先日、中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト主催の見学会に参加し取り壊される前の中銀カプセルタワービルを見学してきました。
(「黒川紀章 中銀カプセルタワービルを見学その1」の続きその2です)
重要 : 2022年1月末でカプセルタワービルの見学は終了しました。いよいよ2022年4月12日から解体工事が始まります。(解体工事期間:4/12-12/29)
まず中銀カプセルタワービルの塗装ですが、外観と内観(すなわち共用部)は35年前に一度塗装されただけだそうです。
内部共用部の元々の色とA棟B棟の色の違いについては動画を参照ください。
PRカプセル
黒川紀章の設計時の発想としては、取り外して新しいカプセルと交換するだけでなく、日本各地にカプセルタワービルを作り、カプセルごと引っ越すとか、キャンピングカーのようにカプセルごと車に乗せて移動することが
カプセルの数は140個で、新築時に全て個々に分譲されたので、最初は140人のオーナーがいたそうですが、現在はもっと少ない人数になっているそうです。
というのも1人で複数所有している人がいるからです。かくいう解説してくださった主催の方はご自身でなんと15カプセルを所有していたそうです。
すなわち管理組合での議決権も15票分所有しているということになるわけです。中銀カプセルタワービル愛がすごいです。
中へ
いよいよカプセルの中へ入ります。
見学したのはA904の部屋です。
内部はオーナーさんによって手を加えられているのでカプセルごとに全然違うのですが、この部屋は比較的竣工当時に近い状態です。▼
窓は首都高速が真下にあるので、騒音防止のため二重サッシです。確かに車の音はあまり気になりませんでした。
窓は内側の窓が内開きで開くだけなので、外気を取り入れることはできません。
竣工時は円形のブラインドが全ての部屋に取り付けられていたのですが、現在そのブラインドがついてる部屋はありません。▼
このオーディオ類は3ランクあり、こちらは一番はハイグレードなタイプです。
もうテレビは使えませんが、ラジオと電話は現役です。▼
折りたたみ式のデスクですが、低いので使いづらいそうです。
確かに机にしてはちょっと低過ぎます。設計当時と比べ日本人の平均身長も伸びていますしね。▼
エアコンとバスルーム
ユニットバスの横にエアコンがあります。
全館空調はすでに機能しておらず、オーナーが各々エアコンを設置しています。
エアコンがないとカプセルには断熱材がないので、夏は酷く暑く、冬は冷蔵庫のように冷えるそうです。
エアコン自体は部屋も狭いし、安いもので十分ですが、室外機を置く場所がないので、カプセルの位置によっては2階の屋根に室外機をおき、そこまで配線しなければならず、工事費がとんでもなく高くなってしまうということです。
いろいろ大変!
船室のような窓のデザインがカプセルの円窓と呼応したデザイン▼
全てのデザインが円窓をアイコンとした丸いデザイン。
お湯の出ないシャワー▼
モデルルーム
黒川紀章設計の埼玉県立近代美術館がある北浦和公園にあるカプセルは販売用に先行で作ったモデルルームだったカプセルです。
森美術館のメタボリズム未来都市展の展覧会前までは、中銀カプセルタワービルの1階に置いてあったそうです。
上が北浦和公園のカプセル内部、下が中銀カプセルタワーのカプセル内部▼
今後の行方が気になる中銀カプセルタワービルビルですが、中に入って見学すると、非常に稀有な存在であることの確認と共に、想像以上に老朽化は激しく、その斬新で未来的なコンセプトとそれを当時の技術で具現化した事による構造上の問題とのジレンマで激しく揺さぶられているという事を実感しました。
黒川紀章は今頃、草葉の陰からこの由々しき事態について何を思うのでしょうか。
今後もその行方を見守っていきたいと思います。
もっと知りたい方は書籍も出ています▼
中銀カプセルタワービル
中央区銀座8丁目16−10 MAP
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