「旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる」という「旅」を主軸にした展覧会が東京都庭園美術館で始まりました。(会期終了)
現代美術のアーティストの旅に関する作品展示とアール・デコ建築のコラボだけでおさまりきらないのが今回の展覧会の特徴です。
11月、閉館した美術館で開催された関係者向け特別内覧会に参加しました。この内覧会で展覧会では撮影不可エリアの撮影を特別に許可をいただき撮影してきましたので追記します。

現代アート作品は、相川勝、栗田宏一、さわひらき、福田尚代、宮永愛子、evalaの6人のアーティストによるもの。
各々が解釈した旅をめぐる作品を鑑賞することができます。
アンリ・ラパンらが手がけた重要文化財のアール・デコ建築でみる「旅」にまつわるさまざまな作品や資料の数々を通して、パンデミック以降再び遠くなってしまった異国の地に思いを馳せてみましょう。
また、建築家の妹島和世が庭園美術館の館長に就任して初めてスタートする展覧会でもあります。もちろん企画は数年前から進行しているので、企画段階から携わる展覧会はまだ先の話だと思いますが、何か妹島和世らしさみたいなものはないかと思って鑑賞しましたが、特に見当たりませんでした。ま、そうですよね。
妹島和世新館長企画の展示「ランドスケープをつくる」が10月28日からスタートしました。

宮永愛子
順序は逆ですが、展覧会の最後を飾る新館のギャラリーに展示されている宮永愛子作品からご紹介。
宮永作品は本館の妃殿下居間とバルコニーに「移ろいゆく」は写真撮影禁止なのですが、特別内覧会で撮影許可を頂きました。
宮永愛子の作品を重要文化財の建築で鑑賞するのは2回目です。最初に観たのは京都文化博物館の展覧会「うたかたのかさね」です。
とても良い展覧会だったので今回も期待を胸に美術館へ向かいました。
朝香宮夫妻の持ち物と一緒に展示されている新作と、室内外で東京ビエンナーレの際に湯島聖堂で展示した「ひかりのことづけ」のガラス作品を、アール・デコ建築で見ることができます。

窓の外のバルコニーにも作品があります。▲

ナフタリンの作品は新作です。▲

宮永愛子は、常温で気化するナフタリンや塩など、あえて周囲の影響を受けやすい素材を用い、その特性から時間とともに形が変化していく作品を制するアーティストです。

トランクにはたくさんの鍵が透けて見える▲
新館ギャラリーは栗田宏一と宮永愛子2人のアーティストの作品が展示されています。

ニュートラルなホワイトキューブもいいけれど、本館展示もとても魅力的でした。
欲を言えば本館のいろんな場所で宮永作品をみたかった。

妃殿下居間に展示されていた鍵をエンボスで表現した作品▲
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栗田宏一
2020年に山梨県立美術館で須田悦弘との2人展で鑑賞した栗田宏一の美しい土の作品との再会です。

1990年から日本各地を訪ね歩き、その土を採集する「ソイル・ライブラリー・プロジェクト」を行っているアーティストです。

山梨県立美術館のインスタレーションの半分以下のサイズですが、それでもやっぱりこうやって眺めると見応えがあります。


山梨県立美術館は、作家の出身地の美術館です。▲

今回の展覧会では、そのインスタレーションとともに、2021年11月から2022年9月まで庭園美術館へ送った、日々の土採取を記録する絵葉書シリーズ「Walking Diary」の展示を見ることができます。▲
福田尚代、相川勝、さわひらき、evala
残念ながら通常は撮影禁止の4人のアーティストの作品を特別内覧会で撮影した写真を掲載します。
福田尚代は、書庫と書斎に展示されています。
本を使った作品なので書庫に展示された作品はとっても空間に馴染んでいました。

相川勝の作品は、写真と映像の作品です。2本の映像作品は、3時間越えと50分ほどの長時間です。
さすがに全部鑑賞はできませんでした。

さわひらきは、古くは2002年のものから庭園美術館を舞台に制作した新作までの映像作品6本です。
一番短い作品で3分、長いもので14分、合計で45分ほどです。

観たことのある作品も多かったですが、庭園美術館で撮影した新作(約7分)は絶対見た方がいいです。新作では朝香宮様の持ち物のこのプロペラ飛行機が登場します!▲
さわひらき作品が鑑賞できるのは、大食堂です。大食堂を真っ暗にして映像を投影しています。
投影する画面やその周りもちょっと工夫がされていますの必見。
evalaはギャラリー2を使った音と光のサウンドインスタレーションです。

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100年前の旅人
順番が逆になりましたが、展覧会の冒頭は、庭園美術館に住んでいた朝香宮夫妻の100年前の旅の記録と記憶、そして朝香宮夫妻と同じ航路でパリへ渡った高田賢三の船旅の記録とファッション、グラフィック・デザイナーのカッサンドルによるアール・デコを感じる旅のポスター、鉄道に関する膨大なコレクションを蒐集した中村俊一朗のホビールームの再現など、旅をテーマとした幅広い展覧会です。

100年前、海外に旅に出るというのは、庶民にはできないとっても特別なことでした。
朝香宮鳩彦王夫妻は皇族ですから、海外へ出向くこともできたし、カメラも持っていました。

