2018年に香港の中環(Central)のソーホー地区にオープンした大館(Tai Kwun)は、アジア最大の美術館香港のウエストカオルーンに開館したM+を手がけたヘルツォーク&ド・ムーロン(Herzog & de Meuron/HdM)の設計です。
大館とは口語で警察を意味します。
大館(Tai Kwun)は、旧中央警察署・中央裁判所、ビクトリア監獄を含む香港の法律、司法、および刑事制度の歴史を現代に伝える歴史遺産が集まる場所です。

築100年以上の16の歴史的建造物とともに、ヘルツォーク&ド・ムーロンがデザインした2つの新しい建物JC ContemporaryとJC Cubeを含め、歴史とアートが癒合した新しい複合施設が大館です。
このブログでは主に歴史的建造物の中に建つヘルツォーク&ド・ムーロンが手がけた新築の建築JC ContemporaryとJC Cubeを中心にレポートします。

JC Contemporary
大館(Tai Kwun)16の歴史的建造物とHdMが手がけた2つの新築の建築からなる複合施設です。
やっぱりなんと言っても目玉はHdMの新築の建築です。

JC Contemporaryの特徴はそのファサードです。
よく見るとファサードを構成するユニットの開口部の位置やサイズが微妙に異なっているのがわかります。

▲遠目で見るより近くで見た方が不思議度は高いです。
このファサードのグネグネの正体は100%再生アルミの鋳造によるユニットです。
開口部が様々なのは、その空間の通風、日射、視界などの環境要件に合わせているから。

▲ユニットのパーツのサイズは、既存の擁壁に使われた御影石のブロックとスケールを合わせてあるそうです。
このスケールを合わせているという擁壁は、上の写真のJC Contemporary下の擁壁だと思われます。確かにサイズ合ってますね。
元刑務所だけに擁壁の高さは尋常ではありません。

▲アルミユニットを内部から見るとこんな様子です。

▲特徴のある斬新なファサードですが、周囲の歴史的建造物との調和もとれており、新旧の建築が違和感なく馴染むデザインです。
そして、どことなく東洋的なデザインです。
JC Contemporaryの螺旋階段
HdMは、特に特定のデザインを繰り返す建築家ではありませんが、M+がそうで合ったようにここにも惚れ惚れするような螺旋階段があります。

▲コンクリート打ち放しの冷たくて硬いイメージに木の踏面が温かみを与えています。エレベーターもあるのですが、ここは是非この美しい階段を登って上階へ行くべきでしょう。

▲上からみたHdMの美しい螺旋階段。完全にアート作品の一部のようです。
これを見るためにここへきたと言っても過言ではありません。

▲段々空間全体に階段が広がり、また上階へ行くに従って螺旋階段に吸い込まれていきます。階段ありきのスペースです。

▲この段々広がり、また螺旋階段に吸い込まれていく美しい階段は、1階(日本で言う2階)から3階へ上がる階段です。
金のノンスリップのアクセントも効いています。
JC Contemporaryのギャラリー
JC Contemporaryには、ギャラリースペースの他にカフェやアーティストブックライブラリーが入っています。
ギャラリーは入場無料で鑑賞することができました。常時無料なのかは不明です。

訪問時は、キプロス出身のアーティストで振付家でもあるマリア・ハサビのパフォーマンスが行われていて、床壁天井全てゴールドと全て真っ白な二つの空間で、数人のダンサーによるパフォーマンスを鑑賞することができました。

狙って行ったわけではありませんでしたがとてもラッキーでした。
JC Contemporaryのカフェ
JC Contemporaryには、カフェも入っています。ここは大人気で賑わっていました。

▲席は、店内だけでなくテラス席も。

▲11月末にもかかわらず26度という夏のような天候でしたので、香港の街並みを見渡せるテラス席で。

▲カフェのある2階(日本的には3階)にはアーティストブックライブラリーというミュージアムショップのようなスペースも。
こちらもカフェ同様に香港の若い人で賑わっていました。
JC Cube
JC Contemporaryとプリズンヤードと名付けられたコートヤードを挟んで向かい合うように建っているJC Cubeも同様のデザインのファサードを持つ新築の建物です。

▲JC Cubeはステージのある劇場施設です。
演目はダンスやパフォーマンスなど定期的に変わります。
今回は残念ながらJC Cubeの内部には入っていません。
タイミングがあって何かステージを見る機会があれば内部も見られたのですが。

JC Cubeの大階段
JC Cubeには、ランドリーステップと名付けられた大階段があります。
この名前の由来は、かつては囚人の洗濯場だったから。

▲かつての刑務所は、今では人々が集う和やかな場所になっています。

▲ランドリーステップでも正面にスクリーンを設置して映画の上映などが行われることもあるらしいです。
屋外で見る映画はそれだけで気分が上がりますね。
大館の階段
大館には、HdMの螺旋階段だけではありません。
歴史的建造物をつなぐ様々な階段が存在します。

▲築100年以上の建築をつなぐ階段の数々。

▲かつては、この建物と建物の間から見える青空を仰ぎつつもこの中でその生涯を閉じた人もいたでしょう。
この場所の歴史を知るとこんな中心地に刑務所があった事にも驚きますが、今は和やかに人々が集う場所に変わりましたが、以前この場所に流れていた空気はこんなに軽やかではなかったはずです。
そう思うとちょっと複雑です。
大館では、刑務所だったからこその高い高い擁壁の前でポーズを撮って写真撮影をしている人をたくさん見かけました。
脱獄を防ぐための高い擁壁は、今や味のある素敵な写真の背景に変化したのです。

▲香港にもスタジオを持つ日本人アーティストの加藤泉のアート発見!
海外で日本人アーティストの作品を見つけるとなんだかとっても嬉しくなりますね。

大館には、紹介したHdMのア2つの アート施設以外にレストランやショップなどの商業施設と刑務所を見学できるスペースなどたくさんの見どころがあります。
たっぷり時間をとって訪問することをお勧めします。
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基本情報
大館(Tai kwun)
10 Hollywood Road, Central, Hong Kong MAP |