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アートと建築と癒しがある小金井市立はけの森美術館の茶室花侵庵で志村信裕作品を鑑賞しよう!


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武蔵小金井にある中村研一記念小金井市立はけの森美術館で、新たな企画展「花侵庵と現代作家:No1 志村信裕展」が始まりましたので早速訪問してきました。

小金井市立はけの森美術館で現代美術の展覧会を開催するのは3回目で8年ぶりです。(会期終了)

美術館には、小金井市で初の国登録有形文化財である2つの建築があり、今回そのうちの一つ茶室「花侵庵(かしんあん)」が会場となる画期的な展覧会です。

この美術館では、現代アートと建築を楽しめるだけではなく、豊かな自然という癒しまであるんです!

アート好きも建築好きも庭園好きもみんなが満足するスポットです。

これは行くしかない。

中村研一記念小金井市立はけの森美術館「花侵庵と現代作家:No1 志村信裕展」
美術館正面入り口
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花侵庵と現代作家:No.1

この展覧会の企画は、コロナの影響で美術館にある茶室「花侵庵(かしんあん)」で定期的に開催していたお茶会が中止となってしまったため、飲食を伴わないお茶室の使い方として考案されたものです。

その第一弾のアーティストとして志村信裕が選出されました。

というわけで、この展覧会は茶室「花侵庵(かしんあん)」ありきの企画です。

この場所は、そもそも洋画家中村研一がアトリエ兼住居として晩年まで過ごした自宅兼アトリエで、中村研一逝去後に奥様が美術館を開館し、2006年(平成18年)4月に小金井市が財団法人中村研一記念美術館の寄贈を受け、中村研一記念小金井市立はけの森美術館として再生しました。

敷地には美術館の建物とその裏に母屋(現附属喫茶棟)と茶室「花侵庵(かしんあん)」があります。

母屋と茶室は建築家佐藤秀三の設計によるものです。

喫茶棟のmusashinoはけの森カフェは現在臨時休業中です。

中村研一記念小金井市立はけの森美術館で、新たな企画展「花侵庵と現代作家:No1 志村信裕展」
国登録重要文化財の母屋(左)と茶室(右)が並ぶ

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美術の森緑地

お茶室「花侵庵(かしんあん)」は美術館の背後にあります。

美術館の背後には、母屋と茶室があるだけでなく、美術の森緑地と名付けられた森の中に東京都の名湧水57選に選ばれた湧水が流れています。

中村研一記念小金井市立はけの森美術館で、新たな企画展「花侵庵と現代作家:No1 志村信裕展」
志村作品と見紛うような美しい湧水

都内から電車で1時間もかからない場所に(ここも東京都ですが)こんな森を擁する美術館があるなんて!と初訪問時はとても驚いたのを鮮明に覚えています。

湧水や森の中を流れる小川のせせらぎ、小鳥の囀りを耳にしながらアート鑑賞ができるのはこの場所ならではです。

また、北門には竹林があり、和風庭園のような趣も感じられます。

中村研一記念小金井市立はけの森美術館で、新たな企画展「花侵庵と現代作家:No1 志村信裕展」
北門から入ると竹林を抜けて美術館へ

茶室「花侵庵」

森の中に建つ茶室に志村信裕の作品があります。重要文化財で志村作品を鑑賞するのは2回目です。

最初は、東京都庭園美術館で2020年に開催された「生命の庭ー8人の現代作家が見つけた小宇宙」展です。

その時は、8人によるグループ展でしたが今回は個展です。

さて、今回の重要文化財と志村信裕コラボはどんな作品でしょうか。

中村研一記念小金井市立はけの森美術館で、新たな企画展「花侵庵と現代作家:No1 志村信裕展」
作品が展示されている茶室花侵庵

Tendar Moon

茶室の作品「Tendar Moon」は、四角に切り取られた躙口から覗き込むようにして鑑賞します。

実はこの茶室には躙口はありません。設計段階では存在したものの実際には作られなかった躙口を模したものです。

中村研一記念小金井市立はけの森美術館で、新たな企画展「花侵庵と現代作家:No1 志村信裕展」
写真では作品の良さが全く伝わらないので是非美術館へ行くことをお勧めします。

