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美術館そのものがアート 内藤礼と西沢立衛 豊島美術館


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豊島美術館

豊島にある豊島美術館は、建築家の西沢立衛(にしざわ りゅうえ)とアーティストの内藤礼による美術館の存在そのものが一つの作品という美術館です。

内藤礼と西沢立衛 豊島美術館

美術館が巨大な一つの作品

建築とアートが融合し、美術館そのものが巨大なアート作品であり、重要な観光資源となった好例としては、スペインのビルバオにあるフランク・O・ゲーリー設計のビルバオグッゲンハイム美術館があります。

現在では「ビルバオ効果」という言葉で通じるくらいこの美術館の成功は世界的に有名になりました。

ビルバオの町はかつて栄えていた鉄鋼業、造船業が衰退の一途を辿っていました。しかし、この革新的な美術館の開館をきっかけに見事に再生し、世界中から美術館のために観光客がやってくる街になったのです。

ビルバオ・グッゲンハイム美術館が開館したのは1997年。その姿を雑誌で見てから、いつか必ず訪問したいと思い、念願叶ったのが開館から14年後の2011年でした。

ビルバオ・グッゲンハイム美術館は、それまでに訪問したNYのグッゲンハイム美術館とも、ベネツィアのペギーグッゲンハイム美術館とも全く違っていました。

なんせ美術館の年間の入場者数は100万人を超え、バスク州政府は負担した建設投資額を3年間で回収できたほどです。

10年前に訪れたビルバオ・グッゲンハイム美術館で、アイコン的作品ジェフ・クーンズの「パピー」と共に▼

ビルバオグッゲンハイム美術館

前置きが長くなりましたが、建築とアートの融合によって、衰退した街を再生させるほどの力があるということは、ビルバオグッゲンハイム美術館で実証されたわけです。

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内藤礼 x 西沢立衛

豊島美術館は、建築家の西沢立衛とアーティストの内藤礼による美術館そのものが一つのアート作品という場所です。

内藤礼と西沢立衛 豊島美術館

建築とアートによる融合で成功したビルバオグッゲンハイム美術館と大きく違うのは、豊島美術館は、内藤礼のたった一つの作品のためだけの美術館だということです。

どこからどこまでが内藤礼のアイディアでどこからどこまでが西沢立衛によって創造されたのか、その境界線は非常に曖昧で、わかりにくいのですが、豊島美術館は建築家とアーティストの協働で最も成功した例ではないでしょうか。

だって、どこからがどこまでが建築で、どこからどこまでか作品なのか誰にもわからないし、そもそも分けようがないのですから。

真冬の豊島美術館▼

内藤礼と西沢立衛 豊島美術館

豊島美術館が開館する頃には、すでにビルバオグッゲンハイム美術館の成功は世に知られていたので、全く意識していないとは思えませんが、豊島美術館もビルバオ効果同様の効果が得られているのは、周知の通りです。

また、豊島美術館の開館よりも遡ること6年、2004年に金沢21世紀美術館が開館しています。設計は西沢立衛と妹島和世によるユニットSANAAです。

ここもとんでもない数の入場者数を叩き出していますが、形式としては常設展と企画展の両方を備えたビルバオグッゲンハイム美術館に近い内容の美術館です。ただ、金沢は美術館以外にも観光資源が豊富で、そもそもの知名度も高い都市なのでビルバオや豊島に比べると恵まれた場所であったことは否めません。

ビルバオにしても豊島美術館にしても、建築とアートの力だけで、他に何もない所でも、どんなに遠い所でも人はわざわざ訪問するのです。その価値のある建築とアートであれば。現に私はどちらもわざわざ出向いているのですから。

