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「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」展を国立西洋美術館へ観にいこう!


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「スペイン」のイメージってなんですか?

フラメンコ、闘牛、パエリア、オリーブ、ガスパチョ、ピンチョス、アヒージョ、スパニッシュオムレツ、ハモンセラーノ(生ハム)、などなどどれもこれも美味しいですよね。ん?食べ物ばかりになってしまいました。

話をアートに戻します。スペインのアートと言えば、ベラスケスやゴヤ、そしてなんと言ってもパブロ・ピカソ、サルバドール・ダリ、ジョアン・ミロなどの巨匠達です。

さらに、アントニ・タピエスやアントニ・クラーベの名前も出てきたらそれはきっとスペインアーティストのツウですね。

また、建築ではなんと言っても世界中で知らない人はいない未完の建築サグラダ・ファミリアを設計したアントニ・ガウディが生まれた国でもあります。このように、世界に名だたるスペインが生んだ巨匠達は、誰も彼も、ものすごい偉人ばかりです。

「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」国立西洋美術館
ラモン・カザス「アニス・デル・モノ」のポスターの猿と一緒に

国立西洋美術館で現在開催中の展覧会「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」では、過去400年にわたるスペインの美術や文化がどのように作り上げられ、そして諸外国へ伝わったのかを版画やポスターなどを中心に紐解いていく展覧会です。

スペインに行ったことのある方はもちろん、これから行こうかと検討中の人、いつかは行きたいなと思ってる人などなど、スペインがどんなイメージの国なのかを美術を通じて知ることができる貴重な展覧会です。

「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」国立西洋美術館
「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」国立西洋美術館 展示室入口フォトスポット
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展覧会構成

展覧会は6章で構成されています。

展示室の入口に作品リストがあるので手に取ることを忘れずに!

「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」国立西洋美術館
「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」国立西洋美術館 平面図

▲展示室内の平面図です。

鑑賞時間の目安

この展覧会には資料映像などの上映はありません。

映像鑑賞がないとはいえ、キャプションに解説のある作品も多く、細部に渡り緻密な表現の作品の展示も多いので、1時間以上はかかると思った方がよいです。

「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」国立西洋美術館
「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」国立西洋美術館

ここから全6章のうち私が特に気になった作品を勝手にピックアップしてご紹介します。

「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」国立西洋美術館
「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」国立西洋美術館 展示風景

1章:ドンキホーテとベラスケス

1章で取り上げるのは、ドンキホーテとベラスケスです。

ドンキホーテは日本ではディスカウントショップにその名が使われるほど浸透している人物です。

本家本元のドンキホーテとは、ミゲル・デ・セルバンテスの 「機知に富んだ郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ」(前 篇1605年、後篇1615年) という、 スペイン文学を代表する傑作小説です。

クラシックバレエの「ドンキホーテ」などドン・キホーテをテーマにした芸術作品は非常に多く、直接ドンキホーテの小説を読んだことがなくても、何らかの形でドンキホーテと関わりをもった経験のある人は多いでしょう。ディスカウントショップ訪問も含めて。

「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」国立西洋美術館
手前:作者不詳 ドン・キホーテの騎士叙任式/風車に突撃するドン・キホーテ 奥:ミゲル・デ・セルバンテス『機知に富んだ郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャの生涯と偉業』 2巻

▲ドン・キホーテの小説は時代により読み手の解釈が変わってきた小説です。当初は喜劇として、そして後の19世紀以降はロマン主義的な理想(見果てぬ夢)を追うヒーローというように人間の想像力が拡大するにつれ解釈も大きく変わり評価も高まってきています。

そのため、小説に使われる挿絵も時代によって大きく異なります。

ドン・キホーテの小説の解釈が変遷し、それによって画家たちの挿絵も変遷していくさまを見られる、非常に興味深い展示セクションです。

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2章 スペインの発見

18世紀の終わりまで、スペインを訪れる人はとても少なかったのですが、ナポレオンの侵略とスペイン独立戦争 (1808-14 年)により、ヒトとモノの往来が急増し、人々はスペインという異国の文化風俗に関心を持つようになります。

