美術館は、通常展覧会を鑑賞するために足を運ぶ場所ですが、実はそれ以外にも見どころはたくさんあるのです。
たいていの美術館は有名建築家がその建物を手がけていることが多く、建築や内装、そして家具にもこだわりを感じます。
今回注目したいのは「美術館にある名作椅子の数々」その3です。

国内外の名作椅子が集結している東京国立近代美術館、デンマークの名作椅子に統一されている国立新美術館に続いて取り上げるのは、優れた美術館建築を数多く手がける谷口吉生設計の東京国立博物館にある法隆寺宝物館です。
東京国立博物館にある法隆寺宝物館は、厳密にいうと美術館というより博物館なのですが、すっきりとした無駄のない素晴らしい空間に、まるで美術作品のように置かれている名作椅子が、あまりにも美しいのでその3で特集したいと思います。

ここに置かれている名作椅子の種類はそう多くはありません。
しかし、これまでのどの美術館の椅子よりも、置かれる位置がシビアに計算されており、美術作品のようであり、また、柱とか窓のような動かし難い建築空間の一部でもあります。
購入できるものは参考価格を表記しています。
オプション、仕様により価格は変わります。
また参考価格は2022年8月末現在のもので今後変更される可能性があります。
PR413CAB
まずここでは、何を置いてもキャブチェア(413CAB CHAIR)です。
谷口吉生建築では度々登場するマリオ・ベリーニデザインの名作椅子です。
石川県の谷口吉郎・吉生記念金沢建築館でも象徴的に置かれていました。(コロナ前)
CABは目に見えるところは、全て上質なレザーだけで構成されているデザイン性の高い椅子です。
ここでは、肘掛け付きの413CABアームチェアが、厳密に計算された位置に置かれています。
適当に並べているだけではないんです。
その証拠に接着こそされていませんが、ずれないように床と脚が固定されています。

こんなに完璧な空間だと逆にリラックスできない気もするけれど、誰でも座っていいんです。
自分も谷口建築の一部になったつもりで腰掛けてみてください。
ガラス越しに美しい水盤が目の前に広がります。

その1で取り上げた東京国立近代美術館にもたくさんのCABがありましたが、CABは美術館と相性が良い椅子なんですね。
412CABアームチェアは、色の仕上げによって価格が変わりますが、カッシーナ・イクスシーで1脚363,000円〜
なお今はパンデミックも終わりホテルオークラ ガーデンテラスの営業が再開しているため、カフェのウエイティング用に椅子が増やされています。
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ウィスキーソファ
CAB同様にマリオ・ベリーニデザインのウィスキーソファ(402WISKEY)が2階のエレベータホールにあります。
CAB同様に見えるところは全て革です。
色々なマテリアルで構成されたものではなく、革のみというシンプルさが谷口建築に溶け込むのでしょう。
谷口吉生の整然とした緊張感のある空間にマリオ・ベリーニデザインの椅子はとても相性が良いです。

床のリフレクションが美しい。余計なものが一切ない空間です。▲

402WISKEYは、カッシーナ・イクスシーより1人がけ242,000円〜
LC2
ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ぺリアン、デザインの巨匠たちがデザインした、LCシリーズ。
ちょっと偉そうな?場所には必ずあるソファセットです。
しかし、革に全身を包み込まれるようなその座り心地は、選ばれしものだけが手にできる贅沢品そのもの。
あぁ、うらやまし。
庶民は美術館でほんのひと時の贅沢をかめしめたいと思います。

使い込めば使い込むほど、いい味が出る、”本物の家具”です。▲
LC2は、カッシーナ・イクスシーで1人掛けポリエステルパッディングが¥605,000〜
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マネジメントチェア
カウンターでスタッフが使用しているキャスター付きの椅子は、イームズ・アルミナム・グループ・コレクションのひとつイームズ・マネジメント・チェアです。
実は、マネジメントチェアは、他の場所にもあったのですが、、現在はこの入口のカウンターでしか見られません。

イームズマネジメントチェアは、ハーマンミラーから343,200円〜
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価格:368,500円 |
ベンチ
変幻自在に組み合わせ可能なベンチが2種類設置されています。円形タイプとスクエアタイプ。
本来、ここは資料室という機能の部屋でした。
資料室だったときは、デスクとイームズのマネジメントチェアが複数並んでいました。
コロナになってからどうやら資料室としての機能は中止され、下の写真のようにベンチが配置されています。
ベンチがどこの何かはわかりませんが、質の良いレザーのように見えます。
触ってみればよかった。

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建築
法隆寺宝物館の名作椅子は以上です。
これまで取り上げた2つの美術館に比べると格段に少ないかもしれません。
しかし、その椅子の扱いは、これまでで一番重きを置かれ、その存在感は強めです。
特にCABに関しては椅子がないとここの建築空間が完結しません。

こうやってみると赤いCABが、エントランス空間の重要な要素であることがよくわかります。▲

谷口建築と言えば、都内だとオークラ東京、また他の美術館建築がそうであるように、水盤が必ず取り入れられています。
このブログでも取り上げてきた鈴木大拙館、土門拳記念館、東山魁夷館などもそうです。
水面の反射や光もまたCAB 同様に重要な要素です。

階段の手すりやささらもこんなに美しくできるんだなぁとため息が出ます。▲
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展示室
残念ながら東京国立博物館は、無料では入れませんので、宝物館を訪れた方は特別な場合を除いて入場料を払っているはずです。
ですから、建築や椅子の見学も良いですが、是非展示室も鑑賞しましょう。

仏像類もこんなにシャープにかっこよく展示することができるんだなとというお手本みたいな場所です。▲

また、法隆寺に行かずして、こんなにたくさんの法隆寺の宝物をみられるっていうことにも驚きです。▲
展示しているものも、空間も全てがパーフェクトすぎて、ちょっと緊張を強いられる場所ではありますが、LCに身を任せて、奈良の法隆寺に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
あるいは、計算づくの装いで訪問して、CABに腰掛けて建築の一部になってみるのもありですね。
いったい、何色の服を着ていくのが、谷口吉生的正解なんでしょう。
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法隆寺宝物館基本情報
東京国立博物館法隆寺宝物館
9:30-17:00 月休 総合文化展チケット 一般:1000円 学生:500円 11/3文化の日は無料 台東区上野公園13−9 MAP アクセス:JR上野駅公園口、または鶯谷駅南口徒歩10分、東京メトロ銀座線、日比谷線上野駅、千代田線根津駅下車徒歩15分、京成電鉄京成上野駅徒歩15分 |
美術館の名作椅子の数々その1 国立近代美術館▼
美術館の名作椅子の数々その2 国立新美術館▼
美術館の名作椅子の数々その4
谷口吉生建築
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