美術館入口までの道▼

内藤礼と西沢立衛 豊島美術館

母型

豊島美術館の内藤礼作品は、「母型」ただ一つです。一つの作品と言っても何か絵画とか立体作品が一つ置かれているというような類の作品ではありません。

母型はそこに身を置いて感じる作品です。ですから、解説は不要で、とにかく訪問する以外に知る方法はありません。

写真で見てもその良さやスケールや感じる音とか光とか雰囲気は伝わりません。身を置いて初めて感じられるものばかりです。

また、訪問する時間、季節、天気などでも全く違う表情を見せる作品なので、行く度に新しい作品と向き合うことになります。

館内は写真撮影禁止です。ここは未来永劫撮影禁止のままであって欲しいです。そう思っている人は多いはずです。

ここに足を踏み入れたら誰しも静かに思い思いの場所で、思い思いに作品の中に身を置き、思い思いに感じているのです。撮影なんてしている暇はないはずです。

美術館入口。ここで靴を脱ぎます。▼

内藤礼と西沢立衛 豊島美術館

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金銀赤の3本の糸とビーズ

そもそも隠しているという意図はないと思うのですが、なかなかその存在を認識しずらい”隠れアイテム”があります。ちょっと安っぽいフレーズでごめんなさい。

母型のキャプションには「地下水、コンクリート、石、リボン、糸、ビーズ」と書かれています。前半の素材は疑問に思う方はいないと思います。また、リボンはその優雅な揺らめきに目が釘付けになるはずです。

隠れているのは糸とビーズです。

直島の家プロジェクトの一つ内藤礼の「きんざ」でも、中に入った時には見えなかったのに、だんだん目が慣れてきて、何本かの糸が天井からぶら下がり、微かに揺らめいているのがわかったはずです。

母型にもきんざの糸くらい細い糸が天井から垂れ下がっています。しかも、3本。

この3本の糸は、金銀赤の3色でした。金と銀の糸は明かに光を帯びてキラキラと光っていました。赤い糸は他の2本とは異なり光りませんが、真っ赤なので一番目立つかもしれません。私は最初に赤い糸を見つけました。

そして、3本の糸はとても近い場所にぶら下がっているので1本見えたら、多分後の2本もすぐにわかるはずです。私は初訪問の時には見つけられず、2回目の訪問でこの3本の糸を発見しました。

しかし、ビーズは見つけられませんでした。というより見つけようとしなかったというのがが正解かもしれません。なぜかというと、次回訪問の時の楽しみとしてとってあります。

ビーズはどこにあるのかなぁ

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豊島美術館カフェ

今回、豊島美術館でも、カフェでも自分たち以外は誰もいない貸切の時間があってとても幸せでした。作品もカフェも自分のためだけに存在するような感覚に浸れるそんな贅沢な時間でした。

ここのカフェは豊島美術館に行ったら是非立ち寄ってお茶を飲んだり、グッズを吟味したりして作品の余韻に浸りたい場所です。

西沢立衛設計のミュージアムショップ&カフェ▼

内藤礼と西沢立衛 豊島美術館

ミュージアムショップ&カフェの入口。ここも靴を脱いで入ります。入口の先に見えるのは受付で、ここでチケットを購入して美術館へ入館します。▼

内藤礼と西沢立衛 豊島美術館

手前と右側がミュージアムショップ、左側奥がカフェのスペースです。この透明感があって静かな空気感は作品である隣の「母型」のイメージを踏襲しています。▼

内藤礼と西沢立衛 豊島美術館

オリーブご飯とほうじ茶のセット。オリーブご飯が美味しくて東京に戻ってからも自己流ですが真似して作っています。▼

内藤礼と西沢立衛 豊島美術館

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豊島に行ったら、何があろうが豊島美術館だけは行くべきです。もちろん他にも見るべき場所はあるのですが、とりあえず豊島美術館に行かないと豊島に行った意味がないと言っても過言ではないでしょう。なぜなら、ここは他では絶対得られない時間を過ごすことができるからです。

基本情報

豊島美術館

3月1日 〜 10月31日/10:00 〜 17:00、11月1日 〜 2月末日/10:00 〜 16:00

3月1日〜11月30日/火休、12月1日〜2月末日/火〜木休  開館カレンダー

一般1,570円、15歳以下無料

香川県小豆郡土庄町豊島唐櫃607 MAP

内藤礼の作品もある直島の家プロジェクトはこちらから▼

秋の直島その6 家プロジェクトとANDO MUSEUM

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