沼津を訪れたのでずっと訪れてみたかった場所へ行ってきました。我入道にある菊竹清訓設計の建築です。
ここは、この地で生まれた小説家芹沢光治良の記念館で、印象的な螺旋階段が素晴らしい建築です。
PR沼津市芹沢光治良記念館とは
1970年(昭和 45)に元スルガ銀行会長で芹沢光治良の中学の後輩である岡野喜一郎が設立した旧財団法人芹沢・井上文学館により芹沢文学館として建設され、運営されてきました。
2009年(平成21年)に財団から沼津市に寄贈され「沼津市芹沢光治良記念館」としてリニューアルオープンしています。
1階展示室では、我入道で生まれ育った文人であり、沼津市名誉市民でもある芹沢光治良の人物像、業績や作品の周知を目的とした展示を見ることができます。
2階展示室は市民公募によるギャラリーとして開放されています。
▲リラックスしたニャンが迎えてくれました。可愛い。
沼津市芹沢光治良記念館の建築
建築は芹沢文学館として開館当時の1970年に竣工した建築で、設計は建築家の菊竹清訓が手掛けました。
現在は、菊竹清訓も芹沢光治良も亡くなっていますが、計画時はお二方ともご存命だったので、直接話し合いながら建築の計画を進行したようです。
また、計画時には要望により用途変更が生じたり、建設予定の敷地に変更があったりして試行錯誤が繰り返されました。
ようやく着工したものの、竣工直前に施主による強い要望でピロティだった1階を埋める追加工事が発生したという記録が残っています。
紆余曲折を経て竣工したのが現在の記念館の建築です。
沼津市芹沢光治良記念館の外観
芹沢光治良は、29歳の時にフランスへ留学しフランス文学の影響を強く受けていることから外観は中世ヨーロッパにある教会をイメージして設計されました。
▲内部からはまるで教会そのものに見えますが、外からも教会に見える瞬間があります。
この十字架状のスリットのガラスを通して太陽の光が通り抜け、外観にも光る十字架が現れるのだそうです。
ただし、その様子が見られるのは年に数日のみ。だいたい10月初旬だそうです。近所だったら狙って訪れてみたいなぁ。
▲また、外壁には芹沢家の家紋があしらわれています。
PR
沼津市芹沢光治良記念館の内観
教会をイメージしているため元々はピロティだった1階は天井高5mの大空間となっています。これがすごい空間でした。
1・2階の天井は、沼津市章にも用いられている松林の松葉をイメージしたV字状の意匠が施されています。
とっても象徴的な意匠でまるでレリーフですね。
2階展示室は全方位全面ガラスなので、周囲の我入道松林と駿河湾が眼前に広がりとても開放感のある空間です。
沼津市芹沢光治良記念館の螺旋階段
芹沢光治良は漁師の網元の家生まれなので、螺旋階段空間はのモチーフは海底です。
▲地下が海底 、屋上が海面、照明器具は漁具の浮標なんだとか。確かに上から覗き込むと海のようです。
▲荒天でなければ屋上に出ることもできます。
▲実は、正面玄関の入口階段は波打ち際をイメージしたデザインです。
PR
芹沢光治良文学碑
記念館からも見える海のそばに芹沢光治良文学碑が建っています。建築家の大高正人と彫刻家の向井亮吉の共作による文学碑です。記念館開館の7年前の1963年に建立されました。
ちなみに大高正人は前川國男事務所出身で我が家の近所で、解体の危機を免れ改修工事中の全日本海員組合本部会館の設計を手掛けています。
向井亮吉は東京文化会館のレリーフが有名ですね。
長年海の潮風にさらされたせいか、これまで目にしたことがないくらい劣化していました。
右側には大きな亀裂が入り、今にも崩れ落ちそうな文学碑でしたが、ここまで劣化すると移築するってわけにもいかないでしょう。
芹沢光治良とその記念館の歴史を感じずにはいられません。
沼津で建築とアートを巡る旅▼
基本情報
開館時間:9:00 – 16:30 休館日:月曜休館 入場料:一般(高校生以上)100円、子ども50円 住所:静岡県沼津市我入道蔓陀ケ原517−1MAP |