2022年7月末に私が実際に訪問した銀座で開催されている展覧会を紹介します。
亀倉雄策賞受賞記念企画大貫卓也展「ヒロシマ」をクリエイションギャラリーG8で。
ポーラミュージアムアネックスでは鎧兜をモチーフに人間の悲哀や歓喜をユーモラスに表現する作品を制作する野口哲哉展「This is not a samurai」を。
gggでは、視点や発想がユニークで、日常に溢れる凡庸なモノをなんだかとっても面白く素敵に変換するグラフィックデザイナーの髙田唯の「Chaotic Order(混沌とした秩序)」を。
更にメゾンエルメスの田口和奈展、蔦屋書店の水戸部七絵展を紹介します。
PR大貫卓也展「ヒロシマ」会期終了
大貫卓也は、亀倉雄策賞をとっていなかったんだ、というのが最初の印象でした。
世の中で大貫卓也が手がけた広告を見たことがない人はいないでしょう。そのくらい数多くの有名な広告を手がけています。
その名を轟かせたのは、としまえんが最初でしょうか。「史上最低の遊園地」というコピーは鮮烈で、非常に印象に残っています。調べてみたらあれは1990年なんですね。
その後も数々の名広告を世に送り出し続けています。特にインパクトのあるものが多い印象です。
そんな広告業界の大御所大貫卓也が今回JAGDAの亀倉雄策賞を受賞した記念企画展がリクルートのギャラリークリエイションギャラリーG8で開催されています。
受賞作品は、平和を希求するキャンペーン「HIROSHIMA APPEALS」の2021年版ポスターとその関連制作物です。
何か商品を売るためのものではないので、かえって難しそう。しかし、大貫卓也の答えはストレート且つ一目でわかるという広告的機能を持ち合わせつつも表現が美しい。
文字は最低限で、ビジュアルだけで言いたいことを伝える表現力は圧巻▲
背景は地球上に存在する核弾頭の数です。その数なんと12,720発。数字で見るよりこうやってボリュームを目の当たりにる方が説得力があります。▲
このスノードームと真っ黒のポスターではARがみられます。専用アプリのDLが必要です。▲
会場奥では、HIROSHIMAの映像がループで流れています。どれも長くないので全部鑑賞可能です。
今回の亀倉雄策賞の発表の2週間後にロシアによるウクライナ侵攻が始まったというのは偶然ではないかもしれません。
JAGDAの日本のグラフィック展2022についてはこちらをどうぞ
基本情報
2022.7.12 火 – 8.20 土 11:00-19:00 日祝と8/10-14休 入場無料 中央区銀座8丁目4−17 リクルートGINZA8ビル 1F MAP |
野口哲哉展 会期終了
野口哲哉との出会いは、2018年にもpola museum annex で個展「~中世より愛をこめて~ From Medieval with Love」です。その後、2019年に富山県の秋水美術館で開催した個展もタイミングよく鑑賞することができました。今回、再び銀座で野口作品を見ることできました。
この展覧会は、愛知、群馬、山口、香川の公立美術館を巡回してきました。最後の会場となるポーラミュージアムアネックスでは4年ぶりの展覧会です。
ギャラリー内の一角にはちょっとした小部屋があります。小部屋から会場を見た様子です。▲
大小様々な侍たちが並びます。
この侍が着ている甲冑はなんとハイブランドのロゴマークがついていますね。これはシャネルとのコラボ作品です。▲
富山の秋水美術館でも観たなんともとぼけた表情、立ち姿の侍です。▲見てる方も思わず斜めになってしまいます。
こちらの眼型姿の人は、兜こそかぶっているものの、服装はとっても現代的。あれ、なんだか作家に似ている?
見れば見るほど細かいところまですごくよくできてるなぁ▲
今回の展覧会で印象に残ったのは、アルネ・ヤコブセンのエッグチェアに腰掛ける侍です。全部で4つありました。▲ヤコブセンって甲冑姿でも似合うんですね。
立体だけではなく平面作品もいくつか展示されています。▲ 侍が暗がりで見ているものは‥。
野口哲哉の作品は、世相を反映しつつ、人間の人間らしい感情を巧みに表現していて、いつも思わず笑ってしまいます。
それもこれも、作品の完成度の高さが半端ないからなのです。
野口作品の類まれなる発想力、表現力の高さには驚かされますが、そこには裏打ちされた確かな技術力があるからだと作品を間近に見て感じました。
ホント、文句なしに楽しい。あまりにガン見しすぎて作品ケースに鼻の脂をつけてしまわないように。
基本情報
野口哲哉展「This is not a samurai」
2022年7月29日(金)~9月11日(日) 11:00-19:00 会期中無休 入場無料 ポーラミュージアムアネックス 中央区銀座1丁目7−7 ポーラ銀座ビル3階 MAP |
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髙田唯展 会期終了
グラフィックデザイナーの髙田唯の個展「混沌とした秩序」はその相反する言葉が並ぶタイトル通り、一見混沌としているものの、その中には核となる髙田唯なりの秩序がちゃんとあって、見ていてとにかく楽しい展覧会です。これは絶対見た方がいい。
1階は、今、髙田唯が気になっているという凧の展示。▲マイブームが凧なんですね。
地下の展示風景▲ 何やら楽しそうですよね。この写真だけでも溢れ出るユーモアを感じませんか?
