いま山岳写真家、石川直樹の新作個展が都内2ヶ所のギャラリーで同時開催されています。
一つは渋谷宮下パークのアートギャラリー「SAI」。もうひとつは表参道GYREの「GYREギャラリー」です。
訓練されたアルピニストが命がけで登るヒマラヤやカラコルムの高峰に、カメラを携えて登山することで捉えた迫力の山岳写真。そしてネパールなど現地の民俗文化も併せて紹介する、そんな展覧会です。
登山をしない人でもその難しさが容易に想像できる場所でのある意味神々しさも感じる写真は感動的です。
またギャラリーでの写真展では珍しい、いかにも山男・山女風なお客さんが多く訪れている展覧会で、いつものSAIやGYREギャラリーより賑わっています。
石川直樹
早稲田大で歴史と民俗学を学んだという経歴、学生時代からデナリ(マッキンリー)やキリマンジャロに登頂するようなアルピニストとしての経歴。そんな写真家としては異色とも思える背景を持つのが石川直樹です。
アルピニストとしても超一流な山岳写真家はいますが、民俗学的博識を持っていることで単なる山岳写真にとどまらないアーティスティックな写真を撮ることができるのでしょう。山岳写真家というより本当は旅する写真家と呼ぶのが正しいような気がします。
そんな石川直樹は2020年から始まったパンデミックの最中、いつも旅していた海外に行けない日々が続き悶々としていたようです。2022年も春になってやっと海外渡航もできるようになったので、それまでの2年間の反動でヒマラヤへ繰り返し出かけ、6つの8000m峰に挑戦しナンガパルバット以外の登頂に成功します。
今回の展覧会は2022年の4月から9月にかけ挑戦したヒマラヤ遠征の際に撮影された撮りたてほやほやの写真作品の展覧会です
K2 / Broad Peak / Nanga Parbat
宮下パークの「SAI」では個展「K2 / Broad Peak / Nanga Parbat」としてK2(8611m)、Broad Peak(ブロードピーク:8051m)それとNanga Parbat(ナンガパルバット:8126m)というパキスタンの山々の写真をフィーチャーした展覧会が開催されています。
いつもとちょっと違った雰囲気の展覧会になっています。
▲山岳写真と現地で収集した鉱物。
K2とブロード・ピークは隣同士でそびえているので、どちらかに登れば相手の山容を写真に撮りやすいみたいです。
▲左がK2です。
エベレストに次いで世界で2番目に高い山。でも登頂の難しさではエベレスト以上なのだそうです。
▲SAIでの展示されている作品は山の写真より現地の人々や自然を捉えたものが多いです。
でも迫力のある山岳写真も並んでいます。
▲SAIの入り口左手と一番奥の展示室は大型の作品たち。
▲それ以外は2Lサイズくらいの小さな写真が会場いっぱいを使って展示されています。
作品数でいえばこの後紹介するGYREでの展覧会より多いのではないでしょうか。
会期が2023年2月5日までと残り短いので、山岳写真好き、石川直樹のファンの方は忘れずに鑑賞しに行ってください。
Dhaulagiri / Kangchenjunga / Manaslu
表参道GYRE(ジャイル)の「GYREギャラリー」で個展「Dhaulagiri / Kangchenjunga / Manaslu」として、Dhaulagiri(ダウラギリ:8167m)、Kangchenjunga(カンチェンジュンガ:8586m)それとManaslu(マナスル:8163m)というネパール、ヒマラヤの山々の写真をフィーチャーした展覧会が開催されています。
▲この展覧会は2022年12月17日から開幕しています。
会期は2023年2月26日(日)まで。まだ余裕があるので表参道に行く機会があったらGYREギャラリーで雄大なヒマラヤと現地の様子を石川直樹の写真で堪能。
▲GYREの中央部、エスカレーターに囲まれた吹き抜けにはいつもGYREギャラリーの展覧会と連動したインスタレーションが行われていますが、石川直樹の会期中はこの垂れ幕が下がっています。
