国立新美術館でイギリス人アーティストダミアン・ハースト/Damien Hirstの日本初個展「桜」がカルティエ現代美術財団主催で始まりました。
早速鑑賞してきましたのでレポートします。
ダミアン・ハースト
ダミアン・ハーストと言えばなんと言ってもホルマリン漬けのサメや牛の作品“Natural History”を思い出す方が多いでしょう。
このシリーズは真っ二つに切断したり輪切りにした死んだ動物をホルマリン漬けした作品です。
この鮮烈なデビューから作品のテーマは常に生と死です。
引用元:「I Want to Spend the Rest of My Life Everywhere, With Everyone, One to One, Always, Forever, Now」Damien Hirst Booth-Clibborn Editions
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私が初めてダミアン・ハーストの作品を観たのは、おそらくホルマリン漬けのサメの作品「生者の心における死の物理的な不可能さ」だったと思います。多分、ロンドンのサーチギャラリーが初対面?だったんじゃないかなぁ。
このシリーズは、2000年のアメリカ映画「ザ・セル」をはじめとしてや広告や映画などで引用され、日本の漫画「ジョジョの奇妙な冒険第5部」でも輪切りのホルマリン漬けが出てきたりします。
また、2017年のベニスビエンナーレの時期に「Treasures from the WRECK of the Unbelievable/難破船アンビリーバブル号の宝物」という「嘘」を前提とした作品を展示し大変話題になりました。この莫大な予算をかけた嘘の展示は、ベニスビエンナーレの公式展示ではなかったと言うんですからダミアンらしいです。
このように90年代のデビューから現在までダミアン・ハーストの勢いと活躍は止まることを知りません。日本でもあちらこちらで目にしていたので、まさか日本での個展が今回初とは驚きました。でも、そう言われてみればそうかもしれない。
「桜」だけの展覧会
国立新美術館の2階展示室に最新作の「桜」の巨大絵画が24点。本当にそれだけでした。知ってはいたけれど、彗星のごとくデビューした90年代から彫刻やインスタレーションなどその表現方法は幅広く、常に度肝を抜くものばかりだったダミアン・ハーストの日本で初の個展ですよ。なんか他にもあるんでしょう?なんて淡い期待もあったのですが、見事に裏切られました。
3年かけて描いた桜の絵画は全部で107点、その中からダミアン・ハースト自身が選んだ24点が美術館の白い空間に並んでいます。
展覧会場で配布されているガイドマップです。ガイドマップがあるのでキャプションは一切ありません。展示室には純粋に本当に、ただただ「桜」の絵画並んでいるだけです。
現在は、このリーフレットが桜色の紙になっているようです。▼
展覧会風景、全ての作品とタイトルの照合についてはこちらの動画を参照ください。▼
PR巨大な桜
一番奥に展示されている一番巨大な作品「この桜より大きな愛はない」は549cm X 732cmもあるのです。これはでかい!圧巻です。
さすがに運搬等々のことを考えたら1枚のキャンバスなわけがなく、4枚のパネルの組み合わせでした。▼
近くで見ると絵の具がぼたぼたと滴り落ちていて、激しいアクションによって描き上げられたのがよくわかります。
これは、アクションペインティングのジャクソン・ポロックからインスピレーションを得ています。ただ、ポロックの場合はご存知のようにドリッピングと言って、上から絵の具を落としていましたが、ダミアンは立てかけたキャンバスに向かって絵の具を投げつけています。▼
2連の桜
今回の出品作品24点中、22点が個人蔵のプラベートコレクションです。その「個人」が何人いるのか、全作品を一人がコレクションしているのか、それとも複数なのか、その人数はわかりませんが、個人ではない作品2点のうち1点は、展覧会の主催しているカルティエ現代美術財団の所蔵作品です。
その作品がこの2連画「神聖な日の桜」です。▼
漢字桜
下の写真は一番奥のスペースです。右の2点並んでいる作品の背景が青い方のタイトルはなぜか「漢字桜」です。どこがどう漢字なんだろうか?▼
PR展示風景
中央のスペースの展示風景です。このスペースは四方の壁に3作品づつ展示されています。
桜の木の下から眺めているような風景を描いたというこのシリーズに囲まれていると一足早く春がやってきたようです。▼
満開ですね。右も左も前も後ろも超満開です。まさに満開の桜の世界に没入です!▼
桜は元々ダミアン・ハーストのお母さんが描いていたモチーフなんだそうです。
一番最初の部屋の様子です。▼
逆サイドからの撮影▼
見逃し厳禁の映像
一番巨大な桜作品の更に奥にも回ってみるのをお忘れなく。カルティエ現代美術財団の紹介のコーナーと共に今回の桜の作品について語るダミアン・ハーストのインタビュー映像があります。これを見るとなぜダミアン・ハーストがこのような絵画を描くに至ったのかがよくわかります。
そこには、ピエール・ボナールやピカソ、フランシス・ベーコン、前述したジャクソン・ポロックなどの影響について語ると共に、90年代は具象的な油画というものに対して自身が否定的であったことなど、絵画についての自身の取り組みと解釈についてを語っています。
手の痕跡が残らないようにどんどんミニマルになり、ずっとドットの絵画を描き続けてきたダミアン・ハーストですが、ここへ来て原点回帰するかのように、具象絵画「桜」の連作を3年に渡り描きつづけた理由が明かされます。
常に時代の先端をいくバリバリのコンセプチャルアートを制作し続けてきたダミアン・ハーストがなぜこのような作品に至ったのか、ちょっと謎だったので、その経緯や理由がわかるこのインタビュー映像(24分)は見逃し厳禁です。
しかし、時間がない方やもう一度観たい方はこのページでも鑑賞可能です。
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ミュージアムグッズ
出口のところにあるミュージアムショップは意外にもとてもあっさりしていて、桜のポストカードが数種類と展覧会図録の販売だけでした。
もっといろんな展開しているのかと思っていたのでびっくりでした。▼
この展覧会は「Damien Hirst: Cherry Blossom」という名の国際巡回展で、ついこの1月までパリのカルティエ財団現代美術館で開催されていました。その国際巡回展自体の図録は英語版ですが発売されています。
また他のダミアン・ハーストの作品集で入手しやすいものを紹介します。どれもAmazonから購入可能です。
撮影について
展覧会の撮影は可能です。入り口にハッシュタグが書かれていたので、撮影してどんどん拡散してほしいということでしょう。ただし、動画の撮影はNGです。
チケット
現在この展覧会は予約制ではありません。美術館で当日券の購入も可能ですが、オンラインチケットを事前に購入しておけば、いきなり展示室に入れるのでスムーズです。
予約制ではないので、オンラインチケットは、いつ何時に行っても入場可能です。
桜の季節に
国立新美術館の周辺には桜の木がたくさんあります。ですから桜の季節に足を運べば、美術館の中でも外でも桜を鑑賞することができます。
ダミアン・ハーストの描く桜と実物の桜と両方堪能できる日が待ち遠しいです。満開の頃に再訪しようと考えています。
この写真は過去画像です。▲
2022年3月、美術館の桜が咲き始めました!いよいよ、館内も館外も桜で溢れる季節到来です。▼
国立新美術館では、「桜」の他にメトロポリタン美術館展が開催されています。
また、吉岡徳仁のガラスの茶室の展示も同時に鑑賞できます。ガラスの茶室の詳細はこちらから▼
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展覧会基本情報
2022年3月2日(水)~5月23日(月)10:00~18:00 金土〜20:00 火休(5/3開館)
国立新美術館 企画展示室 2E
東京都港区六本木7-22-2 MAP