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川内倫子「M/E 球体の上 無限の連なり」 東京オペラシティアートギャラリーは作品は勿論、会場デザイン・グラフィックデザインも秀逸


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東京オペラシティアートギャラリーで始まった「川内倫子: M/E 球体の上 無限の連なり」を鑑賞して来ました。

淡く透明感のある川内倫子の写真は、決して特別ではないどこにでもある何気ない日常の瞬間ばかりです。しかし、その瞬間には優しい光と煌めく命の輝きが満ち溢れています。

そんな川内倫子の世界観にどっぷり浸かれる機会ですから、これは観に行かなくてはなりません。

川内倫子 : M/E 球体の上 無限の連なり 東京オペラシティアートギャラリー
<M/E>
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川内倫子

これまでにもいろいろな場所で川内倫子の作品を観てきましたが、思い返すとこの規模の個展は初めてかもしれません。

直近の個展は恵比寿のMA2Galleyで2021年6月に開催された「Under the same sky」

グループ展は鑑賞の機会が多く2020年ヴァンジ彫刻庭園美術館の「センス・オブ・ワンダー もうひとつの庭へ」、同じく2020年の国立新美術館「古典×現代2020 時空を超えるアート」や2018年の浅間国際フォトフェスティバルなどさまざまな場所で鑑賞してきました。

ただ、最初に川内倫子を認識したのは展覧会ではなく、2004年カンヌ映画祭で史上最年少および日本人として初めての最優秀主演男優賞を獲得した是枝裕和監督の映画「誰も知らない」のメインビジュアルの写真だったような気がします。

主演の柳楽優弥のみずみずしい横顔は、映画の内容同様に強烈に印象に残っています。

川内倫子 : M/E 球体の上 無限の連なり 東京オペラシティアートギャラリー
<4%>

展覧会構成

ライアン・ガンダーの記憶もまだ新しい東京オペラシティアートギャラリーですが、さて今回はどんな様子なのでしょうか。

展覧会は10のシリーズで構成されています。キャプションや解説は会場内にはありませんので、入口でリーフレットをもらいましょう。

リーフレットの会場平面図を掲載します。

川内倫子 : M/E 球体の上 無限の連なり 東京オペラシティアートギャラリー
会場マップ

シリーズごとに空間が区切られていて、各々ガラリと雰囲気が変わります。

川内倫子 : M/E 球体の上 無限の連なり 東京オペラシティアートギャラリー
<One surface>

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会場デザイン:中山英之

かなり工夫を凝らした会場デザインだなぁと思ったら伊東豊雄事務所出身の中山英之によるデザインでした。

中山英之は、最近だと箱根のポーラ美術館のモネ展東京都渋谷公園通りギャラリーの展覧会「語りの複数性」を手掛けています。

川内倫子 : M/E 球体の上 無限の連なり 東京オペラシティアートギャラリー
<M/E>

しかも、渋谷公園通りギャラリーの「語りの複数性」は、8人のグループ展でしたがその中に川内倫子が入っていたので中山英之とタッグを組むのは初めてではないわけです。

シリーズごとの区切りとなる壁の切り取り方が、アーチだったり、すごく高かかったりと変化があって、どこの空間も天井高は変わらないはずなのに、すごくバラエティに富んだ空間に感じるデザインでとても楽しかったです。

川内倫子 : M/E 球体の上 無限の連なり 東京オペラシティアートギャラリー
<M/E>

今回は、グループ展ではなく個展なので、川内倫子の透明感のある美しい世界観で満たされた空間です。▲

特に印象的だったのは展覧会タイトルにもなっている「M/E」の展示室の中央にある紗のようなレースのカーテンで区切られた柔らかい空間です。

この空間は材料の弾性変形が勝手に描くアールを用いたカーテンレールからレースのカーテンを吊るしています。

この偶然性による曲線の連なりがとても美しく、川内倫子の作品との絶妙な調和を生み出していました。

この朧げな空間の中には透明なアクリルの写真作品や光を帯びた内照式の写真など透明度の高い作品が並びます。

川内倫子 : M/E 球体の上 無限の連なり 東京オペラシティアートギャラリー
<M/E>

この造形が川内倫子の作品世界と相まってとても秀逸でした。▲この空間だけでも充分足を運ぶ価値のある展覧会です。

また、<M/E>の空間だけでなく、他にもさまざまな工夫がなされているので作品と共に会場デザインにも注目してみてください。

グラフィックデザイン:須山悠里

会場デザイン同様に重要なのが、展覧会に関わるグラフィックデザインです。今回のポスターや図録のデザインは、須山悠里によるもの。

デザイナー須山悠里は、小金井市私立はけの森美術館の志村信裕展や2021年東京都写真美術館の記憶は地に沁み、風を越えのポスターや展覧会図録を担当しています。

また、現在東京都写真美術館で開催されている野口里佳展「不思議な力」のグラフィックデザインも須山悠里です。

須山悠里の仕事はいつも決して主張しすぎることなく、とても上品で知性を感じるデザインです。

それだけでなく、少し憂を帯びているのに静かに輝いているのです。近年、展覧会のポスターや図録のデザインで惹かれるものはクレジットを見ると須山悠里だったということが何度となく続いています。