よく見ると標高が書かれていて、上に上がるに連れ標高も高くなるという、山岳写真展にふさわしいものになっています。
▲ネパールを中心としたヒマラヤ地方と主な山の地図。こうして見せられると分かりやすいですね。
ちなみにSAIで開催されている「K2 / Broad Peak / Nanga Parbat」の舞台はチベット高原の西端、カラコルム山脈なのでこの地図には含まれません。
この展覧会ではダウラギリ、カンチェンジュンガそれとマナスルの写真が展示室を分けて展示されているので、山(展示室)ごとに紹介します。
ダウラギリ
GYREギャラリーに入って最初の展示室に展示されているのは、石川直樹が2022年の4月に登頂したのがダウラギリ(Dhaulagiri)。標高8167mで世界7位の高峰です。
19世紀初頭には世界一高い山と考えられていた山です。
▲写真の他にダウラギリへ至るルートマップなども展示されています。
▲中央に地図やネガといった資料系の展示、その周囲をダウラギリや麓の村々の写真という展示構成です。
▲麓で寛ぐ姿と険しい山容の対比。
山の素人としてはいったいどうやって登るのか、登山中はどんな苦労があるのか、どんな美しい景色が見えるのか。いろいろ想像してしまいます。
カンチェンジュンガ
次の展示室は2022年5月に登頂したカンチェンジュンガ(Kangchenjunga)。標高は8586mでこれはエベレスト、K2に次ぐ世界で3番目に高い山ということになります。
19世紀半ばにエベレストの標高が測量されるまで世界一高い山と考えられていた山です。
▲この展示室も中央に地図、周囲に写真と映像という構成です。
▲迫力のある大判の作品が並んでいます。
▲カンチェンジュンガの展示室だけは映像もあります。
石川直樹にとって思い入れのある山なのかもしれないですね。
▲展示室の奥にも写真作品。
それにしてもK2、カンチェンジュンガという世界で2番目と3番目に高い山に、2ヶ月の間に登るのって登山家にとって普通のことなんでしょうか。2年間、旅に出られなくて溜まっていたものが相当あったのでしょう。
▲これはカンチェンジュンガのポスター。ポスターはモノクロですが作品はカラーでこの展覧会にも展示されています。
ポスターは2,500円。ギャラリーで購入することができます。
マナスル
最後の展示室は2022年9月、遠征の最後に登頂したマナスル(Manaslu)。標高は8163mでこれは世界8位。
1956年に日本隊が初登頂に成功したことで日本人にも馴染みの深い8000m峰です。
▲マナスルは山の写真も迫力がありますが麓の村と人々の写真もほのぼのさせられます。
旅する山岳写真家、石川直樹の面目躍如という感じです。
▲左はベースキャンプから見上げるマナスル、右は麓の村のお祭りでしょうか。
▲SAIとGYREギャラリーで同時開催の石川直樹写真展。2022年に遠征したのは6座ですが、SAIとGYREを合わせればその全ての山の写真を鑑賞することができるのです。渋谷と表参道・原宿ですから半日あれば両方のギャラリーで観ることができます。
山好き旅好きな方はもちろん、人智を超えた場所に興味のある冒険好きの人も、石川直樹の写真展に出かけてみてはどうでしょう。
また山ごとの写真集も出ていて今回の個展に登場する山ではマナスルとK2をAmazonから購入することができます。カンチェンジュンガ版はGYREで購入することができます。
基本情報
石川直樹「K2 / Broad Peak / Nanga Parbat」展
2023年1月13日[金] ─ 2月5日[日] 11:00 - 20:00 入場無料 SAI 渋谷区神宮前6-20-10 MIYASHITA PARK SOUTH 3F MAP アクセス:渋谷駅 |
石川直樹「Dhaulagiri / Kangchenjunga / Manaslu」展
2022年12月17日[土] ─ 2月26日[日] ※2月10日は休館 11:00 - 20:00 入場無料 GYREギャラリー 渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F MAP アクセス:表参道駅 |