森美術館で開幕した「六本木クロッシング」は、森美術館が3年に一度開催している同時代の日本の美術を総覧する展覧会です。第一回目の2004年以来、キュレーションは森美術館のキュレーターだけでなく、外部キュレーターと共同で開催してきました。
今年の六本木クロッシングは7回目で「往来オーライ!いま、日本の現代アートが映し出す、人・文化・自然のカラフルな交差」と題して1940年代~1990年代生まれの日本のアーティスト22組によるグループショウです。
3年に一度の展覧会
7回目となる今年の六本木クロッシングのキュレーションは、森美術館シニア・キュレーターの近藤健一を筆頭に、天野太郎(東京オペラシティ アートギャラリー チーフ・キュレーター)、レーナ・フリッチュ(オックスフォード大学アシュモレアン美術博物館 近現代美術キュレーター)、橋本梓(国立国際美術館主任研究員)の4人です。
4人のキュレーターによる今の日本の美術を牽引する若手からベテランまでが、コロナ禍でどんなことを考えどんな作品を制作してきたのか、一度に鑑賞できるお得な展覧会です。
撮影について
作品紹介のその前に2人のアーティストの作品は撮影禁止だったので、作品写真は20組のアーティストのものです。
撮影禁止のアーティストの作品は、池田宏、松田修の2作家。そしてキュンチョメの作品は写真撮影はOKですが、動画撮影禁止です。
それ以外は全ての作品、写真・動画共に撮影可能です。
参加アーティスト22組!
参加アーティストは、AKI INOMATA、青木千絵、青木野枝、潘逸舟、市原えつこ、伊波リンダ、池田宏、猪瀬直哉、石垣克子、石内都、金川晋吾、キュンチョメ、松田修、呉夏枝(オ・ハヂ)、O JUN、折元立身、進藤冬華、SIDE CORE / EVERYDAY HOLIDAY SQUAD、竹内公太、玉山拓郎、やんツー、横山奈美です。
このブログでは会場で展示されている順番にその作品を紹介します。
動画でも六本木クロッシング2022展をだいたい全部見れます▼
O.JUN
展覧会のスタートはベテランアーティストO JUNの絵画作品から。大小様々な絵画作品が所狭しと並べられています。
2000年代から油彩による具象絵画を描いています。写真はそのスケール感が伝わらないので、ぜひ足を運んで体感してほしいです。
青木千絵
2017年のスパイラルでの展覧会で見たアーティストの作品です。一度観たら忘れられない個性溢れる立体です。艶やかな表面は漆が使われいます。
伝統的な工芸の技法と現代美術の融合された立体作品です。
▲艶やかでなめらかな表面とその不思議な人体に釘付けになります。
金川晋吾
代表作の日常を捨てて、突然失踪する父を撮影した「father」に続木、行方不明だった伯母さんの姿を撮影し続けた写真作品です。
作家本人も映像作家の斎藤玲児とアーティストの百瀬文の男性2人、女性1人というそれぞれがパートナーという不思議な共同生活をしています。
松田修と池田宏
次の展示は、写真・動画共に撮影禁止のアーティストの作品が隣あって展示されています。
松田修の作品は部屋のような設の空間で映像作品が流れています。
▲森美術館に再現された小さなスナック「太平洋」でオーナーの女性の話に耳を傾けてみてください。
池田宏は写真作品です。アイヌの人々を撮る続けているアーティストです。ただ撮影するだけではなく、対話を大切にしています。
そのポートレート写真がスライド上映されています。
写真の中のアイスの人々のまっすぐな視線と対面してあなたは何を感じますか?