ですから、旅の写真や家族へ送った絵葉書など、100年前の異国の旅の様子を伺い知ることができます。

大客室は、1925年に朝香宮夫妻が公式視察をした「現代装飾美術・産業美術国際博覧会(アール・デコ博覧会)」にまつわる展示です。
庭園美術館建築(旧朝香宮邸)のきっかけとなったのがこのアール・デコ博覧会の視察なのです。
鉄道コレクター、高田賢三、カッサンドル
朝香宮夫妻の旅の記録の次は、アール・デコの旅風景のポスターの数々です。
とにかく、カッサンドルのポスターは、旧朝香宮邸によく似合います。

その次は、ファッションデザイナーの高田賢三。
高田賢三は、パリに渡るときに恩師の勧めで約2ヶ月かかる船で向かいました。その航路は朝香宮夫妻とほぼ同じでした。

その船は、香港やサイゴン、シンガポール、コロンボなど様々な国をめぐり、そこでさまざまな異国の服飾文化に触れ、のちにKENZOで発表するフォークロア(民族衣装)・ルックを生み出す土壌となったのです。
まさに旅が創造の源であることを裏付ける展示です。
面白かったのは、初めて知った鉄道蒐集家中村俊一朗の展示です。
とにかく鉄道に関するものをなんでもかんでも集めていたようで、元祖鉄オタ登場!というところでしょうか。
東京の昔の路線図は、食い入るようにみてしまいました。

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見にいく前に知っておきたい情報
撮影について
庭園美術館は、展覧会によって撮影可能であったり不可であったりします。
今回の展覧会は基本的に撮影禁止です。配布されている会場マップに撮影可能な3箇所が掲載されているので参照ください。
本館は大客室のみ、新館はギャラリー1のみの2箇所です。

映像作品
さわひらきと相川勝が映像作品を出品しています。さわひらきの映像は全部で6本で計45分ほどです。
相川勝の映像作品は2本で3時間越えと50分なので計4時間以上です。相川勝の映像作品を全部鑑賞するのは難しいと思いますが、私はさわひらき作品は全部鑑賞しました。どちらも少ないけれど椅子が用意されています。
大食堂は見られない
おもてなしの場所である大食堂は、朝香宮邸の一番の見どころですが、今回はさわひらきの映像作品の上映がされているため窓が塞がれ暗室状態になっています。

窓の前に壁が立てられているので窓に近づくこともできません。
かろうじて見られるのはルネラリックの照明くらいです。初訪問の方はちょっと残念な状態の空間ですが、さわひらきの映像作品はすごくいいので、大食堂の見学は、次回に持ち越しましょう。

大食堂が見られない代わりに、通常は開いていることが多い大客室と大食堂の扉が珍しく閉じているので、マックス・アングランのエッチンググラスをよーく観察できます。▲
また、扉の前に展示されているロイヤルコペンハーゲンの3羽のペンギンの陶器は何度もこの美術館で見ていますが、今回は箱も一緒に展示されています。
その箱には「三羽揃ペリカン」と書かれており、ペンギンなのにペリカン?となるのです。なぜなのかというのは諸説あってペリカンを知らなかった説と単純に間違えただけ説というのがあるそうですが、後者が濃厚だそうです。というのもこの頃すでに上野の動物園ペンギンがいたそうなので、知らなかったとは考えられないそうです。
栗田作品を見逃さないで
栗田宏一作品は新館のギャラリー1にあるのですが、実は本館から新館へ向かう通路の美しいガラス下にも作品「49の道しるべ」があります。

丸いガラス皿に盛られた土がカラーグラデーションになるように並んでいます。
▲の写真のようなハートの影が見たい方は、「建築の神様からの贈り物」を読んでみてください。
本が読める
本館の2階のベランダが旅のラウンジになっていて、自由に本を読むことができます。
用意されている本のリストです。▲夢中になってしまうとあっという間に時間が過ぎますので、ゆとりを持って訪問したいですね。
個人的には「世界の図書館」と「世界の美しい庭園図鑑」が面白かったです。
どちらも旅に出たくなる1冊です。
日時指定性
この展覧会はオンラインによる日時指定性です。当日券の販売もありますが、週末に訪問する場合は特に事前に予約していく方が良いでしょう。
都民の日
10/1都民の日は、庭園が無料で利用できます。しかし、展覧会は無料になりません。
都民の日の詳細はこちら
夜間開館
下記の日程で夜間開館が行われます。紅葉が美しい季節にライトアップされた庭園美術館も魅力的です。
2022年11月18日(金)・19日(土)・25日(金)・26(土)・12月2日(金)・3日(土)
10:00-20:00(入館19:30まで)

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CAFE TEIEN
東京都庭園美術館の楽しみの一つは、ミュージアムカフェです。
展覧会ごとにスペシャルメニューが提供されるので、毎回足を運びたくなります。


暑さが和らいできたので、テラス席もいいですね。ランチメニューもありますよ。▲
庭園美術館にきたら、庭園も散策したいし、茶室のある日本庭園にも行っておきたい。
初訪問の場合は特に丸一日過ごす気持ちで訪問することをお勧めします。
庭園美術館で今見られる▼
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展覧会基本情報
旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる
2022年9月23日(金・祝)-11月27日(日)(会期終了) 10:00–18:00 月休、(10/11休) オンラインによる日時指定制 チケット:一般1400円、大学生(専修・専門)1120円、中高・65歳以上700円 東京都庭園美術館 港区白金台5-21-9 MAP アクセス:JR山手線目黒駅東口、東急目黒線目黒駅正面口徒歩7分、都営三田線・東京メトロ南北線白金台駅1番出口徒歩6分 |
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