内藤礼の個展が東京で久しぶりに開催されています。会場は上野の「東京国立博物館」と銀座の「銀座メゾンエルメス フォーラム」。
東京での個展は2020年の六本木のタカイシイギャラリー以来です。タカイシイギャラリーの個展でもその静謐な美しさは健在でした。
また、誰もが知っている内藤礼の作品と言えば建築家の西沢立衛との協働「豊島美術館」の《母型》でしょう。豊島美術館へは3回ほど訪れていますが、何度行っても新しい発見があり、これからも折りに触れて訪れたい場所の一つです。

このブログでは、東京国立博物館と銀座の銀座メゾンエルメス フォーラムで開催している内藤礼「生まれておいで 生きておいで」をみる前に知っておくと便利な情報をまとめてみました。
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日本でしかその作品の鑑賞体験はありませんが、今でも印象に残っているのは、2009年の神奈川県立近代美術館での個展「すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」です。

今や当時神奈川県立近代美術館だった場所も美術館ではなくなってしまい、(坂倉準三設計の神奈川県立近代美術館は鎌倉文華館 鶴岡ミュージアムに用途変更され、現在は葉山館と鎌倉館のみ)残念ながら水面に揺れる常設作品(▲写真)ももう見られません。
そんな今となっては夢だったのかと思えるような儚さも内藤礼の作品とダブって記憶に残っています。

▲その後、2014年に東京都庭園美術館で開催された「信の感情」は、あの小さい人が通いなれたアンリ・ラパンの空間のいろんな場所で出迎えてくれてとても楽しい気持ちになりました。(庭園美術館の展覧会は珍しく写真撮影が可能でした。)
2016年に資生堂ギャラリーで開催された「椿会展2016 -初心-」でも同様でした。

さらに、水戸芸術館で2018年に開催された自然光だけでみせる個展「明るい地上には あなたの姿が見える」もトップライトのぼんやりとした光だけの空間に密やかに点在する小さな作品の数々は今でもはっきり覚えています。
2020年金沢21世紀美術館で鑑賞した「うつしあう創造」は、入場予約をしてから訪問し限られた人数で鑑賞する展覧会でした。予約して鑑賞する内藤礼作品と言えば直島の「きんざ」や2021年コロナ禍で開催された東京ビエンナーレでのPraying for Tokyo 東京に祈る─「わたしは生きた」は、蔵前の寺院、長応院境内のギャラリー・空蓮房に一人づつ入ってじっくりと作品と向き合うインスタレーションでした。
私が今でも悔やんでいるのは、伝説のアートスペース佐賀町エキジビットスペースでの「地上にひとつの場所を」を鑑賞していないことです。これは内藤礼の伝説的な作品で、内藤礼を語る上では欠かすことのできない展覧会です。
しかし!2022年にアーツ千代田 3331で開催された「オルタナティブ! 小池一子展 アートとデザインのやわらかな運動」のなかで80’s佐賀町アーカイブ展の一部として「地上にひとつの場所を」 1991/2022が再現されたのです。ということで再制作ではありましたが、内藤礼の金字塔的な作品も鑑賞することができましたので、堂々と”内藤礼のファン”と語ってもいいのかなと自負しています。
上野では国立西洋美術館での「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?――国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」に内藤礼も参加していたので、久しぶりというわけではありません。
ただ、今回の東博は儚くて密やかな内藤礼の世界観にどっぷり没入できる個展ですから格別です。
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東博内藤礼個展の展覧会構成
東博での内藤礼の個展は3会場で開催されています。
第一会場が平成館企画展示室、第二会場が本館特別5室、第三会場が本館1階ラウンジです。
東博の推奨コースは当然第一、第二、第三の順番に観ることです。

東博内藤礼個展の写真撮影について
これまでの個展やきんざ、豊島美術館がそうであるように、東博の「生まれておいで 生きておいで」も全ての会場で写真撮影は禁止です。
ですから、このブログも残念ながら展示風景の写真はありません。
素晴らしいインスタレーション作品を体感し、しっかり記憶に焼き付けましょう。
なお、本展は8月1日以降は日時指定の事前予約制になりましたが、チケットはすでに完売しています。ただ当日券枠は残っているようなので全く入場できないという訳ではないようです。