「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」国立西洋美術館
産業振興省特別委員会(編)『スペイン建築遺産集成」カラーリトグラフ 左:ヘロニモ・デ・ラ・ガンダラ原画、 エミリオ・アンスレ製版 リンダラハのバルコニー 上部部分図 (アルハンブラ) 1860年 右:リカルド・アレドンド原画、 テオフィロ・リュフレ製版 アルハカム2世の門 (コルドバ メスキータ) 1878年頃

 

「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」国立西洋美術館
産業振興省特別委員会(編)『スペイン建築遺産集成」アレハンドロ・グロインネル原画、 フランシスコ・ラインハルト製版主身廊とミフラーブ (メスキータ、 コルドバ) 1866年  カラーリトグラフ

イギリスとフランスを中心とした外国人たちが最も興味を抱いたのは、これまで見たことのない 「エキゾチック」 な建築や街並みでした。 特にアンダルシアに残るイスラム建築が人気を呼んだのです。

コルドバにあるメスキータは、現在でも人気の観光スポットの一つです。私もメスキータを訪れるためにコルドバまで足を伸ばしました。

交通インフラなどが今ほど便利でなかった時代なら尚更、ヨーロッパの人々にとってアンダルシアの街は異国情緒あふれる場所だったことでしょう。

ヨーロッパの辺境としてのエキゾチックな、でも宗教裁判など負の側面もある、近代スペインのパブリックイメージが出来上がったのもこの時代です。

「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」国立西洋美術館
左:ジュール・ドランシーたばこ「ジタン」のポスター(フランス専売公社)1931年 右:ジュゼップ・モレイ スペイン 1948年頃

▲建築や街並みだけでなく人物、特に女性達にも注目が集まります。

フランスのタバコ「ジタン」のポスターに描かれるロマ族の女性の姿は19世紀半ばまでに確立したステレオタイプ的イメージの象徴です。

3章 闘牛、生と死の祭典

3章で、スペインが生んだ天才画家パブロ・ピカソの作品の登場です。

闘牛を描いた4点の作品は全て、シュガーアクアチントで制作されたものです。シュガーアクアチントというのは、銅版画の技法の一つで水玉模様のような、飛沫のような効果が出せる方法です。

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4章 19世紀カタルーニャにおける革新

バルセロナを都とするカタルーニャ地方は、 19世紀半ばにスペイン国内でいち早く産業革命を経験し、その経済力を背景に同地方独自の歴史や言語、 芸術文化の復興が企てられます。

以前、話をしたカタルーニャのアーティストは、スペインの中にあるもう一つの別の国なんだと主張していました。ある意味間違っていはいないのでしょう。

「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」国立西洋美術館
「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」国立西洋美術館 展示風景 奥:ラモン・カザス「アニス・デル・モノ」のポスター 1898年

▲版画分野で注目すべきはポスター芸術の流行です。 印刷技術の発展によって、大判のカラーリトグラフが数多く制作されました。

世紀末のカタルーニャでは、 パリで絵画を学び、 ロートレックやシェレの様式を吸収したラモン・カザス (1866-1932 年) らが 数多くの優れたポスターを制作しています。

壁掛けできない何か事情があるのでしょう。なぜか、台の上に置かれているパブロ・ピカソ「宝石」1899-1900年の隣に展示されているのは、同じくピカソの「貧しき食事」です。写真は掲載できませんが、作品を見ればああ!となる人は多いはずです。

確か私が小学校高学年か、中学生くらいの時にピカソの「青の時代」を知るきっかけになった作品です。

当時、ピカソといえば、キュビスムの作品しか知らなかったので、1人の作家でも時間の経過と共に様々なスタイルの変遷を経ていくのだという事を知ってとても驚きました。

この作品を鑑賞できただけでもこの展覧会に来てよかったと思いました。

展覧会のアイキャッチになっているラモン・カザス「アニス・デル・モノ」のポスターも私がこの展覧会で最も印象に残ったパブロ・ピカソの「貧しき食事」も共に国立西洋美術館所蔵の作品でした。さすがです。

