中谷芙二子の霧の彫刻 #47662 -NAGI 凪-
日本の現代芸術家でビデオアートやメディアアートの先駆者でもある中谷芙二子(なかや・ふじこ)は、特に人工の霧を使った「霧の彫刻」シリーズで良く知られています。
霧の彫刻は世界中に設置されているのですが、日本では東京郊外の昭和記念公園、石川県の中谷宇吉郎雪の科学館、長野県の長野県立美術館そして東京の品川シーズンテラスで常設の霧の彫刻を体験することができます。
最新(2021年)の長野県立美術館の「霧の彫刻 #47610 -Dynamic Earth Series Ⅰ-」が一番大規模で劇的で、長野と比較すると品川シーズンテラスはやや小規模になります。
しかし、霧の彫刻が東京の23区内で手軽に体験できるのは嬉しいものです。
幻想的で美しい中谷芙二子の霧の彫刻 #47662を東京で体験できる期間、時間そして体験できる場所の情報を紹介します。
▲品川シーズンテラスのイベント広場という芝生スペースがあって、その片隅に無理やり植えられたような木々。ここが品川シーズンテラスの霧の彫刻「#47662 NAGI 凪 」の舞台となる場所です。
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霧の彫刻
この霧の彫刻のタイトルは「霧の彫刻 #47662 -NAGI 凪-」。
▲キャプションが設置されているのでタイトルの由来などはそちらを見てください。
港区港南ということは、かつては海だった埋立地です。
夏になれば涼しい浜風が吹き込んで東京の街の温度を下げてくる、貴重な風の通り道です。汐留もそうだったのですが風の通り道を超高層ビルを塞いでしまって熱気が籠もるようにしてしまいましたからね。
▲時間になると人工の霧が出てきます。
その日の気温や風向きなどちょっとした変化で大きく姿を変えるのが霧の彫刻の特徴のひとつです。
▲湿度によっても霧の濃度が異なるようです。
地面から吹き出した霧が風に煽られ、イベント広場に広がる様子を楽しみましょう。
▲もう見慣れてしまった近所の子どもたちはともかく、初めて霧の彫刻を体験する子どもは嬉しくてしょうがないようです。もちろん大人も反応は変わりませんけどね。
霧の中を歩いても衣服が濡れるほどのことはありません。
むしろ中央公園側の水盤に足を滑らせたりしないよう気をつけてください。特に小さな子どもは。
PR霧の彫刻を体験できる日時
常設されている中谷芙二子の「霧の彫刻 #47662 -NAGI 凪-」。
体験できるのは毎年春分の日から10月31日までの約7ヶ月間です(春分の日は毎年異なり、前年の2月1日に春分の日の日付が発表されます)。
そして毎日9:00から18:00まで、毎正時に霧の彫刻が姿を現し、20分間続きます。
また雨の日やあまりに湿度が高い日は中止になるそうです。
霧が出てくる前に日英でアナウンスがあります。そのアナウンスが終わるとすぐに霧が出てきます。
▲写真中央の側溝のようなところから霧が吹き出してきます。
これが風向き、天候その他の条件で毎回異なる姿を現すのがこの作品の醍醐味です。
霧の発生装置は中谷芙二子が主導して開発したもので、20ミクロンの水の粒子が空気中に放出されてそれが「霧」になるというハイテク装置です。
霧の彫刻のある品川シーズンテラス
霧の彫刻 #47662が設置されている品川シーズンテラスですが馴染みのない名前ですね。
芝浦の下水処理場を改修したいわゆる第三セクターのオフィスビルです。
▲場所は品川のNTT村やSONY本社の先。
品川駅の港南口から徒歩数分ですが、距離的には高輪ゲートウェイ駅の方が近くて将来高輪ゲートウェイから直結すると思います。
▲またこのイベント広場からは真正面に東京タワーが見えます。そのためテレビドラマなどのロケ地としてよく使われています。
PR霧の彫刻のアーティスト中谷芙二子
この霧の彫刻シリーズで知られるアーティスト中谷芙二子の父親は、雪の結晶の研究や人工雪の製作で世界的に有名な物理学者の中谷宇吉郎です。
父親の仕事もあってアメリカでの暮らしも長く、高等教育もアメリカで受けたコスモポリタンなアーティストです。
▲2018年に水戸芸術館現代美術ギャラリーで開催された個展「霧の抵抗」の時の「シンコペーション」という作品。
メッセージ性の強いインスタレーションでした。
またこの時は「フーガ」という室内を霧で満たす作品も展示されていました。
半世紀以上にわたって活動を続ける中谷芙二子ですが、なんとこの時の「霧の抵抗」が日本国内で初めての美術館での個展でした。
そこで初めて中谷芙二子の仕事の全容を掴むこことができたのですが、ラウシェンバーグと友人だったり60年代から様々なメディア・アート的イベントを行っていたのを知ってかなり衝撃を受けたのを覚えています。
ジョンとヨーコを巻き込んで今のTwitterみたいなことを電話とFaxで実現したり、ビデオアート作品を制作したり、あまり表には出てこないものの現代の様々な表現手法の先駆者の一人です。
そんな中谷芙二子の作品なのでわざわざ品川のNTT村の向こうまで出かけて体験する価値はあると思います。
また、品川の霧の彫刻が気に入ったら長野県立美術館のもっと大きな霧の彫刻や、父親の記念館のために制作した石川県加賀市の霧の彫刻などを見に行くのも良いと思います。
▲これは石川県加賀市の「中谷宇吉郎雪の科学館」。中谷博士の業績をまとめて展示する施設です。
この中庭には娘である中谷芙二子のインスタレーション「グリーンランド氷河の原」が設置されています。中谷博士が研究していたグリーンランドの石を運んできて敷き詰め、そこに霧が吹き出るインスタレーションです。
私たちが訪問した時は既に設備装置が老朽化して霧が少ししか出ていませんでした。でも昨2020年に装置を修繕して今ではきちんと霧が出るようになっているそうです。
PR中谷芙二子の霧の彫刻をまとめた動画を紹介します。銀座メゾンエルメスフォーラムでの宇吉郎とのコラボ「中谷芙二子+宇吉郎」展、水戸芸術館での「霧の抵抗」そして長野県立美術館常設の「霧の彫刻 #47610 – Dyamic Earth Series I -」をフィーチャーしています。
基本情報
NAGI 凪 (Lull in the Wind)
9:00 – 18:00 まで、毎正時から15分間 入場無料、予約不要 品川シーズンテラス イベント広場 港区港南 1-2-70 MAP アクセス:品川駅港南口より徒歩6分 |
他の中谷芙二子による霧の彫刻、常設作品
長野県立美術館・東山魁夷館
長野県長野市箱清水1-4-4 MAP
中谷宇吉郎 雪の科学館
石川県加賀市潮津町 イ106番地
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