内藤礼個展第一会場 平成館企画展示室(ネタバレ注意)
最初の会場は、細長い展示室です。
入ると正面の壁は全てガラスの展示ケースになっており、その展示ケース内の照明のみ点灯しています。展示室そのもののダウンライトは消灯しています。
作品はガラスケースの中にも外にもあり、展示室全体に作品が点在しています。
入口で渡される作品リストをたよりに作品を探しながら鑑賞するのですが、薄暗いため、文字の小さな作品リストの見ずらいこと!内藤礼あるあるです。
この展示室のポイントは作品No.2です。作品リストにある平面図ではガラスケースの端っこにナンバリングされているので、豊島美術館で見つける難易度の最も高い細い糸が垂れているだけのような、すごいわかりづらいものなのかと思って目を凝らして探しても見つからず、スタッフに聞いても分からないということでした。(会期後半にはスタッフにも認知されていると思います)
しかし、作品リストに明記されている作品のサイズをみて、わかりました!内藤礼らしい小さくて繊細なものを探してはいけません。
作品No.2は実はとても大きな作品で、ガラスケース内の床部分全体の事だったのです。
No.2と同タイプの作品はこの後の展示室もサイズ違いで繰り返し出てきます。一番巨大なのは第一会場です。
さらに、展示室内に居たスタッフに間違ったことを教えられたのでここに書いておきます。(しばらくはその情報がそのままの可能性もあるので)
No.28の作品は、空間全体に吊るされたもののことです。壁面にあるパネルではありません。

ということで、ここ第一会場で認知しにくいのは、no.2とno.28の2作品です。わかってしまえばそんなに難易度が高いものではありません。
豊島美術館の認識するのも難しいほど細い紐が、ただ上からぶら下がっているだけの作品に比べたら全然見えますので。
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内藤礼個展第二会場本館特別5室
第二会場は明るくて天井が高い大空間です。周囲に回廊があって、中央が吹き抜けなっている気持ち良い空間です。
東博の本館にこんな空間があったんだ!という新鮮な驚きを覚えました。
さらに、上部から吊り下げられた小さき作品の数々の儚さが愛おしく、繊細で内藤礼らしいインスタレーションに仕上がっています。

▲特別5室の出入り口には、トンネル状のエントランスが新設されています。
ここは明るいので作品リストも見やすいし、わかりにくい作品は特にありません。
座ってもいい作品と共に息を吹きかけてもいい作品があります。

この空間は1階の壁は全てトラバーチン、2階の回廊の大理石の手すり下は、見事なアイアンワークが施され、銀色の扉やその上にある照明の意匠など見どころ満載です。▲上の写真は本館大階段の手すり下の意匠です。特別5室の回廊にはこれよりも大型の衣装が施されていました。
内藤礼個展第三会場本館1階ラウンジ
ここは、これまで紹介した2つの会場と違って、内藤礼の展覧会チケットがない人も出入りできる場所なので、たまたま通りかかった外国人観光客と内藤礼展を見に来た人が混じる空間です。
作品は床置きのわかりやすいものと、同じ作品が壁面4ヶ所に展示されています。
ここもまた東博にこんな場所あったんだという美しい空間です。

特筆すべきは窓のデザインと壁面のモザイクです。照明もエレガントなデザインでした。▲写真は本館2階の照明です。
今回の個展は東京都庭園美術館での個展に少し近いかもしれません。というのもホワイトキューブではなく、歴史ある建築空間との共鳴が美しいインスタレーションだからです。まさにここでしかみることのできない内藤礼の儚くて密やかな作品世界です。
この空間は内藤礼展が終了したら普通に写真が撮れるようになると思うので再訪しようと思っています。
東博って企画展だけ見ていつも満足というか疲労してしまい、常設などをちゃんと見たことがないことを反省しました。
いつか”丸一日中東博”っていうのもやるべきですね。
内藤礼個展の展覧会図録
展覧会図録は、本館1階にあるミュージアムショップで受注販売していました。
そりゃそうですよね。展示終了後に撮影して図録を制作するのですから、会期中に間に合うのか、会期中ずっと受注販売なのか、微妙なところです。

