旧朝香宮邸の素晴らしいアール・デコ建築だけでも見応えのある目黒・白金台の東京都庭園美術館で現在開催されているフィンランドのアートグラスの展覧会「フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン」を紹介します。
この展覧会は、1917年にロシアから独立を回復したフィンランドで花開いた芸術的志向の高い「アートグラス」に着目し、現在に至るまでの8名のデザイナーの作品による展覧会です。
会期は2023年6月24日から9月3日まで。夏休みに美術館の庭園で涼しいひと時とモダンなアートグラスの世界を楽しめます。
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フィンランド・グラスアート
デザイナーが自ら「アートグラス」の名のもとにデザインし、職人との協働作業によって生まれた作品に着目した展覧会です。
表現者たちはガラスという素材といかに対峙し、探求し、創作の可能性を押し広げていったのか―。変わらず輝き続ける作品の魅力とともに、各時代・各作家たちのガラスへの信条と挑戦、込められたメッセージや想いを垣間見ることができる機会で。
芸術性の高いアートグラスを制作している工房、今はイッタラ社しか残ってないそうで、そのためデザイナーもイッタラで活躍した人たちがメインになっています。
ということはあの夫妻の作品も展示されているのでしょう。
見逃すわけにはいきませんね。
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アルヴァ&アイノ・アアルト
館内で最初に目に入る大広間はアルヴァ&アイノ・アアルトの作品が展示されています。
▲左が「フィンランディア」、右が「サヴォイ」。どちらもオリジナルは1937年です。
▲大食堂で展示されている「アアルト・フラワー」。
斬新なデザインの提案でため息が出るような作品です。
▲製作途中のアアルト・ヴェースとその木型。
製作するたびに木型が燃えるので、一つ一つのシワや表面が微妙に異なるのだそうです。
グンネル・ニューマン
大食堂と大客室で大きくフィーチャーされているのが戦前期に活躍した女性デザイナー、グンネル・ニューマンの作品です。
▲シンプルでミニマルなデザインが特徴。
▲庭園美術館が建てられた1930年代のアールデコの時代、フィンランドではこのようなデザインのグラスが制作されていたのです。
フィンランドのアートグラスとアールデコが交わる空間を堪能できます。
カイ・フランク
”フィンランド・デザインの良心” とも称されるガラス頭囲デザイナーがカイ・フランク。
このあたりからがフィンランド・デザインの黄金期です。
▲これは引退後の作品ですがガラスとは思えないような質感。常に新しいことにチャレンジしていのですね。
▲2階広間で展示されいる「ヤマシギ」。
一点物の超絶技法による作品です。
デザインもですが、それを実現するガラス職人たちの技法にも注目です。
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主な展示作品
カイ・フランク以降、現代に至るまでの5名のデザイナーの作品が続きます。
▲庭園を借景にした展示も素晴らしいです。
▲浴室にも展示されています。
ミッドセンチュリーの作品です。
▲気泡入りガラスをカットした作品。
もうこうなると完全にアート作品です。
▲ディズニーの何かに似ている作品。
と思ったら、本当にディズニーからの依頼で制作された作品でした。
▲いつもカーテンが閉じられ薄暗い2階の書庫。
ここにも展示されていますが、薄暗い室内で光り輝くガラスはさらに魅力を増して見せてくれます。
▲最後は新館で新しい世代の作家たちの作品が並びます。
ざっと駆け足ですがここ100年で勃興したフィンランドのグラスアートの世界を時系列に一気に鑑賞することができます。
ファンの多いフィンランド・グラスアートですが、アートとして工芸としてもそのデザインのセンス、職人たちの技法と見どころ満載です。
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写真撮影
今回の展覧会は館内も含め原則撮影可能です。
▲大食堂に作品が展示されている様子も撮影可能。
▲大客室も撮影可能です。
展示されている作品はもちろん、展示されている空間も撮影して後々楽しめるのはうれしいです。
もちろんフラッシュや三脚、自撮り棒の使用は禁止ですし、いくつか上映されている映像も撮影禁止です。詳しくは現地での指示に従うようにしてください。
庭園美術館館内
この展覧会はいろいろと遊び心のある仕掛けがあって、そこもまたポイントです。
▲一点物と思われるオイヴァ・トイッカの「バード・バイ・トイッカ」、鳥類を形どったガラス作品が館内各所に展示され、その鳥たちに案内されて館内を巡ります。
これは大広間に置かれた作品。
”こちらへどうぞ→” というメッセージが日本語とフィンランド語で書かれています。
▲順路案内の通りに巡ると1階は大広間〜喫煙室〜大食堂〜大客室〜小客室という順番なのですが、小客室を出た香水塔のところには ”次は2階へ” というメッセージが添えられています。
▲そして最後の新館展示室の出口には ”よい一日を!”
▲館内の出口には ”ありがとうございました” 、”またね” とありました。
ほのぼのする展示構成でした。
▲ポストカードなどのグッズ類も充実しています。新館の庭園美術館ミュージアムショップで販売されています。
ここまでざっと見て1時間ほど。映像作品もありますが長時間のものはありませんから、1時間あれば堪能できる展覧会です。
なおこの展覧会、今年は山口、岐阜、兵庫と巡回する予定です。
サマーナイトミュージアム
「フィンランド・グラスアート」展は東京都の開催する「サマーナイトミュージアム」キャンペーンと開催期間が重なります。
普段は夜間開館しない庭園美術館ですがこのキャンペーンの一環で特別に夜の21時まで夜間開館します。しかも特典付き! 夏の夜、涼しくなった時間に庭園美術館で展覧会の鑑賞や庭園の散策などいかがでしょうか?
夜間特別開館日:庭園美術館と庭園
7月21日、28日
8月4日、11日、18日、25日
17:00 – 21:00
特典:学生無料、一般・65歳以上は団体料金を適用(1,120円と560円)
なおオンラインによる日時指定制です。
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Cafe TEIEN
新館に併設されている庭園美術館のミュージアムカフェ Cafe TEIENではいつも展覧会の特別メニューが提供されています。
これも庭園美術館の楽しみの一つです。
今回は、オイヴァ・トイッカの「ボンボン」をイメージしたアプリコットのムースです。本物のボンボンは新館展示室のトイッカのコーナーに展示されています。
なかなかのお値段ですが、ここのケーキは本当に美味しいので間違いないと思います。
▼ミュージアムカフェ特集
基本情報
2023年6月24日(土) – 2023年9月3日(日) 10:00-18:00 月休 (7月17日は開館、18日は休館) 観覧料:一般 1,400円、大学生 1120円、中高生・65歳以上 700円 東京都庭園美術館 港区白金台5丁目21−9 MAP アクセス:JR山手線目黒駅東口、東急目黒線目黒駅正面口徒歩7分 都営三田線・東京メトロ南北線白金台駅1番出口徒歩6分 |
▼アンリラパンによるアール・デコ建築
▼運が良ければ出会える庭園美術館の素敵なシーン
▼庭園美術館の茶室
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