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芹沢銈介美術館に行ったら絶対見た方がいい こだわりのつまった「芹沢銈介の家」


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芹沢銈介美術館に併設されている「芹沢銈介の家」は、かつて芹沢が過ごした家を美術館へ移築してきたものです。公開日は限定されていますが、芹沢銈介美術館へ行くならここを見学することを強くお勧めします。

芹沢銈介

1895年(明治28年)静岡市葵区本通に生まれの染色家です。民芸運動の柳宗悦を師と仰ぎ、柳を通して出会った沖縄の染物・紅型に感銘を受け、以降型染めを中心とした染色の道へ進みました。

芹沢銈介は染色家として人間国宝であり、文化功労者でありますが、世界の工芸品の収集家という一面もあります。

芹沢の収集は、個人のコレクションとしては厖大な量で戦後収集したものだけでも6000点以上にのぼります。そのうち4500点が芹沢銈介美術館に所蔵されています。

これらは、芹沢の作品と共に本人から出身地の静岡市に寄贈され、静岡市芹沢銈介美術館が1981年に開館しました。

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宮城の板倉を移築

蒲田にあった芹沢銈介の家は美術館のすぐそばに1987年(昭和62年)に移築されました。蒲田では本宅が別にあり、この家は主に客人を迎える場所として利用されていました。

また、蒲田で新築されたものではなく、元々は宮城県登米市の板倉で、1階には米や野菜や農具を収納し、2階は雇い人の宿泊場所として使われていました。芹沢はこの建物に惹かれて宮城県から東京蒲田へ移築し、さまざまな手を加えて客人を迎える場所として、時には創作の場所として使っていたのです。今でいう蔵のリノベーションということです。

1階

1階は客人を迎える応接間として、そして本人がスケッチやアイディアを練る場所として使っていた場所で芹沢にとってはお気に入りの場所だったようです。

家具や飾ってあるさまざまな工芸品は当然芹沢セレクトですが、この家のリノベーションも本人によるものです。建具や窓、照明や障子の割り付けまで全部芹沢デザインなんです。

例えば、左の2箇所の窓は元々壁だった場所に開口を設け、上から障子が降りてくる設に変更されています。▼

来客に合わせて、飾りや設を毎回変更していて、時にはそのために徹夜をすることもあったほどというこだわりよう。そこまでしているので客人が、飾ってある工芸品について話題にしないと機嫌が悪くなったらしいです。

照明は尊敬する柳宗悦の息子柳宗理デザインのもの。同じようなデザインを芹沢も考えていたそうで、この照明を見て悔しがったとか。▼

写真では分かりにくいのですが、左の扉の上には師柳宗悦の写真が飾ってありました。柳が亡くなってからはずっとここにこうして飾っていたそうです。▼

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2階

普段は1階のみの公開ですが、2階の特別公開の日に事前予約をして訪問しました。参加には事前予約と美術館の入場券が必要です。

時間になったら正門前に集合し、ガイド付きでの案内でした。

2階には公開中の展覧会「ジャパンブルー 藍のある暮らし」に合わせた芹沢銈介の藍のコレクションを中心とした収集品が展示されていました。

染め物は茶道具。置いてあるのは中央がタイのビンロー入れで蓋物です。カエルのような生き物なのですが、これが可愛い。1階にこの入れ物の親分のようなひとまわり大きい蓋物が置いてありました。

襖や引手、欄間や障子全て芹沢デザインの特別仕様です。▼

究極のこだわり

右の障子のデザインの凝りようったら。細部まできっちりデザインされていて、宮城の板倉だった面影はありません。▼

2階の窓の手すりと窓の桟の位置がピッタリ重なり合うようにデザインされています。▼

芹沢銈介は雑誌民藝の装丁を長らく手がけていることからわかる通り、染色家でありますが、デザイナーでもあるんですね。

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外構や家具

この正方形の障子の照明も芹沢デザインです。庭から門への道も当然芹沢デザイン。▼

2階から庭を見たところ。芹沢デザインの道はブリックと石による構成です。▼

この椅子も芹沢デザインです。▼

芹沢銈介美術館よりも芹沢銈介の人となり、そしてどんなところにこだわったのかは、芹沢銈介の家のほうがよく分かります。

芹沢銈介は、染色家として人間国宝でありながら、工芸品の大コレクターでもありました。しかしそれだけではなく、さらにテキスタイルデザイナー、グラフィックデザイナー、プロダクトデザイナー、インテリアデザイナー、ランドスケープデザイナー、そして建築家でもあったのです。

これだけ全部自分でやってしまうんだから、そりゃ、美術館建築を手がけた白井晟一とぶつかるわけだな、と納得しました。

美術館建築についてはこちら▼

白井晟一最晩年の美術館建築 静岡市芹沢銈介美術館 石水館へ行ってきた

2階は特別公開の時しか見学できません。次回の特別公開がいつになるのかは美術館のHPやツイッターをチェックしましょう。

1階の公開は日曜・祝日に行われていますが、部屋の中に入ることはできません。写真撮影は可能です。

究極のこだわりの芹沢銈介の家を見学して、芹沢銈介の審美眼の高さに驚くと共に、芹沢銈介が自分の美術館の建築をよく思っていなかった事に非常に納得したのでした。

きっと自分でやりたかったんでしょうね。これだけできちゃう人ですから。

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芹沢銈介の家基本情報

静岡市芹沢銈介美術館「芹沢銈介の家」

9:00-16:30  美術館開館日の日曜・祝日に無料公開(8月は土曜も)

 静岡県静岡市駿河区登呂5丁目10 MAP

日本民藝館 リニューアルされた大展示室と旧柳宗悦邸の西館

石川の旅その9 金沢の柳宗理デザイン研究所

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