヌリーテとアピチャッポン・ウィーラセタクンとあわせて全部鑑賞したいアリ・シェリの映像作品は18分です。3つの映像を全部見ても1時間はかかりませんから2時間くらいの鑑賞時間を想定して訪問したいところです。
第4章 未来は私たちの中にある
最終章はアートの力で未来を再考し構想していこうという、この展覧会のメインテーマとなるセクション。
▲ハンガリー出身でアメリカで長く活動するアグネス・デネス(アグネス・ディーンズとも。Agnes Denes)は未来とアート、環境とアートというテーマで知られ、ある意味「私たちのエコロジー」展を体現しているようなアーティストです。
その代表作である「生きているピラミッド」の記録写真が展示されています。
▲日本を代表するコンセプチュアル・アーティストの松澤宥(まつざわ・ゆたか)。
あの草間彌生が渡米する以前、師と仰いでいたアーティストですが本業は高校の数学教師。長野県の下諏訪というローカルの地からずっと世界を見つめてきたアーティストです。
その松澤 宥の代表的な作品《消滅の幟》の記録やΨ(プサイ)の部屋で描かれた連作シリーズも展示されています。
このように最終章に来るとアートが発信する力によって激変する環境のその先に希望が見えてくるような構成になっている素晴らしい展覧会です。
また、銀座の「銀座メゾンエルメス フォーラム」では関連企画として「エコロジー:循環をめぐるダイアローグ」展が開催されています。そちらは二部に分かれていて最初が《ダイアローグ1:「新たな生」崔在銀(チェ・ジェウン)展》で10月14日から2024年1月28日までの開催、第二部が《ダイアローグ2:「つかの間の停泊者」展|ニコラ・フロック、ケイト・ニュービー、保良雄、ラファエル・ザルカ》で2024年2月16日から5月31日までの開催です。
六本木から銀座までは地下鉄日比谷線で10分の距離ですから、森美術館と銀座メゾンエルメス フォーラムを併せて訪問してみましょう。
PRミュージアムグッズ
まだ展覧会も開幕したばかりで図録は予約受付中でした。
▲展覧会図録 3,960円で12月に刊行予定です。
それ以外に定番のトートバッグ、リサイクル素材を使った軍手など展覧会のテーマに沿ったグッズ類が販売されています。
写真撮影について
一部作品をのぞき写真・動画ともに撮影可能です。
動画の撮影は1分以内です。
フラッシュ、三脚、自撮り棒は使用不可です。
森美術館で同時開催の展覧会▼
六本木ヒルズ展望台東京シティビュー▼
俯瞰で建築巡り▼
基本情報
森美術館開館20周年記念展 私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために 環境危機に現代アートはどう向き合うのか? 2023.10.18(水)~ 2024.3.31(日)会期中無休10:00~22:00 ※火曜日は17:00までチケット料金オンラインで購入すると()の料金[平日] 一般 2,000円(1,800円) 学生(高校・大学生)1,400円(1,300円) 子供(4歳~中学生)800円(700円) シニア(65歳以上)1,700円(1,500円)[土・日・休日] 一般 2,200円(2,000円) 学生(高校・大学生)1,500円(1,400円) 子供(4歳~中学生)900円(800円) シニア(65歳以上)1,900円(1,700円)事前予約制(日時指定券)オンライン購入森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階) 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー アクセス:東京メトロ日比谷線「六本木駅」1C出口 徒歩3分(コンコースにて直結)、都営地下鉄大江戸線「六本木駅」3出口 徒歩6分、都営地下鉄大江戸線「麻布十番駅」7出口 徒歩9分、東京メトロ南北線「麻布十番駅」4出口 徒歩12分、東京メトロ千代田線「乃木坂駅」5出口 徒歩10分 |