まず、”暗がりを覗き込む”という行為はなんと淫靡で背徳感に満ちているのでしょう。

到着したのが晴天の真っ昼間。

茶室の周囲は小鳥の声が響き渡り、太陽の光が降り注ぎ、茶室の白い壁に木漏れ日の美しい模様が広がっていました。

自然豊かで長閑な実に牧歌的な場所で、腰をかがめて覗き込んで鑑賞する「Tendar Moon」は、天王洲のギャラリーで目にしたそれとは全く違って見えました。

外は明るく太陽が燦々と輝いているのに、そこには確かに月の光が静かにゆらめいています。

最初はもう少し陽が落ちてから見にくればよかったかなと思いましたが、じっと見ているうちに、これは外の環境が真逆な時間帯の方がいいのではないかと思い始めました。

なぜならギャラリー空間の安定した真っ暗闇では絶対に得られない、周囲の環境変化による作品の見え方の違いも作品を楽しむポイントの一つだと感じたからです。

私が訪問した時は、茶室の中まで木漏れ日が広がり月の光と木漏れ日という現実にはあり得ない二つの光景が向き合っていました。

これこそが茶室「花侵庵(かしんあん)」で観る現代美術です。

中村研一記念小金井市立はけの森美術館で、新たな企画展「花侵庵と現代作家:No1 志村信裕展」
茶室と志村信裕と木漏れ日のコラボの美しいこと

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Goldfish

茶室で観られる作品は、1点ではありません。

躙口から左方向に進むと障子が少しだけ開いている場所があります。

ここからまたもや中をそっと覗き込むのです。

覗くとそこには、赤い金魚が優雅に舞うように泳いでいます。

じっーと覗き込んでいると、人の気配を感知したのか、楽しげに泳いでいた金魚はスーッと音もなく姿を消してしまいます。

それでもまだしつこく覗いていると、また音もなく現れて泳ぎ出す。を繰り返します。

ループで流れている映像とは思えない、まるで金魚の感情が伝わってくるような作品です。

そして、ここでもまた、少しだけ開いた障子の隙間から見てはいけないものを見ているかのような、まるで鶴の恩返しの鶴をみてしまったかのような錯覚を覚えます。

人間は秘匿を覗き見る行為に高揚感と快感を覚える生き物なんだと実感しました。

中村研一記念小金井市立はけの森美術館で、新たな企画展「花侵庵と現代作家:No1 志村信裕展」
障子にうつる木漏れ日も演出かと思うくらい美しい

実はこの金魚とは3回目の対面ですが、見る側の環境の違いのせいか、以前見た時は人懐こいように感じたのですが、今回はとてもシャイだったような気がしました。

茶室で観られる2つの作品はどちらもとても静かな作品です。

そして、見る環境、見せる環境で見え方が変幻自在でもあります。

重要文化財の建築での展示はできることも限られているはずです。

その制約を軽やかにクリアした志村作品はとても美しかった。

半世紀前にこの地に住んでいた洋画家が、生活の楽しみの一つとして建てた茶室で、現代作家の作品を当時は存在しない躙口から覗き込む日が来ることを誰が想像したでしょうか。

今後も花侵庵と現代作家のシリーズが楽しみです。

中村研一記念小金井市立はけの森美術館で、新たな企画展「花侵庵と現代作家:No1 志村信裕展」
茶室に設けられた躙口

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美術館2階ラウンジ

茶室ありきで企画された展覧会ですが、美術館でも作品が鑑賞できます。

2019年の映像作品「Nostalgia,Amnesia」(45分)とその映像作品の題材となっている羊にまつわる作家の私物で構成された「Artifacts about sheep」作品です。

