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台湾初の洋風彫刻家による国宝が藝大に凱旋展示!《黄土水とその時代》を東京藝術大学大学美術館で


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東京藝術大学大学美術館

上野の東京藝術大学大学美術館で台湾の彫刻家、黄土水(こう・どすい、Huang Tu-Shui)の作品を中心にした展覧会《黄土水とその時代―台湾初の洋風彫刻家と20世紀初頭の東京美術学校》が開催されています。

会期は2024年9月6日(金)から10月20日(日)まで。会期最初の3日間は東京芸大の学園祭である「藝祭」も開催されています。

最大の話題は2023年に台湾の国宝に指定された黄土水の代表作《甘露水》の展示です。数奇な運命を辿ったこの作品が作者の母校にやって来るのです。

また黄土水と同時代に藝大に通った日本の美術家たちの作品が併せて展示されるのも見逃せません。

Photo by 建築とアートを巡る

黄土水(こう・どすい)

展覧会の主役である黄土水は台湾出身の彫刻家。

日本統治時代の台湾に生まれ、台湾人として初めて1915年に東京美術学校(今の東京藝術大学)に入学しています。

1922年に東京美術学校を卒業した後は池袋にアトリエを構え日本を主な拠点に彫刻家としての活動を続けるも、1930年に病気のため35歳という若さで早逝しています。

短い制作活動ですが台湾の国宝《甘露水》などの名作を残した台湾の代表的な近代彫刻家です。

集合写真:黄土水と久邇宮邦彦親王像, 1928, 黄土水とその時代、東京藝術大学大学美術館, 2024, Photo by 建築とアートを巡る

▲今回の展覧会で展示されている久邇宮邦彦親王との写真。ある意味で一番驚いた写真です。

右端に立っているのが黄土水ご本人。よく使われている肖像写真です。手前左端が妻の廖秋桂。

そして前列右の人物が久邇宮邦彦親王。香淳皇后の父親です。ということは昭和天皇の義父にあたり今上天皇徳仁からみれば曽祖父です。
(また広尾の聖心女子大は久邇宮家から購入した土地に建てられたもので、今も邸宅の一部が保存され年に一回公開されています)

後ろに置かれた「久邇宮邦彦王胸像」と「久邇宮邦彦王妃胸像」の制作記念に撮影されたもののようですが、外戚とはいえ皇室の重要人物から制作を依頼され記念撮影するほどですから、当時から重要な芸術家と見なされていたのでしょう

また当時の日本が台湾との融和を重要視していたことの表れかもしれません。

展覧会は2部構成

展覧会は2部構成。

第一部は黄土水が活躍した20世紀初頭、日本では大正時代の日本の、主に東京美術学校に関係する作家を東京藝術大学が所蔵する作品を展示しての紹介です

黄土水とその時代、東京藝術大学大学美術館, 2024, Photo by 建築とアートを巡る

▲荻原守衛(碌山)、朝倉文夫、高村光太郎に石井鶴三らのブロンズ像。

こうして見るとロダン・シンドロームとでも言えそうな、日本の彫刻界がロダンから受けた影響の大きさを感じます。

そしてそれは黄土水も同様なのだというのが第二部の展示でよく分かります。

黄土水とその時代、東京藝術大学大学美術館, 2024, Photo by 建築とアートを巡る

▲他にも黄土水の師である高村光雲(たかむら・こううん)、その息子の高村光太郎、平櫛田中(ひらぐし・でんちゅう)、早逝の彫刻家、橋本平八ら、日本彫刻界オールスターな展示です。

黄土水が日本でどのような風景を見て、どのような制作環境に身を置いていたから窺えるような展示が行われています


第二部

第二部は黄土水の作品および資料の展示です。

黄土水とその時代、東京藝術大学大学美術館, 2024, Photo by 建築とアートを巡る

▲手前の立像は「釈迦如来」。オリジナルは木彫で戦災で消失。残された石膏原型からブロンズ鋳造で再制作されたもの

奥の山本農相像2体も同様です

黄土水とその時代、東京藝術大学大学美術館, 2024, Photo by 建築とアートを巡る

▲左の水牛たちは《帰途》、右は《母と子》。どちらも黄土水の代表作です。

動物とモチーフとした作品が多いのは第一部を見ておくと、なるほどと思うでしょう。

また奥の方には木彫のレリーフ作品が展示されていますが、これらの動植物をモチーフにしたものです。

いわゆる近代彫刻には違いないのですが、東洋的なモチーフあり台湾の風土を感じさせるものありといったところが黄土水の真骨頂なのでしょう

甘露水, 黄土水, 1919, 黄土水とその時代、東京藝術大学大学美術館, 2024, Photo by 建築とアートを巡る

▲中央には本展の目玉でもある台湾の国宝《甘露水》が展示されています。

大理石を使ったほぼ等身大の写実彫刻です。

第二次世界大戦の結果、日本による台湾の統治が終わり国民党による統治が始まるわけですが、脱日本化が命題でもあった当時の台湾では日本に留学して戻って来なかった黄土水への評価は微妙なものだったのでしょう。この《甘露水》も1958年から所在不明になっていました

実際はある家族がずっとひそかに保管していて、2021年に政府に寄贈され、2023年に国宝に指定されたというのがこれまでの経緯です。

複雑な東アジアの歴史を背負ってもいるのが《甘露水》なのです。

20世紀初頭、ロダンを始めとする近代彫刻の影響を受ける日本の彫刻界とそこに身を置いた台湾人作家が自身のアイデンティをどう作品に反映させたのか。第一部でその時代を感じることもでき、第二部では黄土水がその時代に生んだ作品とその最終到達点とも言える《甘露水》という傑作を見ることができます

20世紀の東アジアにおける近代彫刻のあり方やその成果を再発見できる展覧会です

撮影について

今回の展覧会は原則として写真撮影が可能ですが一部作品は撮影禁止です(その旨の表示があります)。また動画撮影は禁止です

写真撮影の場合もフラッシュの使用、一脚・三脚や自撮り棒の使用も控えマナーに配慮して撮影しましょう。

基本情報

黄土水とその時代―台湾初の洋風彫刻家と20世紀初頭の東京美術学校

会期:2024年9月6日(金) ~ 10月20日(日)

休館日:月曜日 (祝日の場合は開館し翌火曜日休館)

開館時間:10:00~17:00

観覧料:一般 900円、大学生 450円、高校生および18歳以下無料

会場:東京藝術大学大学美術館 本館 展示室3, 4

住所:台東区上野公園12-8 MAP


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