昨年の写美の「記憶は地に沁み、風を越え」の図録は半分ジャケ買い、すなわち装丁買いしたようなものです。

川内倫子展は会場やグラフィックデザインにも注目してみてください。

川内倫子 : M/E 球体の上 無限の連なり 東京オペラシティアートギャラリー
2種類の展覧会ポスター

10のシリーズ

2012年に開催された東京都写真美術館の個展以来の展覧会ということで、それ以降の10年間の仕事の集大成の発表の場です。シリーズは、冒頭から<Halo>、<4%>、<One surface>、<An interlinking>、<Illuminance>、<光と影>、<A whisper>、<あめつち>、<M/E>、<やまなみ>です。

川内倫子 : M/E 球体の上 無限の連なり 東京オペラシティアートギャラリー
あめつち

更に最後に<橙が実るまで>のシリーズも展示されています。

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映像作品

写真作品だけでなく映像作品も当然出品されています。

川内倫子 : M/E 球体の上 無限の連なり 東京オペラシティアートギャラリー
<Halo>

冒頭入口の低い場所にある「Halo」は4分18秒です。▲

川内倫子 : M/E 球体の上 無限の連なり 東京オペラシティアートギャラリー
<Illuminance>

アーチをくぐり椅子が用意された部屋で鑑賞する映像作品「Illuminance」は、展示されるたびに新しく映像を追加していくコンセプトの作品なので、永遠に未完の作品です。▲

この作品はクレジットに約1時間と表記されていました。座ってみられるので全て鑑賞することは可能だと思います。ちなみに私は15分くらいしか鑑賞していません。

川内倫子 : M/E 球体の上 無限の連なり 東京オペラシティアートギャラリー
<An interlinking>

細長く通路のように仕切られた展示室の先の高い位置に投影されている「光と影」は20点の写真のスライドショーで約2分です。▲

川内倫子 : M/E 球体の上 無限の連なり 東京オペラシティアートギャラリー
<A whisper>

「A whisper」は床面に映像が流れるインスタレーションで2分21秒です。▲

川内倫子 : M/E 球体の上 無限の連なり 東京オペラシティアートギャラリー
<M/E>

後半にある2つの大画面の映像作品「M/E」は5分13秒です。 ▲

そして、展覧会最後にヘッドホンで音を聴きながらモニターの映像を見るコーナーがあってそこに4つの映像があります。

各々、約7分、5分、8分、10分なので、全部鑑賞すると約30分になります。

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鑑賞時間の目安

どの展覧会でもそうですが、映像を全部見るかどうかでだいぶ時間が変わってきます。

約1時間の「Illuminance」と8本で合計約40分ほどの映像があるので映像作品だけで約1時間40分ほどかかることになります。

鑑賞時間の目安としては、映像を全部鑑賞するかどうかでかなり違ってきます。

映像を全部見るなら2時間半は考えたほうがいいでしょう。映像を適当に切り上げるなら1時間あれば鑑賞可能です。

ただし、上階の展示室では収蔵品展「連作版画の魅力」とProjectoNが開催されていますので、そちらの鑑賞時間も計算に入れると、やはり2時間は考えておきたいところです。

川内倫子 : M/E 球体の上 無限の連なり 東京オペラシティアートギャラリー

<やまなみ>Advertisement

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撮影について

展覧会は全て写真撮影可能ですが、動画撮影は禁止です。

川内倫子 : M/E 球体の上 無限の連なり 東京オペラシティアートギャラリー
<あめつち>

川内倫子の写真作品や映像作品がいいのは当然として、この展覧会は、会場デザインの柔らかさ、儚げで浮遊感のある空間の秀逸さも相まってとても印象的な良い展覧会でした。

基本情報

川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり

2022年10月8日(土)─ 12月18日(日)会期終了

11:00 ─ 19:00 月休 

11月3日(木)─ 6日8(日)はアートウィーク東京の開催にあわせ10:00 から開館

一般1,200円、大高800円、中学生以下無料

東京オペラシティアートギャラリー

新宿区西新宿3丁目20−2 MAP

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