日本のガウディと呼ばれる建築家梵寿綱(ぼんじゅこう)の杉並区和泉2丁目と1丁目に位置するマンションを紹介します。
このブログでも既に早稲田にあるドラード和世陀(わせだ)や梵寿綱が梵寿綱と名乗る前の田中俊郎時代の松濤のマンションや梵寿綱初期の西麻布の建築などを紹介していますが、今回もそれら建築に負けるとも劣らないキテレツっぷりを発揮していました。
2軒の梵寿綱建築がある場所は杉並区ですが、最寄駅は京王線の代田橋駅から徒歩10分ほどの場所です。
マインド和亜(わあ)
1992年竣工のマンションです。
マインド和亜は、ガウディ好きのオーナーからの依頼で設計し、マンション名の和亜はオーナー親子の名前からとったそうです。
マインド和亜も御多分に洩れず装飾に次ぐ装飾です。
期待を裏切りませんね。やっぱり梵寿綱はこうでなくちゃ!

屋根の庇の裏までびっしりと装飾が施されているのには、空いた口が塞がらない状態に陥ります。(いい意味で)
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装飾過剰なコンビニ
かつてこんなにまでも装飾が施されているコンビニを見たことがあるでしょうか。
私がこれまでに見たコンビニの中で一番装飾の激しいコンビニです。
街の景観条例によって本来の色を使えずトーンを落としたコンビニは鎌倉や京都などで見かけますが、ここのコンビニは全く逆です。

マインド和亜の1階に入っているのは、コンビニエンスストアチェーンのデイリーヤマザキです。▲
梵寿綱建築に負けないように、ここにコンビニがあるということを、とにかく見過ごされないように、デイリーヤマザキのロゴマークが高所に一つ、低所に2つ合計3つ掲げられています。

コンビニと言えば、ファサードに帯状の内照式の看板があるのが定番ですが、ここにはどうしてもそれがつけられなかったんでしょうね。
苦肉の策のロゴマーク3連チャンです。

街中でその存在が目立つように作られている真っ赤な郵便ポストでさえ、その存在を忘れらてしまいそうなマインド和亜▲
にしても、1階がコンビニでポストまであるってかなり便利なマンションですよね。
住居
マインド和亜は、れっきとしたマンション、集合住宅ですので、ここには当然ながら住んでいる人がいるのです。

ちょっと怖い装飾が施された横の入り口▲

正面の入り口の装飾▲ 鏡を使った抽象的な絵柄のモザイクが施されています。

住民専用の中庭に続く入り口です。▲天井の装飾はなんでしょうか。
布がはためく様子を表現しているようです。

中庭は床モザイクで大きな魚が描かれています。▲
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モザイク
マインド和亜は、梵寿綱建築の中では90年代なので新しい方なのですが、それにしても既に築30年が経過しています。

それでも、工芸品のようなモザイクは全く古さを感じません。▲
やはり古来から伝わるモザイクの技法は、一つ一つ手作りですから、とても高価ですが、梵寿綱の建築に施されたモザイクの劣化の少なさを考えると普遍的だということがとてもよくわかります。
梵寿綱建築はモザイクをはじめ、工芸的な技法が多く使われているので、時間が経過すると建築全体が高級アンティーク品のような重厚さが出てきます。
それが魅力の一つと言えるでしょう。
基本情報
マインド和亜
杉並区和泉2丁目27−27 MAP |
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ラポルタイズミ
1989年竣工のラポルタイズミは、マインド和亜から代田橋駅および甲州街道方面へ徒歩2分ほど歩いた場所にあります。
とても近くなので梵寿綱巡りをする場合は、絶対にセットで見学したいマンションです。
マインド和亜の3年前にラポルタイズミが竣工しています。距離的にいっても、時期的にも同じオーナーの可能性が高いです。
マインド和亜は、ファミリータイプの部屋が中心のマンションですが、ラポルタイズミは、単身者向けの部屋が多い集合住宅です。

女神/ヴィーナスドーン!
長い髪をかき上げながらくねりのポーズをした巨大な女神/ヴィーナスがドーン!とファサードにいらっしゃいます。
このインパクトの凄さったら。

中に入って女神側を見上げてみると‥。

なんと!外側からは予想もつかない光景が広がっていました。
ちょっと暗めな青い照明の内部空間は、女神の周囲のステンドグラスが外からの光を受けて、くねりポーズのシルエットをくっきりと浮かび上がらせていました。
す、すごい!そしてなんか分からないけれど美しい!
外では女神ドーン!の存在感とインパクトに驚き、中に入ってステンドグラスの美しさに2度目のびっくりです。
やってくれるなぁ、梵寿綱!
と1人で声に出しそうになります。
飛翔するペガサス
マンションの側面には、なんと空に向かって飛翔するペガサスのレリーフがあります。
ラポルタイズミは、ギリシャ神話がテーマなのでしょうか。
ラポルタというのはイタリア語で扉という意味です。
イズミは地名の和泉から来てるのでしょうが、直訳すると「泉の扉」ということになります。
「泉の扉」その真意は分かりませんが、美しい響きであることは確かです。

飛翔するペガサス▲物凄い躍動感です。
しかし、ペガサスレリーフとその下の何もない壁面との温度差がすごいです。
梵寿綱建築らしからぬ、ごくごく普通のベージュタイルですから。
マインド和亜と違ってラポルタイズミは予算が限られていたのでしょうね。装飾がる部分とそうでない部分の落差が激しいです。
それにしても、ペガサス部分にも窓があるので、ここにも部屋があるようですね。
ま、中に入るとペガサスは見えませんから特に気にならないのでしょう。

これは、ギリシャ神話の牧神でしょうか?ちょっと夜に見たら怖いですね。▲
マインド和亜と違ってこの彫刻もとってつけた感がかなりあります。
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モザイク
ラポルタイズミにもマインド和亜同様に、入口周りには素晴らしいモザイクやアイアンワークが施されています。
マンション名の表札はアイアンワークですね。

柱は鱗模様のようなモザイクが。▲柱の台座もちょっと普通ではありません。
段差だらけで全くユニバーサルデザインではありません。
これは時代ですね。

エントランスの床モザイクは唐草模様のような図柄が広がっています。▲

エントランスの壁にもモザイクが続いています▲ 壁のモザイクはパッチワークみたいで可愛いですね。

前述しまししたが、マインド和亜に比べると、ラポルタイズミは建物全体に隈なく装飾が施されているわけではありません。
梵寿綱としてはもしかしたら物足りなさを感じている建築かもしれません。
しかし、細長い出窓の上下の装飾はアントニ・ガウディのサクラダファミリアのような雰囲気に見えなくもない装飾があったりします。
基本情報
ラポルタイズミ
杉並区和泉1丁目4−8 MAP |
今回は、一度に2軒も梵寿綱建築が見られてわざわざ杉並まで来た甲斐がありました。
梵寿綱の2000年代の仕事が分からないので、92年竣工のマインド和亜が最新建築ということでいいのでしょうか。
怖いもの見たさというか、とってもクセになる梵寿綱建築、まだまだ見てみたい!
梵寿綱が田中俊郎だった1960年代の建築▼
梵寿綱70年代の建築▼
梵寿綱80年代の建築▼
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