国立新美術館で開催される大巻伸嗣の展覧会を内覧会にて一足先に鑑賞してきましたのでレポートします。
国立新美術館の館内で最大の展示室、天井高8m、2,000m²にも及ぶ巨大空間をダイナミックに使った個展です。これは見逃してはいけない展覧会です。
美術館空間に身を置いて初めてわかる大巻伸嗣の作品世界。
鑑賞というより体験といった方がしっくりくる没入型のインスタレーションを国立新美術館でぜひ!
スポンサーリンク大巻伸嗣 《Interface of Being 真空のゆらぎ》
今回の個展はなんと入場無料!こんなに素晴らしいものを近くで無料でみられるなんて!これはリピート確定です。
展覧会は7つのシリーズ、7つのエリアで構成されています。
中でも大巻伸嗣らしい圧巻の大作は2点です。この2点はいつまででも見ていられる、いやいつまでも見ていたいインスタレーションです。
くれぐれも時間には余裕を持って訪問してください。
大巻伸嗣 《Gravity and Grace》
展示室に入って思わず声を出してしまいそうになる作品です。
モノトーンなのに煌びやかで艶やかで、そして華やか。光と影を巧みに操るとこんなにも美しい空間が創造できるんですね。あぁため息。
展覧会ののっけから釘付けの作品です。
とんでもなく美しいインスタレーションが表現するのは、原子力が引き起こした未曾有の人災です。
色彩がないのに作品そのものも、その影も、目にみえるもの何もかもが美しい。
この作品では核分裂反応の象徴とも言える強烈な光を使っています。その光は最大で84万lm。
その強烈な光によって生み出されるのは巨大な壺(おそらく原子炉容器でもある)の全面にあしらわれた動植物からなる文様の影です。
その文様には猿が直立し人類となり、直立することで空いた手に棍棒を持つようになる人間の姿も。そして棍棒の次に人類が手にしたのが・・・
▲原子力の火だったのです。
《Gravity and Grace》の息を呑むような美しさで見落としてしまいがちですが、床にはフランスの哲学者シモーヌ・ヴェイユの箴言集「重力と恩寵」からの言葉が浮き出るようになっています。
▲壺の中にある鏡で覆われた多角形の光源が光の強弱をつけながら上下します。
その上下の動きと光の強弱によって生まれる影が、動くはずのない展示室全体を揺らめかせます。さらに詩が朗読される音声も流れていますから、目で作品を見て、耳で詩を聞き、さらに足元の警句を読んで。まさに五感をフルに働かせて作品を鑑賞しなければなりません
シンプルな装置ですが、強く印象に残るインスタレーションです。必見です!
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大巻伸嗣 《Gravity and Grace-moment 2023》
冒頭の作品にすっかり心射抜かれ、次に鑑賞者を出迎えてくれる作品は、フォトグラム作品です。
このフォトグラム作品は、壺から放たれる強烈な光を利用して制作されています。
つまりさっきまで見ていた巨大な壺のインスタレーションから生まれた二次的な作品です。
大巻伸嗣 《舞台美術、コラボレーション》
3つ目の作品群は舞台美術とダンサーとのコラボレーションのシリーズです。
舞台美術を手がけた「Rain」の記録映像やエラ・ホチルド振付・演出の「Futuristic Space」と「freeplus×HEBE×大巻伸嗣」の記録映像が見られます。
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大巻伸嗣 《Liminal Air Time-Space 真空のゆらぎ》
冒頭の《Gravity and Grace》で心射抜かれ、平面作品や舞台美術などの記録映像やスケッチを見て、ようやく心が通常モードに戻ったところで、またまた美しい大巻伸嗣の作品世界に誘われます。
大巻伸嗣と言えば薄いポリエステルの布が風に漂い、ゆらめくインスタレーションです。
2012年より様々なバージョンを制作しているシリーズですが、今回の個展の《Liminal Air Time ̶ Space 真空のゆらぎ》はこれまでで最大のサイズというのですから見逃せません。
確かに、これまで何度も見ていますが、こんなに巨大な空間で、こんなに巨大な布がまるで夜の海の如く怪しく、揺らめいているのは初見です。
海の中で波が砕けたり砂が擦れ合うサウンドインスタレーションもあり、まるで夜の海の中にいるかのようです。
息を呑むような美しい空間で、ただひたすらに作品を眺めていました。なぜなら本物の波と同様、同じ動きを2度とすることはないから見飽きるということがないのです。
するとどこからともなく、詩の朗読が始まりました。そして、目の前に人が現れたのです。
ダンサー鈴木竜氏によるパフォーマンスと関口涼子氏の詩の朗読と大巻作品3者による夢のコラボレーションです。
時に激しく、時にゆっくりとダンサー(鈴木竜)は波に沈んだり、浮き上がったりを繰り返します。
作品だけでも見る価値ありありなのに、この3者のパフォーマンスは最高でした。
内覧会だけでなく一般会期にも特別イベントとしてダンサーのパフォーマンスを見ることができます!
