コンテンツへスキップ

東京都写真美術館で松江泰治「マキエタCC」と「記憶は地に沁み、風を越え」とプリピクテ 東京展「FIRE / 火」


シェア:
記事の評価

前々から楽しみにしていた松江泰治「マキエタCC」と同時開催の日本の新進作家vol.18「記憶は地に沁み、風を越え」と写真新世紀2021を東京都写真美術館で観てきました。追記:「Fire」写真とサステナビリティに関する国際写真賞プリピクテ」東京展

松江泰治「マキエタCC」東京都写真美術館


松江泰治

最初の出会いがどの作品だったか、記憶がはっきりしませんが、オールオーバーな画面に広がる模様のような都市の写真に衝撃を受けたのを今でもはっきり覚えています。

2018年に広島市現代美術館で開催された回顧展に行けなかった事は今でも悔やまれますが、今回近所の美術館で個展が開催されると知って、今か今かと待ち構えておりました。

マキエタとCC

今回の個展は、展覧会タイトルにあるように、2つのシリーズで構成されています。まず、「マキエタ/makieta」です。”マキエタ”と言うのはポーランド語で「模型」と言う意味です。これはそのまま都市の模型を撮影したシリーズです。

「CC」は、シティーコード/City Codeの略で、このシリーズは撮影地の都市コードがそのまま作品タイトルになっています。TYO=東京とか、NYC=ニューヨークとか3文字のアルファベットで表記されているアレです。

松江泰治「マキエタCC」東京都写真美術館

現実の都市の写真と様々な場所の模型の写真が混在して展示されている展覧会です。どれが模型でどれが実際の都市のなのか、簡単そうですが、結構遠目だとわかりません。

虚実が無作為、あるいはものすごく作為的に、入り混じった不思議な世界観の展覧会です。まさに松江泰治ワールドそのもの。


展示照明

松江泰治の作品がすごくいいのは当然として、今回の展覧会で目をひいたのは照明です。展示室に入って、普通に写真を額装したのではなく、内照式の作品なのかと思いました。

そうか、今回はそうきたかぁと思ったのも束の間、よくよく見ると、作品自体はこれまでに観てきた作品同様に額装された印画紙でした。

松江泰治「マキエタCC」東京都写真美術館

何が違うかと言うと照明です。フレームサイズきっちりとくまなく照明が当たっているので、まるで作品そのものが発光しているように見えるのです。

これは、被写体に影が出ないよう順光で、更にくまなく全体にピントを合わせて撮影すると言う松江泰治の作品撮影のコンセプトを、そのまま展示照明で踏襲したかのような手法でした。

展覧会に行かれたらそんなところも見てみると面白いかもしれません。

虚と実、静と動

照度低めの展示室に浮かび上がる世界中の都市の写真の数々は、いつにも増して幻想的で不思議な魅力を放っています。

特に今回は本物の都市と模型の都市の比較や、定点で撮影された博物館や活気のある市場の動画など、一見してその境界が曖昧でわからない虚と実、静と動、が混在する展覧会です。

松江泰治「マキエタCC」東京都写真美術館

動画の作品は展示室の中央に画面を真上にして置かれています。それぞれモニター前には椅子が用意されているので、腰掛けて覗き込むように鑑賞します。

都市の色

作品を眺めていると、都市には各々その都市のカラーがあって、全体にブルーの都市、煉瓦色の都市など、千差万別なのです。で、我がまち東京は何色かと言うと、大都市でありがちなグレーでした。

TYO4点です。さて、この写真は現実の東京の写真でしょうか、模型の写真でしょうか。▼

松江泰治「マキエタCC」東京都写真美術館

東京の街がグレーなのは、掃除機で吸い取ったゴミが、いろんなものが混じりすぎてグレーになるように、街中にある様々な色が混じり合って結局無彩色のグレーになっちゃう感じでしょうか。

例えが美しくなくてすいません。要するに東京は、色がないのではなく、むしろその逆で、要素が多いって事なんだと思います。

下の写真は札幌の街。右は雪景色の札幌、雪化粧をしてない札幌はややオレンジ味の強い茶系です。▼

松江泰治「マキエタCC」東京都写真美術館

広島市現代美術館の個展は回顧展だったので松江泰治のシリーズを網羅していたようですが、今回は2シリーズだけの展覧会です。それでも、期待以上の展覧会でした。近所だし来年まで開催しているので再訪したいです。

「マキエタCC」基本情報

松江泰治 マキエタCC

2021年11月9日(火)~2022年1月23日(日)月休 10:00~18:00(木金〜20:00)*夜間開館再開

料金:一般 700円/学生 560円

展覧会は撮影可能ですが、動画の撮影NGです。

TARO NASUの展覧会

六本木のピラミデにあるギャラリーTARO NASUでも松江泰治の展覧会を開催中です。こちらでは、東京の模型写真ばかりを展示しています。

解説によると『森ビル株式会社が制作し続けてきた「東京の模型」は港区を中心に都内13区の今が正確に再現されている。』という事です。が!我が家のすぐ近くにある割と大きな施設がかなり昔の建物のままだったのが個人的には気になってしまいましたが、着目すべきはそこではないですよね。

この展覧会も合わせての鑑賞をお勧めします。

taro nasu 松江泰治

 

