東京都現代美術館に「クリスチャン・マークレー トランスレーティング/翻訳する」と「久保田成子展 Viva Video!」とMOT コレクション展「journals Vol.2 日々記す」(1/12より当面休室)を観てきました。これら3つに加えて「ユージーン・スタジオ新しい海」も鑑賞したので5時間コースでした。
クリスチャン・マークレー「トランスレーティング[翻訳する]」
クリスチャン・マークレーは、1955年アメリカ・カリフォルニア生まれで、現代美術と音楽を繋ぐ、最も人気があり影響力を持ったアーティストです。日本の美術館で初めて開催する大規模な個展ということで期待しておりました。
展覧会風景は動画を参照ください。▼
PR一貫して「現代美術と音楽をつなぐ」をテーマとした作品を、多種多様な表現方法で制作しています。その通底するテーマに近年は映画や漫画といった現代では欠かせない文化を取り入れた作品も加わり、とても見応えがある展覧会です。
注目作品
「ミクスト・レビューズ」
最初の展示室にある作品です。展示室の壁の目線の位置に、ずらりと言葉が並んでいます。これは何かというと雑誌などに掲載された演奏やレコードなどの音楽にまつわる様々なレビューから音の記述の部分を抽出して、マークレーが言葉の音楽として構成したものです。
この作品は展示するたびに、その国の言語に翻訳されます。常に最新版を原本として、伝言ゲームのように変化し続けていくのです。
今回はカタロニア語から日本語へ翻訳されました。この作品はいつまでも完成することはありません。地味な作品ですが、実はマークレーの作品の根底にあるコンセプトを端的に表している作品であり、展覧会タイトルとなっている「トランスレーティング[翻訳する]」の源となった作品だと思われます。
「ビデオ・カルテット」
特にお勧めしたいのがクリスチャン・マークレーの代表作の一つでもある映像作品の「ビデオ・カルテット」です。2002年制作でサンフランシスコ近代美術館の所蔵作品でもあります。14分30秒の作品なので、これは最初から最後までちゃんと観ておきたいですね。途中から見ても特にストーリーがあるわけではないので問題はありませんが、一応徐々に高揚していく流れがあるので、最初から観た方がより面白さがわかるかもしれません。
写真撮影について
展覧会は、東京都現代美術館の1階展示室です。展覧会は写真・動画撮影可能です。
また、展覧会の公式図録やクリスチャン・マークレーの代表的アルバムはこちらからどうぞ。
基本情報
クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する] 会期終了
2021年11月20日(土)-2022年2月23日(水)10:00-18:00 月休 年末年始 (12/28-1/1 )、1/11
一般 1,800円 / 大学生・専門学校生・65歳以上1,200円 / 中高生 600円 /小学生以下無料
PRギャラリー小柳「VOICES/声」
銀座のギャラリー小柳でもクリスチャン・マークレーの展覧会「VOICES/声」が開催されています。新作のコラージュと木版画の技術を取り入れた大型作品が展示されています。
コラージュ作品はすべて昨年コロナウィルスによるロックダウンを経験した際につくり出されたものです。
確かにどの作品も声が聞こえてきそうな作品です。それは叫び声だったり、うめき声だったり、声にならない声だったりするかもしれません。
ここでしか鑑賞できない作品もありますので東京都現代美術館の個展と合わせて鑑賞をお勧めします。
クリスチャン・マークレー「VOICES/声」ギャラリー小柳 会期終了
2021年11月24日(水)- 2022年2月26日(土)(12/26-2022/1/10休)12:00–19:00 日月祝休
中央区銀座1丁目1−7−5 銀座小柳ビル 9F MAP
さらに、さらに東京都写真美術館で開催されている国際写真賞 プリピクテ 東京展「Fire/火」にもクリスチャン・マークレーの作品が展示されています。残念ながらプリピクテの受賞には至りませんでしたが、国際写真賞のショートリストにノミネートされたのは喜ばしいことです。
コムデギャルソン青山店にクリスチャン・マークレーのインスタレーションが▼
久保田成子展「Viva Video!」
久保田成子と言うとナムジュン・パイクの奥さんと言う印象が強いのですが、ビデオアートの創世記に活躍した女性アーティストです。生きていれば84歳。国際的に活躍している女性アーティスト草間彌生やオノヨーコらとほぼ同世代です。実際にオノヨーコとは久保田成子も参加していたフルクサスで交流があったようです。
”ヴィデオ・アートの先駆者の一人とみなされていますが、彼女の現代美術への貢献は、十分に評価されているとはいえません。” このような美術館の解説にもあるように、日本では紹介の機会も少なく、ナムジュン・パイクの知名度と比較するとかなり低いと言わざるを得ません。私自身もまとまった作品を鑑賞するのは、90年代に鑑賞した原美術館の個展以来です。