どちらも通常は非公開の2階ラウンジで鑑賞できます。

茶室「花侵庵」の作品とは趣が異なり、ドキュメンタリー映画のような長編の映像作品です。

入念なリサーチと丁寧な取材で構成されている点ではドキュメンタリー映画と同様なのですが、まるで異なるのはその映像の美しさです。

また、訴求したいメッセージを心に突き刺すのがドキュメンタリー映画だとしたら、志村作品は訴求したいメッセージがいつの間にかスッと心に染み入ってくるような映像です。

中村研一記念小金井市立はけの森美術館で、新たな企画展「花侵庵と現代作家:No1 志村信裕展」
まずは美術館へ行ってチケットを購入します

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鑑賞のための情報

茶室の作品はいつでも自由に鑑賞可能ですが、美術館ラウンジの映像作品は、できれば最初からきちんと観ることをお勧めします。

中村研一記念小金井市立はけの森美術館で、新たな企画展「花侵庵と現代作家:No1 志村信裕展」
美術館2階ラウンジの映像作品の上映スケジュール

鑑賞時間の案内があったので参考にしてください。▲

茶室のある美術の森は自然豊かな場所です。

自然豊かということは、それだけ虫も多いということです。

会期後半になれば杞憂となる情報だと思いますが、私の訪問時10月とは思えないほど蚊に刺されました。

この美術館は再訪なので自分でも虫除けを持参していましたが、ハーバルな地球とお肌に優しいタイプだった為、蚊にも優しすぎて、全然効果なし。

美術館が用意してくださっていた殺虫効果の高いスプレーをお借りしたものの時すでに遅しでした。

中村研一記念小金井市立はけの森美術館で、新たな企画展「花侵庵と現代作家:No1 志村信裕展」
青紅葉も影も美しい

お茶室の作品は撮影可能ですが、美術館の作品は常設の中村研一作品も含めて撮影禁止です。

美術館までのアクセス

以前の訪問時は行きも帰りも歩きましたが、今回は前の訪問時は導入されていなかったC o C oバスミニという12人乗りの乗合バスを使って行ってみました。

時間のない方は時刻表を参照して映像作品の鑑賞時間を計算に入れて訪問しましょう。

武蔵小金井駅南口発C o C oバスミニ野川・七軒家循環に乗って「はけの森美術館」下車徒歩1分ほどです。

中村研一記念小金井市立はけの森美術館で、新たな企画展「花侵庵と現代作家:No1 志村信裕展」
行き:武蔵小金井駅からの時刻表

このバスは電子マネーは使えません。

運賃は100円なので100円玉を握りしめて行きましょう。

バスは循環バスなので美術館までは遠回りをします。

ですから、実はバスに乗っても歩いても到着までの時間はそんなに変わりません。

天気のいい日には散歩しながら向かうのがいいでしょう。

中村研一記念小金井市立はけの森美術館で、新たな企画展「花侵庵と現代作家:No1 志村信裕展」
帰り:はけの森美術館からの時刻表

前回この美術館へは猪熊弦一郎展を観に来たのですが、調べてみたら2014年で8年前の秋でした。

それ以来なかなか来る機会がなかったのですが、今回は10月にもかかわらず真夏のような晴天だったので気持ちの良い美術館訪問となりました。

しかしながら大自然の洗礼、元気すぎる強い蚊に刺されまくりでした。

あれだけ綺麗な湧水生まれだったら、そりゃ元気で強い蚊に決まっています。

中村研一記念小金井市立はけの森美術館で、新たな企画展「花侵庵と現代作家:No1 志村信裕展」
茶室から喫茶棟を見る

美術館のmusashinoはけの森カフェは、前回利用した時と運営事業者が変わり、麻布十番の可不可になったという情報を得たので楽しみにしていましたが、臨時休業だったのが心残りです。

施設の不具合・点検・修理のため当面臨時休業のようです。

重要文化財の建築の場合、設備といえども勝手に工事ができないのでちょっと時間がかかりそうです。

カフェが再開したら訪問してみたいと思います。

紅葉の季節はそれはそれは綺麗でしょうね。

最後にお得情報!

なんと!はけの森美術館は1回だけ再入場が可能です。

ということは、1回分の料金で2回鑑賞できるということです。

10月は日々秋の気候に変化しています。

さらに、一日の中でもその時間によって作品の見え方は全然違ってきます。

日を変えて訪問したら、かなり違いを感じるはずです。

そんな作品の変化を比較鑑賞できるのは嬉しい特典ですね。

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基本情報

花侵庵と現代作家:No.1 志村信裕

2022年10月1日(土)~10月30日(日)(会期終了)

10:00~16:00

月火(10/10は開館)、10/12(水)休

入館料:一般500円、中・高100円(会期中、1回のみ再入場可)

小金井市立はけの森美術館

茶室「花侵庵」、小金井市立はけの森美術館2階ラウンジ

小金井市中町1丁目11−3 MAP

アクセス:JR中央線武蔵小金井駅下車 南口より徒歩約15分、武蔵小金井駅南口発 C o C oバスミニ野川・七軒家循環 「はけの森美術館」 下車徒歩1分

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