「口で作る彫刻」ガムを噛んで吐き出して撮影するというゼミの課題です。▲
なんか希少な鉱石みたいにも見えるから不思議です。
「スポーツ新聞のトリミング」そのまんまスポーツ新聞を四角で切り取ってみた紙片です。思わず自分でもやってみたくなりました。▲
撮影は○でもXでもなく、なんと△です。
そんなこと書いてあったら、なんだろうって読みますよね。そこにはデザイナーからのメッセージが。これも髙田唯らしさが溢れています。
地下の会場には展示リストがあるので、その解説を読みながら鑑賞します。
更に、2階のライブラリーの映像も合わせて鑑賞すると展示の理解がより深まりますので、おすすめです。
基本情報
2022年07月11日(月)~2022年08月25日(木) 11:00-19:00 日祝休 入場無料 ggg/ギンザ・グラフィック・ギャラリー 中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F/B1F MAP |
田口和奈展 会期終了
2013年よりオーストリア、ウィーンを拠点に制作を続けるアーティストです。
制作した絵画や彫刻を多重露光で撮影したり、プリントした印画紙の上に油彩のドローイングを描き、再び撮影をするといった重層的な平面作品です。
展覧会は上階から始まります。▲
レンゾ・ピアノ設計のガラスブロックの建築の特徴を最大限に活かし展示空間全体に光が満ち溢れ、明るいながらも静謐な空気の流れる展覧会です。▲
展覧会場としてはクセ強すぎなこの空間の、そのクセを味方につけた展示▲
こんなにこの建築って美しかったんだと改めて再確認しました。
写真作品が宙に浮いているかのような透明な展示台。この空間にこの展示台って。▲
天国の倉俣史朗もびっくりですよ。
角度を変えて▲ この展示が物凄いよくて、周りを何度もぐるぐる回ってしまいました。
かつてこの建築の魅力をここまで引き出した展覧会があったでしょうか。
作品一つ一つもいいのだけれど、空間全体が本当に美しかった。今度は曇天の日にも行ってみたいな。
基本情報
2022.6.17(金)~9.30(金)8/17休 11:00-19:00 入場無料 中央区銀座5丁目4−1 8階 MAP |
水戸部七絵展 会期終了
先月voidで開催していたジョンとヨーコの「War is not over」展も印象的だった厚塗りの女王水戸部七絵の個展です。
昨年より東京藝術大学の大学院在籍中で今後ウィーン美術アカデミー(Academy of Fine Arts Vienna)への交換留学の予定があるそうです。
2011年に名古屋造形大学を卒業されているので、一度社会へ出て昨年芸大の院へ進学しています。学ぶのに年齢は関係ないとは言いますが、30代で再度学生をやるっていうのは、それはそれで大変だと思います。それだけで尊敬!
とっても可愛い方ですが、作品同様パワフルな方なのですね。
展覧会タイトルの「Let’s Have a Dream !」はオノ・ヨーコの曲からいただいています。
この曲は日本だけでシングルになっていて、そのタイトルが「夢をもとう」。そして英語タイトルが「Let’s Have a Dream !」です。
聞いたことある人ならわかると思いますが、なんというか、盆踊りみたいな、浴衣で踊り出したくなるようなオノヨーコ音頭です。
バックを務めるメンバーもアメリカの錚々たる実力者たちなのですが、そんな人たちを音頭で演歌な世界へ引きずり込んでしまうヨーコの有無を言わせぬパワー。なんとなく水戸部七絵の作品と相通じるものがあるような気がします。
YouTubeに音源が上がっているのでぜひ聴いてみてください。
しかもタイミングが良いことに、ヨーコの1974年の「ワンステップフェスティバル」でのライブ音源が半世紀近く経ったこの2022年8月にようやくリリースされます。
福島県の郡山で開催された日本で最大規模のロックフェスですが、シングルで発表された「Let’s Have A Dream! (夢をもとう)」のパフォーマンスはまさにこの「ワンステップフェスティバル」でのものなのです。
Let's Have a Dream -1974 One Step Festival Special Edition-
8% オフ展覧会場にはジョンやオノ・ヨーコだけでなく、ボウイやフレディーもいますね。▲
こちらはビートルズの赤盤、青盤と言われるベストアルバムのジャケットです。▲
そういえば水戸部七絵は昨年俳優・歌手の菅田将暉のCD「ラストシーン」のジャケットのArt Cover を担当したりもしてるんですよね。
ザ・クラッシュの「ロンドン・コーリング」では実際に楽器を壊しています。ベースじゃなくてギターですけど。また、作者本人と思われる自画像(?)も見えますね。
展覧会会期が短いのでお早めに。ただ、会期は変更になる可能性もあるようです。また、最終日は18時までなのでご注意を。
基本情報
水戸部七絵「Let’s Have a Dream ! – 作品集出版記念展 – 」 2022年07月30日(土) – 08月12日(金) 会期終了 11:00-20:00 入場無料 銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM 中央区銀座6丁目10−1 SIX6階 MAP |
暑さ厳しい毎日ですが、今回紹介した展覧会は全て地下鉄銀座駅からアクセス可能です。少し歩くことになりますが、会場内は涼しいので休み休み巡ってみてください。
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