アーティゾン美術館の二つの展覧会
DUMB TYPE/ダムタイプ「2022:remap」の展示帰国展が開催されている京橋のアーティゾン美術館では、「アートを楽しむ ― 見る、感じる、学ぶ」展と「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 画家の手紙」展という2つの展覧会も同時開催しています。
ダムタイプの展覧会はバリバリの現代アートの文脈での展覧会ですが、同時開催の2つの展覧会は啓蒙的な、アートに親しんでもらおう、アーティゾン美術館の所蔵する作品を観てもらおうという展覧会です。
石橋財団は、19世紀後半の印象派から20世紀の西洋近代絵画、明治以降の日本の近代絵画、第二次世界大戦後の抽象絵画、日本および東洋の近世・近代美術、遡ってギリシア・ローマ美術まで約3,000点の作品を所蔵しています。
その所蔵作品を中心にした展覧会なので美術の教科書などに載っている作品や古今東西の有名アーティストの作品がいっぱい展示されています。
PRアートを楽しむ ― 見る、感じる、学ぶ
アーティゾン美術館5Fの展示室で開催されているのは「アートを楽しむ」、美術作品により親しんでもらおうというテーマの展覧会です。
「肖像画」、「風景画」、「印象派」という3つのセクションで構成されていて、作品を実際に観て、その背景を知り、アートを学ぶというプログラムになっています。
▲展覧会のキービジュアルにもなっているのはフランスの女性画家ベルト・モリゾの「バルコニーの女と子ども」。
アートを楽しむ : 肖像画
「アートを楽しむ」展の最初のセクションは肖像画。
自身を描く自画像やモデルを描く肖像画などです。
▲早逝した明治期の洋画家、青木繁の代表作「海の幸」。これはアーティゾン美術館が所蔵している作品です。
中央でこちらを向いている男性が青木繁自身の自画像であると言われています。
▲そしてこちらは日本の現代美術家、森村泰昌の「日本美術史になった私」シリーズの「M式 海の幸」です。
中央でこちらを向いているのは森村泰昌自身。
ちなみに他の登場人物も全員が森村泰昌自身です。
▲右は青木繁の「自画像」、左は森村泰昌の「自画像/青春(Aoki)」。青木繁の自画像になりきった森村泰昌です。
展覧会の入口に単に自画像を展示するのではなく、自画像をテーマにしたひとひねりした展示がされているところが親しみやすいです。
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アートを楽しむ : 帽子をかぶった自画像
さらに進むと「アートを楽しむ」を実体験できるコーナー「帽子をかぶった自画像」です▼
▲日本の洋画家、小出楢重(こいで・ならしげ)の「帽子をかぶった自画像」という作品です。
パレットと絵筆を持ちカンバスと椅子の前に立つ自身を描いています。
▲その自画像を描いた部屋が再現されています。
この再現部屋では実際にパレットと絵筆を握り、帽子を被ってポーズを取ることができます。
もちろん。写真撮影も可能です。
▲久しぶりに絵筆を握ってカンバスの前に立ってみました・・・
自画像は鏡を見ながら描くので、そのまま写真に撮っても絵画の自画像と同じにはなりません。撮影した写真を左右反転させると同じになるところがポイントです。
小出楢重に変身してみましょう。
なお、展示室内に消毒薬はありません。この自画像体験をしたい方は展示室の入口に用意されている消毒薬を利用するのが良いです。
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アートを楽しむ : 肖像画
肖像画のセクションではレンブラントからマネやピカソなど、アーティゾン美術館自慢の所蔵作品が並びます。
▲マティスにピカソ。
▲絵画だけでなく彫刻作品も展示されています。
アートを楽しむ : 風景画
▲風景画のセクションはテーマが広いだけに幅広い作家たちが並んでいます。
左はワシリー・カンディンスキーの風景画。まだ抽象表現になる前のものです。右はピカソの風景画。この2人がしれっと風景画セクションに並んで展示されているところがアーティゾン美術館のすごいところですね。
アートを楽しむ : 印象派
日本とも馴染み深くファンも多い印象派作品、やはり充実しています。
▲クロード・モネの蓮の池シリーズ。もちろんアーティゾン美術館所蔵作品です。
