上野の駅前にある前川國男設計の東京文化会館のバックステージツアー<建築編>にようやく参加することができました。このツアーは大変人気でチケットを取るのはかなりの争奪戦に勝ち残らないといけません。
今年、ようやくチケットをゲットできたので念願の建築編に参加してきました。いつもは入ることのできない内部を見学することができて大満足のツアーでした。

バックステージツアー建築編
今年は5月と6月に1回づつ計2回のツアーが開催されました。バックステージツアーには<建築編>の他に<舞台編>というのもあり毎年大人気なのです。私は建築編の方に参加しました。
最初に4階の会議室に集合し前川建築設計事務所で東京文化会館を担当されている方によるレクチャーが行われます。
スライドを見ながら、東京文化会館の基本的な話を聴講します。
そのあと、二つのホールなどを見学してまわります。人数は各回20名限定です。
荷物をレクチャーを聞いた会議室に置いておけるので身軽な状態で見学できるのが良かったです。
東京文化会館の青い螺旋階段
ツアーの最初の目玉は、青い螺旋階段です。
東京文化会館の赤い螺旋階段はとても有名で、一般の人でも開館していれば見ること、通ることが可能です。(1階から2階までのみ)
青い螺旋階段は裏導線なので一般の人が通ることも、見ることもできない場所にあるのです。
はっきり言ってこのツアーに参加した第一の目的は、赤い螺旋階段と対になる青い螺旋階段をこの目で見られること。さらには上り下りできることです。
そして、本当にどこもかしこも真っ青でした。感動〜!!
関係者しか目にできない、上り下りできない青い螺旋階段は本当に青かった。そして、赤い螺旋階段との明らかな違いは東京文化会館のステージに立った世界中の方々のサインがたくさんあることです。あぁここは舞台裏なんだなぁと実感しました。
とにかく、青い螺旋階段を上から下まで上り下りすることができて感無量です。ツアーに参加した意味がありました。
ちなみに見学者はエレベーターか螺旋階段を使うかは選択できますので、足腰に自信のない方はエレベーターを使えるので大丈夫です。

東京文化会館の小ホール
小ホールは、前川國男と彫刻家の流政之(ながれまさゆき)の協働空間と言っても過言ではありません。舞台の中央にある蛇腹の昇り屏風と両脇のコンクリートの造形は流政之が手がけたものです。

▲この舞台中央の蛇腹は、流政之の作品であると同時に舞台の音を響かせるための機能、すなわち音響反射板であって単なる装飾ではありません。

▲小ホールの後方にある照明も流政之の仕事です。この照明は篝火をイメージしたもので矢羽行燈照明と言われています。
小ホール全体は扇型をしており、コンクリートの荒々しいマチエールが印象的な舞台両脇の音響反射板の組み合わせは、非常にモダンで落ち着いた空間になっています。

小ホールは初めて入ったので、とても新鮮でした。流政之のコンクリートの造形は主張しすぎない存在感があり、ここでもリサイタルなど公演を見てみたいなと思わせる空間でした。
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小ホールの赤い回廊
小ホールにある赤い回廊は通好みの場所だそうです。ここは公演を鑑賞に来た人であれば通ることのできる場所です。今まで下からは見たことがあったのですが、通るのは初めてでした。

▲真っ赤な回廊は赤い螺旋階段同様に高揚感をマックスまで高める空間です。
こんなにモダンでドラマティックな空間が60年以上前に作られたと思うとすごいです。

▲ここからは、東京文化会館のエントランスのタイルの模様を俯瞰でよく見ることができます。
当時の所員がとんでもない時間をかけてタイル割をデザインしたというそのデザインの全貌がよく見えます。コンピューターがない時代にこのタイル割をデザインするのは本当に大変だったと思います。その涙ものの苦労を思い描きながら眺めましょう。
このタイルは落ち葉をイメージした模様だそうです。ちなみに天井の照明は天の川です。

小ホールで公演を鑑賞する場合はこの赤い回廊を通ってみることをおすすします。と前川事務所の方がおしゃっていました。

▲小ホールの赤い回廊は、文化会館のエントランスのギフトショップの真上にありますので、いつでも下から見上げることは可能です。
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大ホール
東京文化会館のメインホールである大ホールです。

大ホールはホールに入る前のエントランス空間もとても広い空間が用意されています。なんせ大ホールは5階建てで2303席もあるのですから、公演前後の人の流れも小ホールのそれとは全然違います。
私自身小ホールは今回のツアーで初めて入ったのですが、大ホールは過去にオペラとバレエを鑑賞したことがあります。
エントランス
世界最高峰のバレエやオペラを観劇する前、中間、後に通る場所ですから、高級感と高揚感を併せ持っていないといけません。

▲贅沢な大空間です。天井の照明はエントランス同様に星空のようです。床のタイルも落ち葉のパターンが続いています。

▲真ん中のオレンジの部分はタイルではなくテラゾーです。

▲ホールへのピンクの入り口も斬新ですが、非日常を演出するにはとても効果的なカラーリングです。手すりの造形も見逃せません。
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向井良吉
小ホールの音響反射板は流政之でしたが、大ホールは向井良吉です。ブナの木の有機的なフォルムがなんとも美しいレリーフです。ホールの広さと天井の高さと向井良吉の大胆なレリーフでゴージャスな空間に仕上がっています。
なんせs席は7万円もするような公演を開催するホールですから、優雅で贅沢な場所でなければいけません。

舞台から
公演では訪れたことがありましたが、今回は舞台に上がることができました。
ツアーに参加したおかげで演者でなければ見られない光景を目にすることができました。

▲客席のシートの色がランダムなのは、最近では国立競技場でも取り入れられた空席が目立たない方法です。
東京文化会館の前川ポイント
ポイントはたくさんあって、書ききれませんが、ツアーでしかみられない場所にある泰山タイルもポイントの一つです。

▲こちらは、ツアーの最初にレクチャーをした4階の会議室前のロビー空間。
ソファも前川デザインのもの。十字の形のコンクリートの柱と白い泰山タイルがオリジナリティ溢れる空間のポイントです。

▲4階の壁は泰山タイルです。こちらは珍しい白い泰山タイル。マチエールが激しめのタイプとフラットなものとその中間のものの3種の貼り分けで構成されています。

▲白の他に写真の紫とブルー系の泰山タイル、深い青系のタイルと3色のタイル壁がありました。いずれも4階なので一般の方は見るのは難しいですね。

▲そここにある手すりの造形も凝っています。最近、シンプルでかっこいい手すりは見かけますが、こんなに木彫のような手すりはなかなか目にすることはありません。

▲エレベーターの階数表示は、ル・コルビュジエの影響を感じるステンシルの数字。

▲写真撮影が禁止だったので、写真はありませんが、屋上庭園の見学もしました。この写真の上階、長方形に開口しているところから、正面の西洋美術館を眺めることができました。初めて目にする風景でした。

東京文化会館はツアーに参加しなくてもその個性的な外観やエントランス、真っ赤な螺旋階段など見どころは満載です。
建築ツアーは年に1回でかなりの激戦なので、まずは一般でもみられる範囲での見学をしておくのもおすすめです。
基本情報
東京文化会館
台東区上野公園5−45MAP |