国立新美術館で始まった第25回目を迎える「DOMANI ・明日展2022-23」を早速鑑賞してきました。
出品アーティストは大﨑のぶゆき、谷中佑輔、黒田大スケ、池崎拓也、石塚元太良、近藤聡乃、北川太郎、小金沢健人、丸山直文、伊藤誠の10名です。
キャリアの豊かな作家3名と、比較的近年に在研を終えた清新な作家6名、さらに「DOMANI・明日展」史上、初の国立新美術館2度目の参加となる近藤聡乃で構成されています。

DOMANI・明日展
1998年から始まった「DOMANI・明日展」は今回の2022年度で第25回目を迎えます。この展覧会は、文化庁主催で1967年から実施している若手芸術家が海外の関係機関等で行う研修を支援する「新進芸術家海外研修制度(在研)」を終えた作家の成果発表の機会として行われています。
今回は、サブタイトルに「百年まえから、百年あとへ 」とあるように1923年に首都圏を見舞った「関東大震災」から百年目の年に東京で開かれる企画として、「ゆれる/ゆらぐ地面、制度、価値観」という視点から、コロナ禍後の次代の人材育成、美術界のあり方をも考えた内容となっています。
ドマーニ明日展は、成果発表の場のなので、その技法は絵画や写真、彫刻やインスタレーション、映像など様々です。
ですから、いろんな作品が鑑賞できる良質なグループ展です。
毎年楽しみにしていましたが、昨年の24回目はコロナウィルス感染拡大の影響により国立新美術館での展覧会が開催できなかったので、2年ぶりに戻ってきたDOMANI・明日展です。

展覧会構成
展覧会は、入り口にイントロダクションがあり、その後国立新美術館でのDOMANI展2度目となる近藤聡乃の展示から始まります。作家一人一人展示室が分かれていて、その冒頭に略歴と本人による言葉が表記されたパネルがありますので、それを読んでから鑑賞すると、どこで研修をして何を制作しているのかがわかるようになっています。
それでは、展示順に各作家の作品を紹介します。

近藤聡乃
マンガ・現代美術 (2008年度(1年研修)・アメリカ/ニューヨーク)

マンガ「ニューヨークで考え中」の原画が展示されています。
冒頭の近藤聡乃の展示室は多くの人が足をとめて、読み耽っていました。もちろん私も全部読みました。
漫画の内容は異国で生活することで客観的に見た日本について、言語について、各国の文化についてがスーッと入ってくる感じです。
思わず「なるほどー」って声に出そうになるようなものもあります。

猫刺繍は文句なしに可愛い。猫好きにはたまりませんね。▲
石塚元太良
写真(2010年度(1年研修)・アメリカ/ニューヨーク、2021年度(特別研修)・フィンランド/ケミヤルヴィ)
冒頭の近藤聡乃の漫画でほっこりして、隣の展示室に足を踏み入れると温度が10度くらい下がったような錯覚に陥りました。

というのも石塚元太良の氷河の写真作品が整然と並んでいるからです。
約6mの大作「Shoup Glacier #001」はスケールだけでなくその絵画のような写真に釘付けです。▲

自然が見せる美しい造形と澄み切った青色を切り取った作品にシャキッと引き締まりました。▲
池崎拓也
現代美術(2017年度(1年研修)・アメリカ/ニューヨーク)

何やら意味不明な文字の羅列がプリントされた布がぶら下がっています。この作品の意味は解説パネルに書いてあるので読んでください。
意味がわかると思わず笑みがこぼれる作品です。▲

大崎のぶゆき
現代美術(2020年度(1年研修)・ドイツ/シュトゥットガルト)
3つの映像が同時に流れています。そして、額装作品と机の上のたくさんの写真。

ループで流れる3つの映像作品は各30分ほどです。▲

丸山直文
絵画(1996年度(1年研修)・ドイツ/ベルリン)
キャリア豊かな3名のうちの1人です。
90年代の抽象画を描かれていたころから焦点が合わないような水の滲みのような丸山作品が好きです。

