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三田のガウディ「バベる!自力でビルを建てる男」:セルフビルダー岡啓輔


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バベる!自力でビルを建てる男」三田のガウディと称される建築家岡啓輔さんの著作本のタイトルだ。

岡さんは、タイトルそのまま自分でRC造のビルを建てているのだ。

しかも三田で。その名も「蟻鱒鳶ル」(ありますとんびる)

蟻鱒鳶ル

以前何かで目にして気になっていて、いつか現場を見に行こうと思っていながら、いたずらに時間だけが過ぎていた。

森美術館の「建築の日本展」を観に行って「蟻鱒鳶ル」が出品されていて、この物件をまた思い出した。

ヨシ!今日見にいこう!連休前半の最終日だった。

「蟻鱒鳶ル」はグーグルマップにもきっちり表示される。

そのくらい有名なスポットなのだ。

聖坂を登りきる手前の坂の途中の家を建てて生きてる。(inspire RC)

そうそこに「蟻鱒鳶ル」はあった。

斜め前には取り壊しが決定している丹下健三設計のクウェート大使館があるのですぐにわかる。

(岡さんの話によると取り壊しが中止になったらしい)

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クウェート大使館

というかそれより何より素人目にも普通じゃない感がビンビン伝わる建物なので迷いようがない。

通りすがりにガン見してる家族

そのファサードはコンクリート造なのに有機的で生命力が漲っている。

上へ上へとぐんぐん伸びる植物のように見えるのだ。

両脇のマンションに比べたらそれはとても小さいビルなのに、さながら人工的に均一のピッチで植えられ整えられた植木の間に生えた計算外の元気よく伸びる雑草(失礼)のようにだ。

そのくらい周囲と比較すると異質だけど元気いっぱいの活力が目をひくのだ。

これは百聞は一見に如かず、まずは現場を見てほしい。

私の言わんとしている事は伝わるはずだ。

遠景蟻鱒鳶ル

現場でおそるおそる中をのぞくと本人らしき人が作業着姿で向かいに腰掛けた同じく作業着姿の人と休憩中?のようだ。

本人がいるのに無断で写真を撮るのは失礼だと思い

「写真を撮ってもよいですか?」と尋ねたら「もちろん!」と返答があった。

「いいですよ」じゃなくて「もちろん!」なのだ。

私は遠慮なく前から横から、引きと接写とバシャバシャと写真を撮った。

サイドから
逆サイドから
蟻鱒鳶ル
上部

そして、もう一度話かけてみた。

「どのくらいで完成するんですか?」すると岡さんは

「あと3年位ですかねぇ」と。

あとでわかったけれど、ずーっと「あと3年」と言い続けているようだ。

2005年から建て始めているのでかれこれ13年ということになる。

長い長い「あと3年」だ。

そういう意味で「三田のガウディ」なのだ。

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蟻鱒鳶ル

岡さんはとても気さくな方で、興味を示したらいろいろ説明してくださった。

ただ、これもあとで気づいたのだが、コンクリートを流す作業中できっと時間との戦いだったのだと思う。

にもかかわらず色々話をしてくれた。

そして、出たばかりの書籍をみせてくれた。

「その本、ここで買えるんですか?」

私もアホな質問をしたものだ。そんなわけない。

この写真は私が本と一緒に撮らせてほしいとお願いして撮影した一枚だ。

微力ながらインスタにアップして応援できればと思って撮った。

著作本を持つ岡さんご本人

 

蟻鱒鳶ル再訪記事はこちら▼

帰宅してすぐにアマゾンで書籍を購入した。

便利なもので翌日には私の手元に届いた。

そして、一気に読み終えた。

応援したいと思って買った書籍だったけれど、全く逆だった。

何が逆かというと私は応援する側ではなく、応援される側だったのだ。

個人的なことになるのでここで詳細は差し控えるが、美術、デザイン、建築とどれもこれも中途半端に携わってきた自分を憂いていたけれど、岡さんも建築だけでなく舞踏をやられたり、画廊をやったりして、そのすべてが「蟻鱒鳶ル」として結実しているのだ。

私は「今までやってきたことすべてが無駄ではないよ」

と後押しされたような気がしたのだ。勝手に。

バベる!自力でビルを建てる男

この書籍は単純におもしろく読むこともできる。

コンクリートがこんなに奥深いとは安藤忠雄展に足を運んだり、安藤建築を何度も見学しているが、わからなかった。

建築現場の断絶に関しても、私は空調の効いた現場事務所のきれいなトイレを使う側だったので、あんまり感じていなかった。

いや、感じていなかったのではない。

気付かないふりをしていたのだ。

そういう意味でいろんなことに気づいたし、知ってるつもりで全然わかってなかったことが露呈して恥ずかしくなったりしながら読み進めた。

たとえばコンパネ、コンパネと知ったように口にしていたが「コンクリートパネル」の略称とは恥ずかしながら知らなかったのだ。

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カバーをはずしたバベる!

一気に読み終えて前ボスに言われた言葉を思い出した。

「頭で考えて制作するのではなく、まるで生理現象のように、描きたくてたまらない、創りたくてたまらないという、抑えられない欲求や衝動につき動かされて制作するのが本物のアーティストだ」と。

今までいろんなアーティストに会ったけれど、この言葉にあてはまるアーティストは実はすごく少ない。

岡さんは建築家だけれど、生理でビルを建てていると思う。

建てずにはいられない、建てたてくてたまらない、

その抑えきれない欲求と衝動につき動かされて自力でビルを建てているのだ。

そういう意味では本物のガウディをも凌駕するかもしれないと思う。

だって、ガウディはさすがに自力で作ろう!とは思わなかっただろうから。

最後に、ファンの間では有名な話だが、親が朝日新聞の人生案内に相談するほど音楽に夢中だった18歳の青年は、後に岡さんも好きなRCサクセションになる。

今は亡き清志郎も生理的衝動で音楽を続けていたに違いない。

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