「makieta TYO」基本情報

TARONASU  松江泰治 「makieta TYO」

2021年11月20日(土) – 12月25日(土)  11:00-19:00  日月祝 休



記憶は地に沁み、風を越え

東京都写真美術館の3階展示室で開催されているグループ展です。2002年より開催している「日本の新進作家」の展覧会で今回は18回目を数えます。


5組6名の展覧会

出品作家は、吉田志穂、潘逸舟、小森はるか+瀬尾夏美、池田宏、山元彩香の5組6名です。

山元彩香

個人的に好きだった山元彩香の作品からご紹介します。見ているだけで写真から音楽が聞こえてきそうな美しい佇まいの作品です。▼

日本の新進作家「記憶は地に沁み、風を越え」東京都写真美術館

馴染みのない国や地域で、撮影した少女の肖像写真。被写体となる少女と写真家との微妙な距離感や空気が独特の緊張感を生んでいます。撮影の際に言葉での意思疎通はないそうです。それも、この作品に宿る静謐な世界を創造する所以の一つなのでしょうか。

日本の新進作家「記憶は地に沁み、風を越え」東京都写真美術館

吉田志穂

映像と写真、デジタルとアナログを駆使し個々の作品というより全体で一つのインスタレーション作品です。▼

日本の新進作家「記憶は地に沁み、風を越え」東京都写真美術館

潘逸舟

「ともろこし畑を編む」自身がともろこし畑で編み物を再現するパフォーマンスの映像。リアルな音が臨場感を高めています。▼

日本の新進作家「記憶は地に沁み、風を越え」東京都写真美術館

小森はるか+瀬尾夏美

二人組のアートユニットの自然災害によって消えゆく運命の集落の記憶を記録した作品▼

日本の新進作家「記憶は地に沁み、風を越え」東京都写真美術館

「写真」と言う共通言語はありつつも、5者5様の全く違う表現なのでグループ展と言うより5つの個展を鑑賞している感覚に近いです。


基本情報

記憶は地に沁み、風を越え

2021年11月6日(土)~2022年1月23日(日) 一般 700円/学生 560円

池田宏作品は撮影禁止ですが、それ以外は撮影可・動画NGです。池田宏ブース前に撮影禁止マークあり。


写真新世紀2021

この会場が一番にぎわっていました。出品作家が多いので、各々の友人知人が来ているのかもしれません。

キャノンが毎年開催している新人作家の発掘・育成・支援を目的とした文化支援プロジェクトで、1991年にスタートし、今回が第44回目となる歴史ある公募展です。

応募者2191名から選出された優秀賞受賞者7名と佳作14名の展示です。

優秀賞受賞者7名の中から11/12に今年のグランプリが選出されます。誰がグランプリに選ばれるのでしょうか。

写真新世紀2021

今年の優秀賞受賞作品▼ ▲

写真新世紀2021

同時開催されている昨年のグランプリ受賞者樋口誠也の「super smooth」▼

写真新世紀2021

会場のQRコードにアクセスして写真新世紀の歴代受賞者の中で、もう一度みたい受賞作品に投票すると、トップ10の作品が来秋開催予定の「写真新世紀30周年回顧展」で紹介されるようです。


基本情報

2021年10月16日(土)~11月14日(日) 入場無料

会場内撮影可


国際写真賞 プリピクテ 東京展「Fire/火」

ピクテとは、スイス・ジュネーブに1805年に設立されたプライベート・バンクです。そのピクテグループが2008年に、写真を通してサスティナビリティと環境に関する議論や対話を引き出すことを目的に創設された国際写真賞がプリピクテです。9回目を迎える今回は、ショートリストの13名の作家が発表されました。

展覧会の様子。作品はカーラ・リッピーの「イモレーション/生贄」▼

プリピクテ 東京展「FIRE / 火」

13名は、ジョアナ・ハッジトマス&ハリール・ジョレイジュ (レバノン)、川内倫子 (日本)、サリー・マン (アメリカ)、クリスチャン・マークレー(アメリカ/ スイス)、ファブリス モンテイロ(ベルギー/ベナン)、リサ・オッペンハイム(アメリカ)、マク・レミッサ (カンボジア)、カーラ・リッピー(メキシコ)、マーク・ラウェーデル(アメリカ)、ブレント・スタートン (南アフリカ)、デヴィッド・ウゾチュクゥ (オーストリア/ナイジェリア)、横田大輔 (日本)です。

フライヤーやリーフレットのメインビジュアルになっている作品デヴィッド・ウゾチュクゥのイン・ザ・ウェイク(名残)」▼

川内倫子の作品は「花火」のシリーズ▼

プリピクテ 東京展「FIRE / 火」

プリピクテには、毎年テーマが設けられており、過去8回のテーマは、水、地球、成長、権力、消費、混乱、空間・宇宙、希望でした。今回は「Fire/火」です。

東京都現代美術館で展覧会「トランスレーティング」開催中のクリスチャン・マークレーの作品「ファイア」。この作品は写真としてカテゴライズされたんですね。▼

12/15に発表されたプリピクテ受賞者はアメリカのサリー・マンでした。

サリー・マンの受賞作「Blackwater」(2008-12)シリーズは、アメリカで最初の奴隷船が停泊したバージニア州南東部のグレート・ディスマル・スワンプを襲った大規模な自然火災と漆黒の煙をとらえた写真です。そこで遭遇したすべてを焼き尽くすような山火事とアメリカの人種間対立を並列に表現しています。▼

プリピクテ 東京展「FIRE / 火」

写真と言ってもクリスチャン・マークレーのようなコラージュやカーラ・リッピーのような立体やレリーフ作品など、表現方法の幅が広く、広義的な写真の作品を鑑賞することができます。しかも、入場無料です。


基本情報

プリピクテ 東京展「FIRE / 火」

2021年11月20日(土)~2022年1月23日(日)入場無料、写真撮影可


東京都写真美術館基本情報

目黒区三田1丁目13−3 恵比寿ガーデンプレイス内 MAP

10:00~18:00(木金〜20:00)*10月より夜間開館再開 月休 2021.12/28-2022.1/4休(1/2,1/3は臨時開館)

シェア:
同じカテゴリーの記事 Advertisement
Advertisement

コメントを残す