キュンチョメ(KYUN-CHOME)
ホンマエリとナブチによる男女二人組のアートユニットです。
ヘッドフォンをつけて暗室に入り、映像作品を鑑賞するシステムです。
名前を変えた2人の人物が出てきます。クライマックスは映像がなくなり叫び声だけになるという作品なので、映像作品というよりは体験型インスタレーションと言った方が良いでしょう。
スペースに入ったタイミングによっては、びっくりするかもしれません。でも、是非流れを全部体験してほしい作品です。
映像作品は動画撮影はできませんが写真撮影は可能です。
横山奈美
ネオン管で形作られた文字のように見えますが、実は絵画です。ちょっと距離をとるだけで立体作品に見える不思議。
LOVEの文字は、アーティストが複数の知り合いに書いてもらったもの。
個性あふれるLOVEが展開されています。
折元立身
今回の参加アーティストで最年長76歳の折元立身は、アーティストであり、パフォーマーです。そのパフォーマンスの映像と写真です。
代表作の「パン男」はあまりにも有名です。
久しぶりにパン男をみて元気をもらいました。
市原えつこ
IT会社Yahoo出身のアーティスト。ですから、出迎えてくれるのはペッパーくんです。
未来SUSHIで未来の回転寿司を食べましょう。写真後方には椅子が並べられているので、回ってくる未来のお寿司を回転寿司店にいるかのように座ってじっくり鑑賞することができます。←2回目の訪問時には、椅子が背後の映像作品観賞用に配置換えされていました。ですから、回転寿司は立って鑑賞しましょう。
残念ながら食べることはできません。
玉山拓郎
最近、活躍が目覚ましい若手アーティスト玉山拓郎の作品は、唯一窓のある展示室を真っ赤に染めています。光と音のインスタレーションです。
外の景色は見えません。
六本木で玉山哲郎の赤い世界に浸りましょう。
国立新美術館での赤いインスタレーションと一緒に鑑賞するといいかも!(2022年12月26日まで)
石内都
こちらも説明不要のベテラン写真家の展示です。額装なしで紙焼きが直接展示されているのが斬新でした。
並んでいるのは、横浜の金沢八景など石内都が慣れ親しんだ風景を切り取った写真です。
落ち着いたブルーに塗装された壁色との親和性も高く、みているだけでとてもノスタルジックな気持ちになる写真の数々です。
▲カーブミラーの写真には、ご本人の姿も映っています。探してみてください。
潘逸舟(ハン・イシュ)
昨年東京都現代美術館で開催されたMOTアニュアル2021「海、リビングルーム、頭蓋骨」の作品が記憶に新しいアーティストの映像作品です。
社会と個の関係の中で生じる疑問や戸惑いを、身の回りの日用品などを用いて、映像作品、インスタレーション、写真、絵画など様々なメディアで表現するアーティストです。
今回の作品は、モノクロで捉えられたモチーフが物悲しい空気を纏いつつも時にユーモアさえ感じる不思議な動きを繰り返します。
ささっと退出しないで潘逸舟の世界にしばし浸ってみてください。
だんだん虜になってきます。じわじわくる作品です。
MOTアニュアルの様子はこちら▼
呉夏枝(オ・ハヂ)
染織などファブリックを用いたインスタレーションを発表しているアーティストの作品です。
床とファブリックを使って森美術館の空間を変容させています。
複数のアーティストの作品が同時に眺められる広い展示室で一際目立つ世界観を創り上げています。
進藤冬華
北海道生まれで、同地を拠点に活動するアーティストです。人々の暮らし、歴史を徹底的にリサーチして作品を制作しています。
じっくり資料を読み込み、映像もしっかりみておきたい作品です。
石垣克子
北海道の次は沖縄です。沖縄生まれ沖縄在住のアーティストの絵画作品です。
一連の作品は、素朴で温かい画風です。南国の温度と湿度が伝わってくるようです。
しかし、その根底には沖縄の当たり前の風景の中に、この土地特有の様々な社会問題を孕んでいるのです。
伊波リンダ
父はハワイ生まれ沖縄県系2世、母は移民先のテニアン島生まれという環境で育ったアーティスト。
沖縄の風景を通じて自身のアイデンティティを問う写真と映像による作品です。
やんツー
最近よく見る若手アーティストのインスタレーションです。Amazonの倉庫のような設えの空間には何やらいろんなものが置いてあります。
その様々なものを黙々と移動、設置し続ける様子を囲いの外から眺めるというもの。
一つ一つの作品はQR コードを読み込むと解説が読めるようになっています。このケリーバックはなんとトム・サックスの作品▲
NADiffのやんツー
恵比寿のNADiff a/p/a/r/tで2023年4月9日までの会期でやんツーの「機械の無意識、演算の外側」展が開催されています。
(人気のため当初会期が延長されています)
▲六本木クロッシングの会期とも重なっていますし六本木と恵比寿は近いので春休みに併せて行くのも良いでしょう。
▲アナログな機械とデジタルコンピュータを組み合わせたスティームパンクぽいインスタレーションです。
定期的にバタバタ動く仕掛けがいくつかあるので15分くらいは滞在して鑑賞してください。
