東京都写真美術館で開催されている「プリピクテジャパンアワード」は、今回で3回目を迎える国際写真賞プリピクテが日本を拠点とする写真家を対象にしたアワードです。
今回「火と水」をテーマに、新進作家から中堅作家までの中からショートリストに選ばれた8名の写真家の作品による展覧会です。
プリピクテジャパンアワード
プリピクテジャパンアワードは、日本が世界的にも優れた写真家を多く輩出していることを受けて、世界有数の資産運用グループでスイスのピクテグループが運営している国際写真賞「プリピクテ」が、2015年に設立したアワードです。
プリピクテもプリピクテジャパンアワードも地球の持続可能性(サステナビリティ)の問題に対して強いメッセージを投げかけている写真作品の発掘と支援を目的としています。
プリピクテジャパンアワードは、今回で3回目なのですが、本来は2019年に開催されるはずでした。しかし、コロナの影響で延期となり今回ようやく開催されたのです。
3回目となるプリピクテジャパンアワードでは、新進作家から中堅作家まで8名の写真家が選出されました。
選出された写真家は新井卓、岩根愛、岡田将、瀧本幹也、千賀健史、長沢慎一郎、中井菜央、水谷吉法です。
そして12月16日に南條史生氏が委員長を務める審査委員により、この8人の中からプリピクテジャパンアワードに岩根愛氏が選ばれました。

岩根愛
第3回目のプリピクテジャパンアワードを受賞した作品の紹介です。
「KIPUKA」というのはハワイ語で溶岩流の焼け跡にオアシスとなって残る植物の島のことです。
ハワイに通うようになった写真家が、ハワイの日系人が先祖を迎えるポンダンスの盆唄の中の「フクシマオンド」の起源が福島県の相馬、双葉郡であることを知り、福島にも通うようになります。
マウイの日系写真館から借りた1930年代の回転式パノラマカメラで捉えたのはハワイとフクシマです。
▲移民を通じてハワイと福島の関連を写真によって掘り下げています。
岡田将
マイクロプラスチックを撮影した写真です。その姿は素人目には自然が生み出した鉱物のように見えます。
そして、美しいとさえ思わせてしまう恐ろしさを持っています。
長沢慎一郎
東京都小笠原諸島父島の先住民「Bonin Islanders」を撮影したシリーズ。
▲1830年代に無人島だった父島にハワイから来た入植者をルーツに持つBonin Islandersの人々
▲Bonin Islandersと書かれたアメリカ海軍占領時代の出生証明書の写真
小笠原父島の先住民についてまったく知識がなかったので衝撃でした。
水谷吉法
「KAWAU」は都市で大量発生する鳥川鵜を追ったシリーズです。
▲モノクロームでシルエットのみを捉えた様子はテキスタイルデザインのようで、可愛らしさを感じるほどですが、近寄ってみるとその模様に見えた一つ一つが川鵜の姿で、恐ろしいほどの大群であることがわかるとギョッとします。
これは川鵜だけの問題ではなく、生態系がおかしくなっている現象の一つです。
瀧本幹也
「CHAOS」宇宙時間の一瞬に、私たちは生きている
▲火山現象であるブルーファイアを捉えた作品など
▲祭壇のようなしつらえのインスタレーション作品も
千賀健史
「Hijack Geni 」振り込め詐欺の爆発的増加から既に19年が経過し、これまでに6000億円がどこかに消えていったというとんでもない現実。
▲かなり重苦しいテーマを扱った作品は壁面に展開されたインスタレーション
▲誰もが無関係ではないと思わせる作品
新井卓
「At the Shoreline」東日本大震災から10年、沿岸部はコンクリートに覆われました。
▲2020年から1年間かけて東日本沿岸1000キロをなぞる旅で収集したイメージを世界最古の写真技法であるダグレオタイプで表現した作品
▲「彼岸の鏡」
中井菜央
「雪の刻」日本有数の豪雪地の一つ津南で捉えたの写真作品
▲この地の雪の様子
▲束の間の夏の様子
さすが、サステナビリティを掲げたプリピクテなので、色々考えさせれる写真の数々です。
ただ、漫然と日々を過ごしている自分を顧みる意味でもじっくり見ておきたい写真展です。
全ての作品、写真・動画共に撮影可能です。
▼昨年のプリピクテ東京展「Fire/火」の様子はこちらから
基本情報
プリピクテジャパンアワード「Fire & Water」
2022年12月17日(土)~2023年1月22日(日) 月休(月が祝休日の場合開館翌平日休館)、年末年始休(12/29-1/1、1/4) 12/28、1/2、1/3は臨時開館 10:00~18:00 木金〜20:00 入場無料 東京都写真美術館 目黒区三田1丁目13−3 恵比寿ガーデンプレイス内 MAP |
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