これを機に、今よりずっとずっと女性のポジションがあからさまに低かった時代に、日本を飛び出しアーティストとして活動した久保田成子の活動を見直すと共にその活動の軌跡に敬意を評したいと思います。
PR展覧会風景は動画を参照ください。▼
作動時間限定作品
下記3点の作品は、作品の保存のため、常時動いておらず、動作時間が限定されています。私は、特に目指してはいませんでしたが、運よく全ての作品が動いているところを鑑賞することができました。
1. デュシャンピアナ:自転車の車輪1,2,3
毎時30分~ 40分
自転車の車輪が回り、車輪に取り付けられたモニターにビデオが写ります。
2. ヴィデオ俳句―ぶら下がり作品
10:15~11:15/12:15~13:15/14:15~15:15/16:15~17:15
上からぶら下がっている球体のモニターが前後に揺れて、下の湾曲したプラスティック製の鏡にモニターの画面が映ります。
3. スケート選手
11:00~12:00/13:00~14:00/15:00~16:00/17:00~18:00有
伊藤みどりを模したスケート選手がくるくる回転します。
撮影について
写真撮影は、最初の展示室と廊下部分までは撮影禁止です。また、動画の撮影は全て禁止です。
Viva Video! 久保田成子展の公式図録や彼女の著作はこちらからどうぞ。
基本情報
Viva Video! 久保田成子展 会期終了
2021年11月13日(土)- 2022年2月23日(水)10:00-18:00 月休、年末年始(12/28-2022.1/1)、1/11
一般 1,400円 / 大学生・専門学校生・65歳以上1,000円 / 中高生 600円 /小学生以下無料
MOTコレクション展「 journals vol.2 日々記す」
3つの企画展を観ただけでかなりパワーを吸い取られるし、疲労困憊になるのですが、それでも忘れてはいけないのが、MOTコレクション展です。前回のvol.1に続いて「journals vol.2日々記す」が開催されています。ここで、特に注目すべき作品をピックアップしたいと思います。
康夏奈(吉田夏奈)
昨年、45歳の若さで亡くなった作家の作品です。目を惹くのは瀬戸内芸術祭で、作家本人も長く滞在した小豆島において2013年から2019年まで展示された「花寿波島の秘密」です。作品に包まれる体験ができる大型インスタレーションです。
クリスチャン・ボルタンスキー
今年亡くなったボルタンスキーの1971年の作品「D家のアルバム、1939年から1964年まで」と1990年の「死んだスイス人の資料」が展示されています。圧倒的な存在感を放つ作品は、他の作品の存在を打ち消すくらいです。
レベッカ・ホルン
▲ボルタンスキー作品の裏手の壁面に展示してあるレベッカ・ホルンの作品も個人的には大好きです。東京都現代美術館で2009年に開催した個展「レベッカ・ホルン展-静かな叛乱 鴉と鯨の対話」はすごくよかった。あのくらいの規模のレベッカ・ホルンの展覧会をもう一度見たいなぁ。
レベッカ・ホルンの作品は写真撮影禁止だったので目に焼き付けてきました。
PR写真撮影について
撮影可能な作品と撮影不可の作品が混在しています。作品のキャプションのところに各々撮影可か不可か記されているので確認しながら鑑賞してください。このブログに写真が掲載されている作品は撮影可能な作品です。
展覧会基本情報
MOTコレクション Journals 日々、記す vol.2 1/12より当面休室 会期終了
2021年11月13日(土)- 2022年2月23日(水) 10:00-18:00月休、年末年始(12/28-2022.1/1)、1/11
一般500円/ 大学生・専門学校生400円/高校生・65歳以上250円/ 中学生以下無料
現在、東京都現代美術館では、この3つの展覧会とユージーン・スタジオ 新しい海が開催されています。▼
現在、東京都現代美術館では、3つの企画展とMOTコレクション展が開催中です。私は1日でずべて鑑賞して5時間でした。はっきり言ってかなり疲れますが、どれもはずせなかったし、観て正解でした。
PR物故作家でビデオアートの創世記に女性アーティストとしてその礎を築いた久保田成子の記録、徹底して音楽と現代美術をつなげる作品を制作し続けている現役の大御所アーティストクリスチャン・マークレー、平成生まれでSNS の申し子とも言うべき、写真映えする多種多様で美しい作品を制作する超若手の寒川裕人ことユージーン・スタジオ、全く違うこの3つの個展の並びは興味深い羅列で面白かったです。
そして、忘れてはいけないのが、珠玉のコレクションを観られるMOTコレクション展です。実はコレクション展が一番安定しているし、安心して見られます。ぜひ、スルーしないで鑑賞してください。
さて、さて、全部で4つの展覧会。1日でまわるか、日を改めるか、悩ましいところですね。
せっかく清澄白河まできたら周辺のカフェも一緒にどうですか?▼