▲奥の中央にあるのはギュスターヴ・カイユボットの「ピアノを弾く若い男」。
その作品で描かれたピアノと同型のグランドピアノが展示され19世紀末のパリをちょっとだけでも再現しようとしています。
アーティゾン美術館の豊富な所蔵作品を使い、3つのテーマに沿ってアート作品が表現する土地や歴史の空気感を感じられる展覧会です。また実際に画家になり切ってみる、そんな遊び心のある展示でよりアートが身近に感じられると思います。
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石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 画家の手紙
アーティゾン美術館の4階の展示室では「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 画家の手紙」が開催されています。
▲石橋財団のコレクション展なのですが、その中で「画家の手紙」という特集コーナーがあるという構成です。
▲視覚表現で作品を発表する画家たちが自身でプライベートな心境を吐露する文章を綴った手紙。
アーティゾン美術館が所蔵する近代の画家の手紙や、それにまつわる作品が展示されていました。
▲もちろん見どころはアーティゾン美術館のコレクション。
例えばこれは岡田三郎助の「婦人像」。
▲切手にもなったりした有名な作品です。
このような有名作品や有名アーティストの作品が並んでいて、全部見ればここ2,000年間くらいの芸術作品を一気に見たような感じになります。
▲展示室中央の小部屋は村井正誠(むらい・まさなり)や白髪一雄(しらが・かずお)など日本の抽象画家たちの作品が展示されています。
部屋の中央に置かれているのは倉俣史朗のエキスパンドチェアーです。もちろん座って鑑賞して構いません。
いわばコレクション展なのですが所蔵する作品の数も質も高いので見ごたえのある展覧会です。
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鑑賞前に知っておきたいこと5点
1、写真撮影は?
今回の展覧会は原則写真撮影可能ですが、動画の撮影はNGです。写真撮影が禁止されている作品にはその旨の掲示があります。
2、手荷物は?
ロッカーに荷物を預けて鑑賞しよう。
基本的なことですが、展示室に向かう前に手荷物は無料のロッカーに預けましょう。
ここのロッカーは100円玉を用意する必要はありません。無料で利用できます。
なぜか、ここのロッカーの鏡の前でポーズをとってSNSに上げるのが流行っているようなので、自撮りが好きな方は是非どうぞ!
3、学生無料!
アーティゾン美術館は大学生も専門学生も高校生もみんな学生は無料です。(ただし要予約)
ですから、若い人が多いので平日であっても午後は人が多くなります。なるべく平日の午前中に行くことをおすすします。
4、アーティゾン美術館で他に何か観れるの?
入館したら全フロアの展覧会が鑑賞できます。
現在、この記事で紹介した「アートを楽しむ ー見る、感じる、学ぶ」と「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 画家の手紙」の他に「ダムタイプ|2022:remap」も鑑賞可能なので、時間に余裕を持って出かけましょう。
人によっては美術館という場所は敷居が高いと感じるかもしれません。
でもアーティゾン美術館は1,200円(Web予約)という比較的安価な料金設定で、所蔵する膨大な作品のコレクション展や時々の企画展を全部見ることができます。さらにその展覧会も遊び心があったり分かりやすい展示を心がけているようなので、とりあえず美術館へ行ってその空間に身を置きながらアート作品を鑑賞してみてください。きっと新しい発見があると思います。
アーティゾン美術館の記事▼
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基本情報
アートを楽しむ ー見る、感じる、学ぶ
2023年2月25日(土)– 5月14日(日) 10:00–18:00(5月5日を除く金曜〜20:00) 月休 入館料:一般Web予約1,200円、当日1,500円 大・専・高:無料(要予約)予約がない場合当日券購入 中学生以下:無料 予約不要 アーティゾン美術館 中央区京橋1丁目7−2 MAP |