恵比寿ガーデンプレイスにある東京都写真美術館や周辺ギャラリーなど複数ヶ所で毎年開催される恵比寿映像祭も今年で16回目です。
東京都写真美術館ことTOP Mueseumだけでなく恵比寿はもちろん、中目黒や代官山など地域連携プログラムを見て回るのも楽しみの一つです。
今年はどんな作品が観られるのでしょうか。
東京都写真美術館をはじめ、地域連携プログラムに参加している近隣ギャラリーの様子いくつかピックアップしてレポートします。
▲毎回恒例のシールラリーでもらったトートバッグ。各所にあるシールを3つ集めると写真のトートバッグがもらえます。
スポンサーリンク東京都写真美術館
恵比寿映像祭の主催であり、メイン会場の東京都写真美術館から紹介します。
写真美術館の地下、2階、3階と全ての展示室が恵比寿映像祭の会場となっています。
推奨の順路は2階→3階→地下の順番です。
各フロアの展示で個人的に気になった作品をピックアップしてご紹介します。
2階
2階はなんと23組のアーティストの作品が展示されています。一番密度が濃いのがこの展示室です。
さらに、恵比寿映像祭の参加アーテイストの作品だけでなく、東京都写真美術館が所蔵している写真作品もところどころに展示されています。
たとえば米田知子、岡上淑子、アピチャポン・ウィーラセタクン、ウィリアム・クライン、ウィリアム・ユージン・スミスなどなど。
2階ではダラ・バーンバウムや中谷芙二子など大御所女性アーティストやジョン・バルデッサリやマルセル・ブロータスなどの1970年代の作品と若手アーティストの近年の作品が混ざり合って展示されています。
なかでも注目したいのは、物故作家であるマルセル・ブロータスの作品です。”映像祭”と謳っていますが、マルセル・ブロータスの作品は映像ではなく、ましてや写真でもなく音声のみです。
タイトルは「猫にインタビューする」。1970年にデュッセルドルフで録音されたもので、猫に話しかけ、インタビューをしようと試みるのですが、当然ながら返答は「ニャー」という鳴き声だけです。展示室のスピーカーの下に行くとこの作品を聞くことができます。
この作品の近くには、コリー・アーケンジェルの「Drei Klavierstücke op.11」も猫が登場します。アルノルト・シェーンベルクが作曲した《3つのピアノ小品 作品11(Drei Klavierstücke op. 11)》をピアノを弾く猫のYouTube動画を切り貼りし編集して楽曲を完成・再制作した映像作品です。これら2作品は猫好きにはたまらない作品です。
今回の恵比寿映像祭で一番楽しみにしていたのは、この世で一番好きなアーティストと言ってもいいくらいのフェリックス・ゴンザレス=トレスです。
当然、トレスは90年代にHIVで亡くなっていますから旧作の出品です。なんと!1995年にNYのグッゲンハイム美術館で開かれた個展の時に出品されていた“Untitled” 1992/1993年と近所で再会することができました。涙涙。
▲実は、このトレスの作品は、「《Untiltled》は、紙片としての「個」と彫刻としての「総体」を同時に成し、鑑賞者が展示空間から持ち出すことができるようにすることで、作品の変わりゆく意味や価値について問いかける。」というもので、95年のNYのグッゲンハイム美術館の展覧会時がそうであったようにここでも鑑賞者が持ち帰ってもいいのです。
積極的に持って帰っていいですよとはどこにも書いていませんし、案内もしていませんが、持ち帰っていいのです。しかしながら、一応私は「NYの個展の時は持ち帰って良かったけれど、ここでも持ち帰っていいのか?」と展示室内のスタッフの方に確認してOKをもらって持ち帰ってきました。
ちなみに2階会場の受付でお願いすると輪ゴムが1本もらえます。でも輪ゴム持参で行くとしっかり止めることができるので持ち帰る時に便利です。
また、今回の恵比寿映像祭はコロナ明けということもあるのか、パフォーマンスやライヴイベントなどが多めです。
訪問した日は、豊田市美術館での展示も記憶に新しい関川航平が展示室の観客に混じってパフォーマンスを繰り広げていました。
また、パフォーマンスだけでなく関川航平特性ステッカーを展示室入り口で配布しています。
これらステッカーは不定期で作家自身が美術館内に貼っていきます。例えばエレベーター内に金のステッカーが貼ってあったらそれは作品です!
3階
3階の展示室は、2作家の作品の展示です。
2023年から始まったコミッション・プロジェクトで特別賞を受賞した金仁淑と荒木悠です。
コミッション・プロジェクトは3年サイクルで展開されます。
▲金仁淑の「House to Home」
▲荒木悠は映像作品と写真などの展示で構成されています。
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地下階
地下階では4組のアーティストの作品が展示されています。
まず、冒頭は青木陵子+伊藤存の「9歳までの境地」です。
▲この空間は流れている映像、聞こえてくる音、見せ方など秀逸で一番心地よく鑑賞できました。
写真ではこの作品の良さが全く伝わらないので是非訪問して体感してほしい作品です。
▲ロジャー・マクドナルドによるフェンバーガーハウス・ドームの「宇宙意識美術館」で、2023 年9月から11月まで開催された「ドーム神殿:アヴィヤクタ・チャイティヤ(Dome Temple: Avyakta Chaitya)」展の東京都写真美術館への巡回展という位置付けの作品です。
宗教、オカルト、アストラル次元、無意識、魔法。人間の目に見えないものを具現化したあらゆる作品を目にすることができます。
▲今年の恵比寿映像祭のテーマ《月へ行く30の方法》は、土屋信子が継続的に発表しているインスタレーションのタイトルから引用しています。いわば今年の恵比寿映像祭のアイキャッチ作品的なインスタレーションということになります。
以前森美術館の「六本木クロッシング2019展:つないでみる」で見た時は萎んでしまったピンクの被膜の作品と再開しました。今回は樹脂?で固まっていたので萎むことはなさそうです。
撮影について
今回東京都写真美術館では、写真撮影不可な作品には禁止マークがついています。動画撮影は全て禁止です。
恵比寿ガーデンプレイスセンター広場
毎回大掛かりな作品の展示が行われる広場の作品です。
今年は1作家の作品ではなく複数の作家の映像作品が順番に投影されます。
共通するのは全てジェネラティブ・アート作品であることです。
▲ベンチに座って映像を見れるようになっていますがかなり寒い!
