白井晟一設計の渋谷区立松濤美術館で始まった「デミタスカップの愉しみ」展を早速観てきました。都内でも屈指の高級住宅街の松濤に位置する小さな公立美術館ととっても相性のいい展覧会でした。
個人コレクション
今回展示されているデミタスカップの数々は、なんと村上和美さんという個人コレクターたった一人のコレクションというから驚きです。村上和美さんが本格的にデミタスカップを蒐集し始めたのは2006年からだそうです。現在お持ちのコレクションの総数は約2000点以上というから更に驚きです。非常に上品なご婦人なので元々ハイソな方なんでしょうけれど、2000点を収集するその財源は一体全体どこから?と下世話なことがすごく気になったのでした。
今回の展覧会はその中から選りすぐりの388点の本物を鑑賞することができる貴重な機会です。
白井晟一設計の松濤美術館についてはこちらを。松濤美術館の過去の展覧会ブログ、「インドに咲く染と織の華」、「アイヌの装いとハレの日の着物」、「フランシスベーコンバリージュールコレクション」もよろしくお願いします。
デミタスカップとは
濃いコーヒーを飲むための小さなコーヒーカップ「デミタス」。「デミタス」とはフランス語の「半分(デミ)」と「カップ(タス)」からきています。容量が一般的なコーヒーカップの半分であることから、デミタスカップと呼ばれるようになりました。
ヨーロッパでテーブルウェアと食文化の様式が確立したのは19世紀です。デミタスカップは必ずしもセットではなく、カップ単独でも使用される異色な存在として現れました。この頃中産階級が台頭したヨーロッパではコーヒー文化の浸透とともにデミタスカップも広まり様々なデザインが誕生したのです。
展示室内は撮影禁止なのでポスターより。1900年頃の日本の九谷の「千顔」▼本当に1000人いそう!
展覧会について
展示室は撮影禁止ですが、ロビーに展示されている3点だけは撮影可能です。
こちらはfacebookで1日1投稿している第1号のデミタスカップです。現在はInstagramでも「本日のカップ」として投稿されています。▼
このカップのように花そのまんまシリーズや、フルーツそのまんまシリーズ(勝手に命名)などもあります。▼
ガラスのデミタスカップのようにちょっと変化球なシリーズ展示もあります。▼
展覧会では19世紀後半〜20世紀初頭につくられたアンティーク・デミタスが中心に展示されています。時代の変化とともに変遷するデザインと、手に乗る小さなカップに広がる大胆なデザイン、繊細華麗な超絶技巧をこの目でじっくり堪能することができます。
地下の会場にあったデミタスカップの底を透かしてみると日本髪の女性の顔が見えるデザインはちょっとギョッとしましたが、欧米の人にはうけたのでしょうか。(展示ケース内で底から照明を当てているので透かして見えます。)
みなさん、小さなカップを夢中になって鑑賞するのでガラスに鼻の脂が付いているのを何ヶ所か発見しました。そのくらい小さなカップに繰り広げられている世界観がどれもこれも個性的で素晴らしいです。
一つだけ難点を言えば展示台が低くてて、一つ一つをじっくり見るのには、辛い姿勢を強いられます。展示は身長の低い方に合わせるので仕方がないことですが、身長高めの私は、かなり屈んだ姿勢をし続ける事になり、帰り際にあれ?ちょっと腰痛い?!となりました。でもそんな事はその場では気にならないくらい、夢中になって鑑賞しました。
松濤美術館には珍しくしっかり目なミュージアムショップが出ています。▼
デミタスカップのミニチュアです。清少納言の枕草子に「何も何も、小さきものは、みなうつくし」とありますが、まさにその言葉通りです。▼
美しいデミタスカップの数々を鑑賞したら、美味しい珈琲が飲みたくなります。美術館の後にどこで珈琲を飲んで帰るか計画してから訪れることをオススメします。できればデミタスカップで濃い珈琲をいただきたいですね。
松濤美術館に行ったら鍋島公園がすぐ近くなので隈研吾デザインのトイレも見学してから帰りましょう。
展覧会期
渋谷区立松濤美術館
2021年8月24日ー10月10日 月休 10時~18時
土日祝日と最終週は日時指定制