紙に描いた無数のドローイングは圧倒されます。▲

具象的な作品になった今でも具象と抽象の中庸のような、その独特の滲みのように、具象とか抽象とかその区切りを超越した独創的な世界観です。

この作品も引き込まれます▲ 丸山直文の絵画の世界観が如実に出ている作品です。
ここまで見てこの展覧会は緩急というか、緩やかな空気と鋭敏さがいい感じに混ざったグループ展だと感じました。
伊藤誠
彫刻(1996年度(1年研修)・アイルランド)
キャリア豊かなもう1人。
私自身初めてギャラリーで美術作品を購入したのが伊藤誠さんのドローイングです。
ですから個人的な思い入れが強い作家でもあります。

FRP(繊維強化プラスティック) 、ゴム、ステンレス、鉄など、現代の生活空間で身近な素材を使って作り出される作品は、ちょっととぼけていて、なんだか優しい伊藤誠さんそのものです。

彫刻家なので立体が専門なのですが、毎日伊藤誠さんのドローイングを見ているので、自分の所有する平面が巨大になって立体化したような世界に感動しました。▲

どうですか?90年代の作品ですが、一貫していますよね?▲
北川太郎
彫刻(2007年度(3年研修)・ペルー/クスコ)
静岡県三島のヴァンジ彫刻庭園美術館で開催された「すべての ひとに 石が ひつよう目と、手でふれる世界」でも鑑賞した作品です。

ヴァンジ彫刻庭園美術館でもそうでしたが、北川作品は全て触ることが可能です。
消毒シートが用意されているので手を消毒したら是非、不思議なマチエールの作品の数々に触れてみましょう。▲

作品を持ち上げたり位置を変えることはできません。でも、触れるだけでその重さを感じることができるから不思議です。▲
黒田大スケ

映像作品と立体による展示です。

思わず見入ってしまう映像作品▲
谷中佑輔
彫刻、パフォーマンス(2019年度(3年研修)・ドイツ/ベルリン)
彫刻とパフォーマンスで彫刻と身体の関係を追求しています。

金箔や鉄、アクリル強化石膏などでできた繊細な作品▲

この場所でパフォーマンスもみられたらいいのになぁ。
小金沢健人
インスタレーション(2001年度(3年研修)・ドイツ/ベルリン)
キャリア豊かな作家の3人目です。

大きな映像作品と実際に描かれたドロイーングで構成されたインスタレーションです。▲
映像そのものも面白いけれど、展示されたドローイングの額装部分をくり抜いた映像を投影することで、近くでドローイング作品を凝視しているとまるでドローイングが額装ごと動いているように見えて不思議な感覚に陥りました。
作品を描く音やクローズアップされた画面のなかで飛び散る画材など視覚、聴覚などを全開にして体験する空間作品です。

11/27まで開催されているATAMI ART GRANTでホテルニューアカオにも作品を出品しています。
写真撮影について
これまでのドマーニ展同様に写真撮影が可能です。

ミュージアムショップ
ドマーニ展の展覧会図録の表紙は出品しているアーティストの数だけ装丁の種類があります。ですから今回は10種類です。

誰の作品が表紙になっているのを選ぶのか迷いますね。▲

なんと!オリジナルチョコレートもありました。近藤、小金沢、丸山、石塚作品のラッピングです。可愛い。▲
毎回、いろんな表現方法のアーティストの作品が一度に見られるので楽しみにしている展覧会の一つです。
2年ぶりに六本木に帰ってきてくれて嬉しい限りです。
基本情報
DOMANI・明日展 2022–23 百年まえから、百年あとへ
2022年11月19日(土)~2023年1月29日(日)
10:00~18:00 金は20:00
火、年末年始 (12/27(火)~2023年1/11(水))休
入場料:一般 1,000円、大学生 500円
国立新美術館 企画展示室2E
港区六本木7-22-2 MAP
アクセス:東京メトロ千代田線乃木坂駅改札6出口(美術館直結)、東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩約5分、都営地下鉄大江戸線六本木駅7出口から徒歩約4分
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国立新美術館で玉山拓郎の作品が2022年12月26日まで観られます。詳細は▼