しかも内覧会とは別のダンサーが出るようので再訪しなくては!
皆様必見ですよ!
ダンスパフォーマンス情報
17:00~18:00 入場無料 出演:大宮 大奨(おおみや だいすけ)
▲11月5日に行われた大宮大奨によるダンスパフォーマンス。
約10分間ほど、《真空のゆらぎ》の布の動きに呼応するかのようなダンスインプロビゼーションでした。プレビューの時は詞の朗読に続いてダンスが始まりましたが、今回は朗読無しでダンスが始まりました。
鈴木竜ダンスパフォーマンス情報
2023年11月18日(土)鈴木竜 13:00~17:30
※上記の時間内で2~3回のパフォーマンス予定。
今後の開催予定です。
開催日 | 時間 | ダンサー | 会場 |
11月18日(土) | 13:00〜17:30で2,3回 | 鈴木竜 | Liminal Air Space |
11月26日(日) | 11:00〜16:30で2,3回 | 鈴木竜 | Liminal Air Space |
11月26日(日) | >11:00〜16:30で2,3回 | 子どもたち | Gravity and Grace |
12月1日(金) | 未定 | 鈴木竜 | Liminal Air Space |
12月9日(土) | 未定 | 鈴木竜 | Liminal Air Space |
12月9日(土) | 未定 | 子どもたち | Gravity and Grace |
12月15日(金) | 未定 | 鈴木竜 | Liminal Air Space |
12月25日(月) | 未定 | 鈴木竜 | Liminal Air Space |
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大巻伸嗣 《Linear Fluctuation》
コロナ禍の自粛期間に描いたドローイングです。
《真空のゆらぎ》で揺さぶられた心を落ち着かせてくれる空間です。
大巻伸嗣 《Rustle of Existence》
大巻伸嗣の自宅の裏庭の雑木林の映像に言語を通じた思索を重ねた実験的な映像作品です。
▲17分20秒の映像作品です。
大巻伸嗣 《ドローイング》
展覧会の最後はドローイングです。
これまでインスタレーションばかり見てきたアーティストなので、ドローイングを目にするのは初めてかもしれません。
大巻伸嗣 《ミュージアムグッズ》
展覧会会場最後にミュージアムショップのコーナーが特設されています。
▲展覧会図録(3080円)、ポストカード(220円)など展覧会の定番の商品の数々。
▲Tシャツ(4400円)やエコバック(1980円)も可愛い。
他にマスキングテープなどもありました。
スポンサーリンク写真撮影について
写真撮影可能です。
ついついゆらぎを動画で撮りたくなりますが、動画撮影は禁止です。
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国立新美術館について
国立新美術館の名作椅子について
基本情報
大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ
~ 10:00~18:00(金土は20:00まで) 火曜休館 入場無料 国立新美術館 企画展示室2E 東京都港区六本木7-22-2 MAP |