東京にはたくさんの名建築があります。日々たくさんの名建築を巡っていると名建築には必ずと言っていいほど美しい名階段があるものだと分かってきます。
今回は東京の名建築にある名階段の数々をご紹介します。
建築家は前川國男、坂倉準三、ウィリアム・メレル・ヴォーリズ、そして階段の魔術師と称された村野藤吾の名建築の名階段です。
階段は機能があって制約も多い。ここで紹介する階段の数々は芸術的な美しさを放つ存在です。
階段を上下を繋ぐただの動線ではなく、芸術的美しさを持つものにできるかどうかは建築家の手にかかっています。
だからこそ、名建築に名階段ありなのですね。
▲こちら改修前の写真なので今は、もっと綺麗になっているかも!
スポンサーリンク<東京文化会館>
設計:前川國男 竣工:1961年
上野の駅前に鎮座する東京文化会館はどこを切り取っても素晴らしい前川國男が手がけた名建築です。
前川國男の師であるル・コルビジェが設計した国立西洋美術館に隣接し、双方ともに上野の顔と言える存在です。
ポイント
そこにある螺旋階段は、小ぶりながらも情熱的な真っ赤な階段です。
躯体と接している螺旋階段なので、支柱はありません。
ですから、見る角度によっては浮いているように見える浮遊感のある軽やかな階段です。
ささらのジグザグと太い手すりの流線型の対比が面白いデザインです。
壁も蹴上も踏面もみんな真っ赤!
色も形も好きな階段の一つです。
東京文化会館の詳細は▼
基本情報
東京文化会館
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<アンスティチュ・フランセ東京>
設計:坂倉準三 竣工:1951年
市ヶ谷にあるフランス語の語学学校・文化センターです。
創設時の校舎は坂倉準三ですが、2019年から進行している改修・増築工事は建築家の藤本壮介が担当しています。
ここで紹介するのは、坂倉準三設計で1951年に竣工し、今でも現役の校舎にある現役の螺旋階段です。
ポイント
ここの螺旋階段は、優美な曲線とトップライトの光が美しいだけではないのです。
▲はぁー。ため息が出るくらい美しい。ブランクーシの彫刻のような艶かしい麗しさです。
美しいだけじゃない理由は、この階段の構造にあります。
実は世界的にも珍しい二重の螺旋階段なんです。
▲階段が二重になっているのがわかりますでしょうか。
右下の入り口ももう一つの階段です。
名建築ですから、何度も訪問してこの階段を上り下りしているのですが、現在は一般人の通行は禁止になっているようです。
アンスティチュ・フランセ東京の詳細は▼
基本情報
アンスティチュ・フランセ東京
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< 日生劇場>
設計:村野藤吾 竣工:1963年
階段の魔術師と言われた村野藤吾の世にも美しい螺旋階段が複数あるのが日生劇場です。
日本生命の本社ビルの一部にある日生劇場は、観劇を愉しむための空間なので、どこもかしこも非現実的な演出が施されています。
▲真っ赤な絨毯が高級感を、ドットの天井は軽快さを、ここは愉楽に浸る空間です。
華奢で優美な螺旋階段は、気持ちの高揚を表現しているかのようです。
▲エントランスには豪華な大理石の床から伸び上がるような階段がかかっています。
ポイント
まず、日生劇場は通常見学はできませんので要注意です。
いきなり行っても見学はおろか中に入ることもできません。
すべて不定期で開催される見学会に参加したときの写真です。
▲螺旋階段だけでも3箇所あります。
▲村野藤吾の階段に共通する繊細な手すりのデザインも素敵です。
▲手すりと階段の重なり芸術的な曲線は本当に美しいですね。
日生劇場は階段以外にも見所が満載です。
劇場の内部の天井やエントランスの造作など本当にすごいんです!!
日生劇場の詳細は▼
基本情報
日生劇場
※通常は内部の見学はできません |
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<目黒区総合庁舎/旧千代田生命保険本社ビル>
設計:村野藤吾 竣工:1966年
村野藤吾が設計した時は、千代田生命保険本社ビルでした。
現在は、貴重な建築を保存しながら目黒区役所として機能しています。
▲民間企業だった頃は華奢なスチールのみだった手すりを区役所として使用するにあたり、アクリルともう一つ手すりをつけました。その設計は村野藤吾の元で働いていた元スタッフが村野先生ならこうしただろうという意匠を考えたのです。
ポイント
現在は、市役所として不特定多数の人の出入りがあるので、竣工当時から比べるとかなり変わっているとは思います。
▲そうは言っても、この流麗な曲線を描く螺旋階段の美しさと存在感は、堂々たるものです。
▲中央を貫く柱は照明でもあります。
▲村野藤吾の階段でよく見る浮いている階段が色々な場所で見られます。
目黒区総合庁舎の記事▼
基本情報
目黒区総合庁舎
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<山の上ホテル>
設計:ウィリアム・メレル・ヴォーリズ 竣工:1937年
2024年2月より休館
ウィリアム・メレル・ヴォーリズ設計のアール・デコ建築です。
ホテルとして開業したのは、1954年。
35室のコンパクトなホテルですが、川端康成、三島由紀夫、池波正太郎、伊集院静らの著名な作家が愛した由緒あるホテルです。
ポイント
劇場同様に、ホテルなので、非現実的な空間でなければなりません。
▲日常を忘れさせてくれる真っ赤な螺旋階段は、このホテルのシンボルです。
▲階段の蹴上には、なんとテラコッタによる装飾がなされています。
なんて豪華なんでしょう!
▲文豪のように缶詰は無理だけれど、一度は泊まってみたい都内のホテルの一つです。
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山の上ホテル
2024年2月より休館 |
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