内藤礼の個展だけを見るなら1日がかりにはなりませんが、内藤礼の個展のチケットで東博の展示は(企画展以外)全部鑑賞できるのでくまなく見ようと思ったら大変です。
当然、谷口吉生設計の法隆寺宝物館も見られますし、本館の裏にある庭園や、表敬館で開催中のカルティエの展覧会まで見ようと思ったら完全に丸一日コースです。
でも、実は日がな一日内藤礼の作品空間に身を置き、午前の光と午後の光の違いを身体で感じるという鑑賞方法が一番贅沢で、充実しているのかもしれません。
また東京国立博物館に続けて銀座メゾンエルメス フォーラムでもう一つの《生まれおいで 生きておいで》展を鑑賞するのも良いでしょう。上野から有楽町まで電車で10分ほど、土日祝日には上野と銀座を結ぶ無料シャトルバスも利用できます。
無料シャトルバスのスケジュールはこちらをどうぞ。
東博の内藤礼 基本情報
内藤礼 生まれておいで 生きておいで (東京国立博物館)
会期:2024年6月25日(火) ~ 9月23日(月・休) 時間:9:30~17:00 休館日:月曜日と9/17(火) チケット料金:一般 1,500円、大学生 1,000円 高校生以下無料 会場:東京国立博物館 住所:台東区上野公園13−9 MAP アクセス:JR上野駅公園口・鶯谷駅南口より徒歩10分、東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、千代田線根津駅、京成電鉄京成上野駅より徒歩15分 |
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銀座メゾンエルメス フォーラムの内藤礼
銀座メゾンエルメスでの内藤礼の《生まれおいで 生きておいで》は125点の作品が2フロア+1で展示されています。
いつものように8Fと9Fが展示室ですが、今回は10Fのプライベート・シネマ「ル・ステュディオ」のロビーも資料コーナーとして使用されています。

銀座メゾンエルメスフォーラムでの写真撮影について
これまでの内藤礼の個展ががそうであったように、銀座メゾンエルメス フォーラムの「生まれておいで 生きておいで」も写真撮影は禁止です。
ですから、こちらの会場についても展示風景の写真はありません。
東博とはまた異なる、銀座というロケーションでのガラス張り空間での緊張感あるインスタレーション作品を記憶に焼き付けましょう。
銀座メゾンエルメスフォーラムでの注意事項
まず重要なのが開館時間。今回は通常と異なり12:00開館です。
数年前から銀座メゾンエルメス フォーラムへの入場はソニー通り側のエレベーターを使用しるようになりました。銀座店の店舗内のエレベーターを使用してフォーラムへ入場することはできないので注意してください。

▲そして最重要なのがこれ!
必ず作品リストをもらいましょう。
東博と比べれば小さな会場に小さな小さな内藤礼の作品が125点も展示されているのです。見落としのないようしっかり確認しましょう。
作品数は125点ですが複数のオブジェで1つの作品というインスタレーションも多いですし、中には複数の展示室にまたがって1つの作品というものもあります。
また作品リストには重要な注意書きも書かれています。触れる作品はどれか等々、作品リストを見ないと分からないことがたくさんありますから。
そして、もしまだ東博の内藤礼を見ていないなら、無料シャトルバスで上野の東京国立博物館へ移動して、もう一つの《生まれおいで 生きておいで》展を鑑賞してみてはどうでしょうか。
無料シャトルバスについては次のとおりです。
無料シャトルバスとスケジュール
東京国立博物館と銀座メゾンエルメスを約30分で結ぶ無料シャトルバスは東博の《生まれおいで 生きておいで》展開催期間中の土日祝日に運行されます。
どれも先着20名までの定員制です。
また東博での《生まれおいで 生きておいで》展は予約制です。銀座メゾンエルメスから乗車する場合は予約があることを確認してください。シャトルバスが走る土日祝日に当日券が残っていない可能性が高いです。
東京国立博物館 → 銀座メゾンエルメス
出発時間:11:00, 12:00, 13:00, 14:00, 15:00, 16:00, 17:00
バス乗り場:東京国立博物館 正門 (9/7のみ平成館内ラウンジ集合)
注意事項:展覧会チケット要提示、発車15分前から受付
銀座メゾンエルメス → 東京国立博物館
出発時間:12:30, 13:30, 14:30, 15:30
バス乗り場:外堀通数寄屋橋交差点近く
注意事項:発車15分前からエレベーター前でバスチケットを配布
銀座メゾンエルメスの内藤礼 基本情報
内藤礼 生まれておいで 生きておいで (銀座メゾンエルメス フォーラム)
会期:2024年9月7日(土) ~ 2025年1月13(月・休) 時間:12:00~19:00 休館日:水曜日 チケット料金:入場無料 会場:銀座メゾンエルメス フォーラム 住所:中央区銀座5−4−1 MAP アクセス:東京メトロ銀座駅B7出口直結 |