7年ぶりの個展
六本木のピラミデビルにあるオオタファインアーツでの個展は実に7年ぶりと言うさわひらき。
大好きなアーティストの個展と言う事で早速観に行って来ました。
さわひらきの作品は、2018年の神奈川芸術劇場での個展「さわひらき 潜像の語り手」以来なのですが、2019年の恵比寿映像祭や川村記念美術館での「ふたつのまどかーコレクションと5人の作家たち」などグループ展で作品を観ているので、個人的には久しぶりという感じではありません。
作品観賞の注意点
まず、オオタファインアーツの前に到着すると、ギャラリーの扉は開いてるもののガラス張りの入り口には暗幕がかけられ中が見えないようになっています。さわひらきの作品は映像なので、暗くする必要があるからです。そして、看板にはインターホンを押すよう書かれています。インターホンを押すとスタッフが中から出て来て、検温・消毒後に連絡先を記入する流れです。これらが終了すると中へと促されます。▼
/home
映像作品《/home》のタイトルの意味は日本の実家の喪失から来ています。この作品はデビューから15年後に当たる2017年当時、高校生まで自分が暮らしていた実家を撮影したものです。両親の転居のために家具が全て取り払われ、何もなくなったその家を縦横無尽に飛行機が飛びまわります。いつでもあると信じて疑わなかった実家、海外に拠点を移してからも、それは日本においての自分の居場所であっただろうその家を失った喪失感を表したのがこのタイトルです。
ノスタルジー
家具が取り払わられた家の中の壁に残されたシミ、取り残されたカーテンや照明器具は誰が観ても過ぎ去った年月を想起させるには十分なくらい使い古されています。この作品でアーティストは、時間や場所、またそこから生ずる記憶や意識、そして誰もが必ず経験したことのある過去への執着や望郷などを飛び回る飛行機に乗せて表現しているように感じました。
さわひらきの映像作品にはいつも切ない旋律を感じます。そして、その旋律はいつも美しく儚いのですが、心に強く深く入り込んでくるのです。
ドローイング
今回は映像作品「/home」意外にもドローイング作品が出品されています。
このドローイングは映像作品ともリンクしていて、映像作品制作のきっかけとなった実家の喪失を経て、アーティストは自分が近代日本で始まったニュータウン的幻想が自分に影響を及ぼしていると感じ、かつて社会全体が「家」に対して思い描いた希望や幻想の象徴であるニュータウンに着目して制作したドローイングです。▼
平日だったら、おそらくギャラリー空間に一人きりで作品と対峙できる思います。是非、足を運んでみてください。
さわひらき「/home」
2021年2月20日 – 4月3日 11:00-18:00 日・月・祝休