▲そして、今年初お目見えが「縁試し」です。おみくじのように、箱の中から一枚好きなものを選んで開けてみると自分に合った作品が描かれているというもの。
私は、青木陵子+伊藤存、ヴィム・ヴェンダースでした!
このブログに掲載した作品は全て入場無料で鑑賞できます。
基本情報
恵比寿映像祭2024「月へ行く30の方法」
2023年2月2日(金)~2月18日(日) 月休 (ただし2/12(月・振休)は開館し、2/13(火)休館) 3階展示室のコミッション・プロジェクトのみ〜3月24日(日)まで 10:00~20:00(最終日は18:00まで) 2月20日(火)~3月24日(日)(コミッション・プロジェクト展示)は10:00~18:00/木・金は20:00まで 入場無料(一部のプログラム有料) 目黒区三田1丁目13−3 恵比寿ガーデンプレイス内 MAP アクセス:JR恵比寿駅東口より徒歩約7分、東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩約10分 |
YEBIZO MEETS 地域連携プログラム
地域連携プログラムは全網羅していませんが、巡った場所をレポートします。
各会場ごとに開館時間、休館日は異なります。
MA2 Gallery
川内倫子 個展
2024年2月2日 – 2024年2月24日 13:00-18:00
▲写真、未公開映像作品が並ぶギャラリー内の様子
▲2階の写真はモノクロの写真にほんの一部分を手彩色している作品。静かでとても美しかった。
▲1階から4階まで川内倫子の新旧の作品をみることができます。東京オペラシティアートギャラリーでの素晴らしい個展「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」の記憶が蘇ります。
▲恵比寿映像祭の参加施設ではありませんが、東京都写真美術館にもほど近い恵比寿のブックストア「POST」でも、川内倫子の作品展が開催されています。
詩人の谷口俊太郎と共作した写真絵本「いまここ」の発売を記念した展覧会で、MA2ギャラリーでの展覧会とちょうどタイミングが合いました。恵比寿映像祭と併せて、あるいはMA2ギャラリーと一緒に訪問してみてください。
NADiff a/p/a/r/t
原田裕規『とるにたらない美術——ラッセン、心霊写真、レンダリング・ポルノ』刊行記念ブックフェア
2024年2月2日 – 2024年2月18日 12:00-20:00 2/5・2/13休
こちらの会場はブックフェアだったので、NaDiff Galleryで開催していた大山エンリコイサムの展示を中心に見てきました。
この展覧会は恵比寿映像祭の地域連携プログラムではありません。
▲大山エンリコイサム “Book Covers, Bookends” 2024.01.25[木]—2024.02.25[日]
▲NADiff a/p/a/r/tの上にあるスクールデリック芸術社会学研究所でも「Enrico Isamu Oyama Torus」2024年1月25日(木)〜3月10日(日) 開催中
▲ずっと見てると突然回転し始める砂時計。
なお大山エンリコイサムもスクールでレックも恵比寿映像祭の地域連携プログラムではありません。
MEM
石原友明『サッケード残像』
N&A Art SITE
ヴィム・ヴェンダースの透明なまなざし
2024年2月1日 – 2024年3月2日 12:00-17:30(2/24、3/2のみ10:00–17:00) 日月祝休
映画「Perfect Days」でヴェンダースに回帰した! と見直されているヴィム・ヴェンダースは写真家としての顔もあり、ここではヴェンダースの写真が展示されています。
つい先月まで同じ中目黒で妻のドナータ・ヴェンダースの個展が開催されていましたが、それに続き今度はヴェンダース本人の個展です。
▲これは映画「夢の涯てまでも」のクライマックスシーンとして制作されたデジタル映像を印刷したシリーズ「Electronic Paintings」。
当時の最先端映像技術だったNHKのハイビジョン技術が使われていて、そのためにヴェンダースは来日もしています。
そしてその時のヴェンダースの仕事を捉えたドキュメンタリー「ヴィム・ヴェンダース イン 東京」もこの会場で上映されています。長さは1時間ちょっとありますから全部見るなら時間に余裕を持って訪問してください。
▲こちらは通常のフィルム写真で「Written in the west」というシリーズから。
あの名作「パリ、テキサス」のロケでアメリカを訪れた際に撮ったアメリカ中西部の写真です。ヴェンダースのアメリカへの憧憬が伝わってくるような写真です。
Art Front Gallery
釘町彰:From the Land of Men
2024年2月2日(金)~2月25日(日) 水〜金12:00-19:00 土日祝11:00-17:00
▲メインギャラリーでは映像作品の展示
▲階下のスペースでは写真作品が展示されています。
今後も恵比寿映像祭を再訪、あるいは他会場を訪問したら随時追記していきたいと思います。
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