shiseido art egg
資生堂ギャラリーが2006年から始めた新進若手アーティストの公募展shiseido art egg はこれまでに宮永愛子、久門剛史、冨安由真など現在大活躍するアーティストを数多く発掘してきた現代美術の登竜門の一つです。
毎回3人が選出され、各々約1ヶ月間の展覧会会期が設定されています。
第18回は応募総数291件の中から大東 忍(だいとう しのぶ)、すずえり(鈴木 英倫子)、平田 尚也(ひらた なおや)の3人が選出されました。
審査員は3名で毎回メンバーが変わります。第18回は永山 祐子(建築家)、星野 太(美学者)、村山悟郎(美術家)の方々です。
入選した3名のアーティストは賞金の他に資生堂ギャラリーで個展を開催する機会を得るのですが、第18回の第1期は大東忍です。

▲リカルド・ボフィル設計の真紅のビル。資生堂パーラーが入るビルの地下に資生堂ギャラリーはあります。
不寝の夜(ねずのよる)/Sleepless Nights
大東忍の展覧会タイトルは「不寝の夜/Sleepless Nights」です。

大東忍は見知らぬ過疎地や住宅地を歩き、祖先を供養する行事でもある「盆踊り」を踊ることで、そこに佇む気配を読み取り、風景の中に残る人々の営みや在処を探求してきた作家です。
今回の展覧会タイトル「不寝の夜」は、夜通し蝋燭の火を絶やさず故人のあの世への道を照らす「寝ずの番」からとったものだそうです。
展覧会
地下の会場に向かう階段の踊り場から《例えば灯台になること》という映像作品が見えてきます。

▲夜明け前の町並みと発光して灯台となる自身を映した約45分間の映像作品です。
▲ずっと見ていると街の灯が点いたり消えたり、また空の明るさが変化し、そこに大東忍の詩がオーバーラップしていきます。

▲映像作品は1点だけで、残りは木炭画とインクジェット印刷した作品です。
上の写真は展覧会のタイトルでもある《不寝の夜》シリーズ。
どことも分からないけど絶対に日本国内のどこか。誰もが一度は見たことがあるような夜の風景が濃密な木炭画で描かれています。
その土地とそこに住む人々の記憶が闇夜に浮かんだ瞬間を捉えたような絵画です。

▲一部の作品中にはこの世の人かも分からない人物が踊っている姿が描かれています。たぶん盆踊りを踊っているのでしょう。
あの世と現世、過去と未来が溶け合う日本の夜を舞台に新しい神話が描かれているのだと思います。

▲この《雪洞を灯す》だけはインクジェットプリンタで出力したもの。
インクジェットプリンタの限界を試されているような作品です。
映像作品を含めて全23点。
日本の原風景の夜を描いているようで、単に風景だけでなく土地と人の記憶があの世から蘇ってくるような、そんな気持ちにもなる作品群です。
撮影について
今回の展覧会は通常の展覧会同様に、写真撮影が可能です。
今回の 入選者からshiseido art egg賞の受賞者が決まり、6月頃に発表される予定です。大東忍、すずえり、平田尚也のどなたが受賞するのでしょう、発表が楽しみです。
17回 shiseido art egg ▼
基本情報
第18回 shiseido art egg 大東 忍展
会期:2025年3月5日(火) ~ 4月6日(日) 休館日:月曜日 時間:11:00~19:00 (平日)、 11:00〜18:00 (日祝 入館料:無料 会場:資生堂ギャラリー 住所:中央区銀座8丁目8−3 資生堂銀座ビル B1F MAP アクセス:地下鉄銀座駅 A2出口から徒歩4分、地下鉄新橋駅 1盤出口から徒歩4分、JR新橋駅 銀座口から徒歩5分 |