SIDE CORE / EVERYDAY HOLIDAY SQUAD
今回一番キャッチーな作品かもしれません。
松下徹、高須咲恵、西広太志のアーティストチーム・SIDE COREと2015年に結成されたアーティスト、キュレーター、映像作家等が参加する匿名アーティストチームEVERYDAY HOLIDAY SQUADのインスタレーションと映像作品です。
つい最近Nadiff galleryで展覧会「under pressure note」を見たばかりです。自分的にもホットなアーティストグループです。▲
竹内公太
東日本大震災による事故後に東京電力福島第一原子力発電所の作業員として勤務した後、発電所内のライブカメラを指差す姿が話題となったアーティストです。
来年3月に東京都現代美術館で開催予定の「Tokyo Contemporary Art Award 2021-2023 受賞記念展」が楽しみなアーティストです。
▲警備員時代に使った誘導用の赤いランプの警棒にインスピレーションを得て空中に警棒で文字を描いた作品(左)とその文字をフォント化し、それを使ってアスキーアート風に表現した作品(右)です。
猪瀬直哉
GINZA SIX6階銀座蔦屋書店にあったCCCが運営するギャラリー THE CLUB(現在閉廊してFOAM CONTEMPORARYになった)でよく見たアーティストの絵画作品です。
AKI INOMATA
AKI INOMATAも最近よく目にする活躍目覚ましい若手アーティストです。
2018年のGYRE GALLERYが初見だった気がします。5月にもGYREで「ギャロップする南部馬」を拝見しました。
今回は、恵比寿ガーデンプレイスで開催したavex主催のMEET YOUR ART FESTIVAL 2022で初めて鑑賞したビーバーの作品をまた見ることができました。
荒削りなブランクーシ作品のような数々の木彫は、実はビーバーが削った木です。さらに、この中にはそのビーバーが削った木の形を模して彫刻家が彫った木も混ざっています。
これ本当に面白い。個人的に一押しです。
▲ビーバーがガリガリしている様子を映した映像をみることができます。
MEET YOUR ART FESTIVAL 2022に詳細はこちら▼
青木野枝
最後は、安定のベテランアーティストで締めくくりです。鉄の彫刻を制作し続けている青木野枝の作品。
円形の鉄とガラスを球体に組み合わせた大型作品です。
やっぱり締まりますね。
若手からベテランまでの年齢の幅だけでなく、その表現方法も多種多様です。
絵画、立体、映像、写真、インスタレーションと頭の切り替えを迫られる勢いです。とても内容が濃いのでじっくり時間をとって出かけることをお勧めします。
可能なら何回か通うのが一番いいでしょう。
とっても濃い3年に一度の展覧会ですからお見逃しなく!
森美術館の展覧会はこれまで通り何度も通って随時記事をアップデートする予定なのでよろしくお願いします。
これらの写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 – 非営利 – 改変禁止 4.0 国際」ライセンスの下で許諾されています。
RADWIMPS TikTok LIVE
アニメーション映画「君の名は。」、「天気の子」の音楽全般を担当し、11月11日には新海誠監督の最新作「すずめの戸締まり」のサウンドトラックをリリースしたばかりのRADWIMPSは、野田洋次郎がヴォーカルを担うバンドです。
なんと!そんなRADWIMPSのライブが森美術館で行われるんです!
ライブ配信の視聴情報
開催日時:2022年12月17日(土)21:00開始
配信アカウント:RADWIMPS TikTok公式アカウント
視聴方法:アカウントをフォローし、12月17日(土)21:00にプロフィールページのアイコンをタップするとTikTok LIVEを鑑賞できます。
▼森美術館で同時開催の3つの展覧会の記事も参照ください▼
基本情報
2022.12.1(木)~ 2023.3.26(日) 会期中無休 10:00~22:00 火〜17:00 12/6〜16:00、1/3、3/21 〜22:00、12/17 〜17:00 事前予約制(日時指定券)当日、日時指定枠に空きがある場合事前予約なしで入館可能 オンラインサイトで購入すると()内の割引料金 平日:一般 1,800円(1600)、学生(高校・大学生)1,200円(1100)、子供(4歳~中学生)600円(500)、シニア(65歳以上)1,500円(1300) 土日休日:一般 2,000円(1800)、学生(高校・大学生)1,300円(1200)、子供(4歳~中学生)700円(600)、シニア(65歳以上)1,700円(1500) 森美術館 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー MAP |
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