富ヶ谷にあるCONTRASTで、ウクライナのアーティストで建築家、今は日本に在住しているボグダン・サーレディアク/Bogdan Seredyakによる日本での初個展「Memory in Motion: 忍耐による建築」が開幕したので早速鑑賞してきました。
ボグダン・サーレディアク
ボグダン・サーレディアクは2022年にオランダ、ロッテルダムの戦後復興をテーマにした「Memory in Motion」を発表し、9月に来日してからはその作品に日本の戦後復興を取り入れる取り組みを行っています。
今現在もロシアによる侵攻を受けているウクライナは、2022年2月24日から現在までの約500日で多くの人命が失われただけでなく、インフラとしての建築物や建造物もまた破壊されてきました。
この個展は、今の戦争が終わったとき、どのような建築スタイルを用いれば文化的記憶やアイデンティティを保持できるのかという課題に対してフレームワークを提供するものです。
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Memory in Motion: 忍耐による建築
今回のボグダン・サーレディアクの今回の個展「Memory in Motion」で展示されている作品の多くは、実際に傷つき破壊されてしまったウクライナの建物です。
ウクライナはその歴史的な経緯もあり、ビザンティン、バロック、ソビエト・モダン、伝統工芸という4つの建築様式がよく見受けられるそうですが、戦争が終わったときどのような建築様式ならウクライナという土地の記憶や人々のアイデンティティを保持できるのか?
新しいウクライナの建築様式を機械学習(AI)の助けを借りて探求しています。
展示されている写真はウクライナ南部ミコライフの行政庁舎(州庁舎)、首都キーウのマンションやオフィスビルです。
▲これはキーウの幼稚園(左)とマリウポリの劇場(右)
▲ロシアによって破壊された建物とAIが生成した新しい様式に基づいて修復された建物が重ね合っています。
左端のミコライフの州庁舎の縦断図や模型も会場には展示されています。
▲キーウのロバノフスコ通りのマンション。
映像作品
会場の地下エリアでは映像作品が2本上映されています。
▲「ウクライナ国内の建築様式」という1分39秒の映像作品。
4つの主要様式を新しいウクライナ様式へモーフィングさせる映像のようです。
もう1本はタブレット端末で上映されているもので約30秒。
▲上映はビルの地下なのでお見逃しなく。
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Memory in Motionの会場
Memory in Motion展の開催場所は代々木八幡の駅近くにあるスペース CONTRASTです。
この会場スペースが展覧会のテーマともうまく合致して良い空気感を出していました。
▲会場はビルの1階と中2階。
1階のスペースではミコライフ州庁舎の模型や資料、ウクライナの建築様式の資料などが展示されています。
写真で人が見えているところが中2階ですが、1階との間の壁を無理やり剥ぎ取ったかのような造形が素敵です。
▲壁を中心に右が1階展示スペース、左が中2階展示スペースです。
▲こちらは地下の上映スペース。
何やら相談している男性の向かって左の人物がボグダン・サーレディアク。まだ学生のようにも見える若い建築家です。
ポイント
いつ終わるか分からない戦争のその先の復興のことを見据えて今から準備している、その現地点での報告のような展覧会です。破壊の先にこそ希望があるというポジティブな捉え方など私たちも参考にしなければならない考え方、そして現状に対するアティチュードなどが伝わってきます。
会期が約1週間と短い展覧会ですが建築や戦後復興というワードに関心のある方は足を運んでみてはどうでしょうか。
基本情報
Memory in Motion: 忍耐による建築
月 – 金 15:00 – 20:00、土日祝 13:00 – 20:00 入場無料 東京都渋谷区富ヶ谷1-49-4-1F & B1F アクセス:東京メトロ千代田線「代々木公園」駅1番出口より徒歩1 分、小田急小田原線「代々木八幡」駅南口より徒歩2分 |