三島にある製紙メーカー特種東海製紙の工場内にあるPamという施設に建築見学に行ってきました。
PamとはPaper and materialの略で紙の博物館のような施設です。
この施設の設計がプリツカー賞受賞の世界的建築家坂茂(ばんしげる)なのです。
坂茂といえば紙の筒(紙管)を使った建築でよく知られています。
坂茂で製紙メーカーなら、もう絶対に!と思って訪問してきました。さて、どんな建築だったのでしょうか。
PR特種東海製紙 Pamとは
特種東海製紙(旧:特種製紙)の「Pam」は、特種東海製紙が展開する業務内容を紹介するためのプレゼンテーションや資料室として特種東海製紙三島工場の敷地内に計画された施設です。
▲現在200色もバリエーションがあるTANT(タント)などで有名な製紙メーカー特種東海製紙のショールームであり、様々な紙の資料を保管展示する紙の博物館のような機能を持っているのです。ちなみにPamにあるTANTの棚から好きな色のTANTを一人3枚まで持ち帰ることができます。これは迷いますね。
特種東海製紙には、東京本社及び各工場敷地内にそれぞれの工場で生産している製品、収蔵品を中心に紹介・展示する「Pam東京」「Pam島田」もあります。
もともと、Pamの敷地には古い研究棟と実験工場がありましたが、老朽化や耐震性能の問題から、そのまま使うのは難しい状態でした。
特に現在Pamが建つ研究棟は鉄筋コンクリート造で、修繕には新築以上のコストがかかることがわかり、結局解体して新しく建てることになったのです。その設計を担当したのが坂茂です。
特種東海製紙 Pamは坂茂設計
坂茂で製紙メーカーとなると全部紙管なのね!と思ったのですが、結論からいうと建築に紙管は使われていませんでした。
▲展示室内には坂茂の紙管の椅子がありました。
坂茂は元研究棟と元実験棟の二つの建築を手掛けているのですが、元実験棟は改修工事で2001年に竣工しています。元研究棟のあった場所に2002年に竣工したのが現在のPamです。
一般の見学ができるのはPamだけで、改修工事を手掛けたとされる元実験棟は見ることはできません。
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特種東海製紙 Pamの空間
紙管ではなくFRPパネルで覆われた箱のような建築です。
この箱型の建築の中心部は天井まで吹き抜けの大空間です。
圧巻の中央の吹き抜け空間の両サイドに展示室があり、周囲には両サイドの展示室をつなぐ通路がぐるりと設置されています。しかも天井はテントのような素材です。アウトドア感がありますね。
さらにすごいのは、入り口上部のFRPパネルが開いて吹き抜け空間が半屋外空間へと変化するのです。なるほど!だからテント見たいな天井なのね。
これはすごい!と思ったのですが、スタッフの方の話によると空調がないため吹き抜け空間は夏は暑く、冬はとんでもなく寒いそうです。実際に訪れた日も、ものすごく暑かった。
また、全面開けておくと鳥が入ってきてしまったり、落ち葉が入りこみ、掃除や管理が大変なためほとんど開けることはないんだとか。
確かに訪問時の7月は大変な猛暑で、サイドの展示室内は空調が効いていて全く問題がなかったのですが、肝心な吹き抜け空間や周囲の通路などは暑すぎて数分いるのがやっとという状況でした。
計画した20数年前は、日本の夏がこんなにも酷暑になるとは想像できなかったのでしょう。
しかし、気候の良い季節は気持ち良い大空間でしょうが、案外そういう時期は短期間なのかもしれません。
計画時に描いていた素敵な使い方は、現実には全く利用されていませんでした。
建築における計画と現実の乖離を目の当たりにしたのでした。
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特種東海製紙 Pamの階段
Pamにはエレベーターもありますが、透明感のあるストリップ階段があります。
FRPパネルに覆われたブルーグリーンの空間の中で透き通るような美しさを放っていました。暑すぎてついついエレベーターを使いたくなりますが、階段好きとしてはここは階段で上り下りすべきなのです。頑張りました!
踏面は半透明、ストリップ階段なので蹴上は抜けています。
このストリップ階段ともう一つ内階段があります。こちらはささらにアクセントのある可愛らしいストリップ階段。透明ではないけれど軽やかなデザインです。
しかし、この内階段は特に暑かった!写真を見返すだけで暑さがよみがえってくる。
特種東海製紙 Pamを見学するには
特種東海製紙の三島工場の敷地内にある施設なので工場が稼働している平日のみ(10:00-17:00)事前予約制で見学が可能です。
事前予約はPamのHPから来館予約のフォームに入力します。フォームに入力するとメールにて返信が来ます。これで予約は完了です。
無料の駐車場が目の前にあるので車で行くと便利です。
予約した時間にPamに行くと大きなPamの施設に女性スタッフが一人で出迎えてくれました。この施設に常駐しているスタッフはいないようです。出迎えてくれたスタッフの方も通常は別の場所に席があるのだと思います。
特にガイドなどがあるわけではなく自由にPam内を見学できます。
訪問日のその時間に見学しているのは我々のみでした。
(おそらく)我々のためだけに無人の展示室内はキンキンに冷えていて感激しました。エレベーター前の待機場所には扇風機がガンガンに回っていて、訪問者への暑さ対策の配慮が感じられました。
冬はとんでもなく寒いそうなので、どっちに行くのが良いんでしょうか。やっぱり大空間を満喫するなら春か秋でしょうね。
再訪問するなら春か秋に行きたいです。
夏は暑すぎて吹き抜け大空間を思いっきり堪能できないためお勧めしません。
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基本情報
特種東海製紙 Pam
開館時間:10:00 – 17:00 休館日: 土・日・祝 館料無料 事前予約制 住所:静岡県駿東郡長泉町本宿437番地 MAP アクセス:無料駐車場あり |