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5章ゴヤを超えて:スペイン20世紀美術の水脈を探る

そして、5章ではキュビスムの代表作と言っても過言ではないピカソの「泣く女」です。

この作品は、複数制作されており、最も有名なのは油彩の「泣く女」でしょう。ピカソの愛人ドラ・マールがモデルとされています。

あまりにも有名な作品なので、鑑賞者は皆「泣く女」の作品の前で足を止めていました。かくいう私もそのうちの1人です。

撮影禁止だったため、写真はありませんが、他にサルバドール・ダリやジョアン・ミロの作品も出品されています。

20世紀のスペインは偉大な芸術家を輩出した時代ですが、内戦など戦争の影が色濃い時代でもあり、そうしたテーマの作品が多いのも特徴です。

6章 日本とスペイン:20世紀スペイン版画の受容

この展覧会の最後を飾る6章は、20世紀のスペイン版画のまとめのような作品展示です。しかし、残念ながら撮影禁止のため写真はありません。

その章の最後であり、この展覧会の最後を締めくくるのは、自分自身も90年代に知ったスペイン人アーティストのジュアン・エルナンデス・ピジュアンの作品です。

雲や樹木を想起させるモチーフは極限まで要素が削ぎ落とされ、その画面はシンプルで明快。作品を前に当時釘付けになった記憶が蘇ってきました。

この展覧会で久しぶりにピジュアンの存在を思い出したのですが、と同時に2005年に亡くなっていたことも知ったのでした。

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ミュージアムグッズ

展覧会の楽しみのひとつにミュージアムグッズがあります。

スペインらしいカラフルなグッズは見ているだけでも心躍ります。

「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」国立西洋美術館
「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」国立西洋美術館 ミュージアムグッズ

▲ポストカードはミュージアムグッズの定番です。

「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」国立西洋美術館
「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」国立西洋美術館 ミュージアムグッズ

▲図録の表紙も「アニス・デル・モノ」のポスターです。

他にも色々なグッズがあるのでぜひ足を運んでみてください。

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写真撮影について

この展覧会では写真撮影が可能ですが、一部撮影禁止の作品とエリアがあります。

動画での撮影は全てNGです。

撮影禁止作品については個々に撮影禁止マークが掲示されています。

また、エリアごと撮影禁止なのは、最後の6章です。

6章は全て撮影禁止なので注意しましょう。

「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」国立西洋美術館
「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」国立西洋美術館 フォトスポット

▲展示室入口にフォトスポットが用意されています。

ラモン・カザス「アニス・デル・モノ」のポスターから飛び出したお猿さんと一緒に来館記念撮影をしてはいかがでしょうか。

さて、この展覧会では触れられていませんでしたが、現在進行中でスペインの一つのイメージを決定づけているのがバルセロナのサグラダファミリア教会と建築家のアントニオ・ガウディです。19世紀に建設が始まりいつ完成するのか分からないと言われていたサグラダ・ファミリア教会が2026年完成予定ということでさらに関心が高まっています。

そんな中、期せずして東京国立近代美術館では「ガウディとサグラダ・ファミリア展」が開催されていて大人気になっています。この「スペインのイメージ」展と併せてガウディ展もどうでしょうか。両方見ておけばスペインについては完璧! スペインを訪れたくなると思います。

基本情報

スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた

2023年7月4日(火)~9月3日(日)

9:30~17:30 金・土夜間開館 ~20:00

月休、7/18日(火)休(7/17(月祝)、8/14日(月)開館)

チケット:一般1,700円、大学生1,300円、高校生以下及び18歳未満無料 

日時予約制ではありませんが事前にオンラインチケットを購入していくと入館がスムーズ!

国立西洋美術館

東京都台東区上野公園7−7 MAP

アクセス:JR上野駅下車(公園口出口)徒歩1分、京成電鉄京成上野駅下車 徒歩7分、東京メトロ銀座線、日比谷線上野駅下車 徒歩8分

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