篠山紀信の「新・晴れた日」a new fine day
写真家 篠山紀信の回顧展ともいえる個展「新・晴れた日」が東京都写真美術館で開催されています。
商業フォトグラファーとしての色合いが強い篠山紀信ですので写美で展覧会が開催されるとは本人にとっても意外だったようです。
5月18日開幕予定でしたが写美自体が休館していたため、緊急事態宣言が明けた6月1日から再開です。
長く続く緊急事態宣言、営業自粛、休館によって写美とその周辺の状況もすっかり変わってしまっているので、今回は篠山紀信の回顧展と併せ写真美術館の今をレポートします。
新・晴れた日
「新・晴れた日」というタイトルは篠山紀信の写真集「晴れた日」から取られていて、60年にわたって撮られてきた作品約110作品が二部構成で展覧されています。
ただし会場内は撮影禁止ですので、写真は会場外のものになります。
3Fの第1部からスタート。1960代から1970年代にかけての作品です。▼
今回のキービジュアルは開発とそれに伴う離村で無人になった北海道の廃屋。大衆に分かりやすい表現で社会批評を行う篠山紀信らしい作品です。
第1部の見どころは1970年代中頃にニューヨークで行われたオノ・ヨーコのフォトセッション、それと雑誌明星の表紙を飾る日本のアイドルスターたちでしょうか。
特にその後篠山紀信夫人となる南沙織の可愛らしさはちょっと別格です。
続いて2Fは第2部。1980年代から2010年代の作品で構成されています。▼
第2部はアートぽい作品から人物写真そして大震災まで幅広いテーマの写真が続きます。
第2部は珍しいバルテュスの和服姿の写真、思いがけない関係のツーショット人物写真(浅田彰と古橋悌二、いかりや長介と坂本美雨など)など人物を捉えた興味深い作品が並んでいます。
篠山紀信インタビュー
2階ロビーの特設会場では篠山紀信のインタビュー映像が流されています。
(もちろん撮影禁止です)
▼平日の写美ですから篠山紀信ほどのビッグネームでも鑑賞者は少ないです。会場内もほぼ独占状態です。
2階ロビー、ナディッフ前から見た会場の様子です▼
二部構成で各部だいたい30分ちょっとで鑑賞できます。
グラビアなどの商業写真も含めた ”写真家 篠山紀信” の全貌を振り返るに良い展覧会です。
東京都写真美術館
2016年9月にリニューアルされた東京都写真美術館。
長らく「写美」という略称で親しまれてきましたがリニューアル後は「TOP Museum」と呼んで欲しいそうです。
多くの人は恵比寿駅からアプローチすると思いますが、そうするとこのようなビジュアルで出迎えてくれます。▼
壁面は写真史を飾るエポックメイキングな写真で飾られています。
ロバート・キャパのD-Day。報道写真の傑作です。▼
植田正治の「妻のいる砂丘風景」。現実世界をシュールに撮る植田正治の代表作です。▼
植田正治の作品は福山雅治のシングル「HELLO」のジャケットにも使われたので、福山さんのファンにはお馴染みかもしれません。
報道写真の傑作、芸術写真の傑作を並べることで写真とそれをとりまく芸術一般の美術館であることを分かりやすく主張しています。
1階のホールでは映像作品、映画の上映を行われています。これはマシュー・バーニーのクレマスター全作品上映の時のものです。
パンデミックによる休館や外出自粛などの影響で1階でミュージアムカフェとして営業していたメゾン・イチ(Maison Ichi)は閉店してしまいました。▼
パンデミックが落ち着けばまた別の運営会社が入るのだと思いますが、それまで写美のカフェは休止です。
Brick End
写美の建物の西側、線路沿いには「Brick End」という飲食店が横丁のように並ぶ一角があるのですが、ここもパンデミックの影響でほとんどが撤退してしまいました。
残るは2店だけです▼
趣のあるー帯ですので、またここにも活気が戻ってきて欲しいものです▼
ざっと写美周辺の最新状況のレポートでした。恵比寿三越はスーパーライフへの建て替えが進んでいますし、その影響で恵比寿ガーデンシネマも休館中です。
篠山紀信の回顧展が写真美術館で開催されていること自体が事件でもあるので、彼の業績を振り返る意味でもきちんと鑑賞しておきたい展覧会です。
篠山紀信「新・晴れた日」
2021.5.18(火)— 8.15(日)月休
10:00~18:00 写真撮影禁止