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「百花ひらく 花々をめぐり美」展。一時休館する皇居三の丸尚蔵館での最後の展覧会で、花を題材にした作品と花を愛でよう


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東京の中心「皇居」。その中でも東御苑(ひがしぎょえん)と呼ばれるエリアは、かつて江戸城の本丸や二の丸のあった場所で、巨大だった江戸城の石垣や天守台などが今も遺り、世界中から観光客が集まる観光スポットでもある場所です。

その東御苑の一角には「皇居三の丸尚蔵館(こうきょ・さんのまる・しょうぞうかん)」という博物館があり、主に皇室・皇族から寄贈された収蔵品を展示する展覧会が頻繁に開催されています。


三の丸尚蔵館

「皇居三の丸尚蔵館」は昭和天皇が崩御された後、后である香淳皇后と長子の平成天皇から寄贈された美術品を保存、研究、公開するための施設として1993年(平成5年)に開館しました。

古くからある施設のようで歴史としては30年ほどの、皇居内では新しい施設です。

ここに所蔵されている作品は皇室に代々伝わって来た品々や、皇室・皇族がプライベートに収集してきて寄贈された美術品や工芸品、民間から皇室に献上された美術品・工芸品(要するに帰属がよく分からない品)など。

国宝も多くありますし、美術的にも歴史的にも貴重な文書や作品が揃っていて、日本の歴史の一部と言っても過言ではありません

皇居三の丸尚蔵館, 2025, Photo by 建築とアートを巡る

▲開館当初の建物は主に収蔵を目的としたもので小さな展示室があるだけでした。その後2023年に広い展示スペースを持つ「新館」に建て替えられられています。

写真は現在も建設工事が進んでいる「第II期棟」です。

第II期棟が完成し全面リニューアルオープンするのは2026年秋が予定されていて、リニューアル後は展示スペースもさらに広くなりますし、なんとカフェも併設されるそうです。

2025年夏から今の「新館」と「第II期棟」を接続する工事が始まるため、工事の振動や粉塵などが作品を傷めないよう、接続工事とその後の養生期間は新館が一時休館となります。

要するに今回の展覧会を最後に1年ちょっとの間、三の丸尚蔵館での展覧会はお休みとなります。(地方での巡回展は行われます)

その一時休館前最後の展覧会《百花ひらく 花々をめぐる美》展の報道内覧会の様子をレポートします。

なお三の丸尚蔵館の展示室は原則として写真撮影可能です。本記事では特別に許可を得て撮影、掲載しています。


《百花ひらく 花々をめぐる美》展

本展の会期は2025年3月11日から5月6日まで。

ただし開幕から4月6日までの前期と、4月8日から5月6日までの後期では出品作品がガラッと大きく変わります。特に大きな目玉でもある伊藤若冲の国宝を全部鑑賞するには前期と後期の2回訪問する必要があります。

展覧会の開催趣旨

四季の明瞭な日本では季節を彩る花々は常に芸術の主要モチーフでした。

本展は花を題材にした11世紀から現代にいたる絵画・工芸・書跡45件を紹介するものです。

《百花ひらく》, 2025, 皇居三の丸尚蔵館, 2025, Photo by 建築とアートを巡る

▲花を題材にした作品を主とする展覧会を冬を越した花々が一斉に咲きだす春に開幕するというタイムリーな催し。

しかも場所は皇居東御苑の中。

皇居の花と展覧会の花とを一緒に愉しめます

展示室1の作品

今の三の丸尚蔵館には展示室が2部屋あり、本展は展示室1から始まります。

七宝四季花鳥図花瓶, 並河靖之, 1899, 《百花ひらく》, 2025, 皇居三の丸尚蔵館, 2025, Photo by 建築とアートを巡る

▲最初は七宝焼の花瓶「七宝四季花鳥図花瓶」。

七宝焼には ”京都と東京 二人のナミカワ” と称される巨匠が存在し、この作品は ”京都のナミカワ” こと並河靖之の手によるもの。
(東京のナミカワは濤川惣助)

咲き誇る桜が繊細に描かれています。

七宝四季花鳥図花瓶, 並河靖之, 1899, 《百花ひらく》, 2025, 皇居三の丸尚蔵館, 2025, Photo by 建築とアートを巡る

▲同じ作品を裏に回ってみると青紅葉。

同じ作品を二度楽しめる並河靖之の代表作です。

堤中納言集(名家歌集切), 伝 紀貫之, 平安時代, 《百花ひらく》, 2025, 皇居三の丸尚蔵館, 2025, Photo by 建築とアートを巡る

▲紀貫之の書と伝わる平安時代の《堤中納言集(名家家集切)》。花を描写した記述が見られます。

将来の重要文化時、国宝候補ですが、この作品は前期だけの展示です。

展示室1には他にも江戸時代から平成に至るまでの芸術、工芸作品が展示されています。


展示室2の作品

広さでいえば展示室2の方が若干広くて、大振りな作品はこちらに多く展示されています

展示風景, 《百花ひらく》, 2025, 皇居三の丸尚蔵館, 2025, Photo by 建築とアートを巡る

▲明治時代に製作された《春草蒔絵棚》。そうです、蒔絵です。

超絶技巧の塊でいくら見てていても飽きません

紅白梅図屏風, 今中素友, 1923, 《百花ひらく》, 2025, 皇居三の丸尚蔵館, 2025, Photo by 建築とアートを巡る

▲昭和天皇の結婚祝いに贈られた大正時代の《紅白梅酢屏風》。

紅白の梅が屏風いっぱいに描かれています。

伊藤若冲の《動植綵絵》

展示室2の一番奥で展示されているのが伊藤若冲による国宝《動植綵絵》。

動植綵絵, 伊藤若冲, 江戸時代, 《百花ひらく》, 2025, 皇居三の丸尚蔵館, 2025, Photo by 建築とアートを巡る

三の丸尚蔵館が所蔵する全40幅のうち花と小鳥を組み合わせた全4幅が出品されますが前後期2幅づつの展示になります。つまり前期と後期の2回訪問しないと4幅コンプリートできないわけです。

報道内覧会でもやはり大人気で人だかりが耐えない状態。さすが人気の伊藤若冲です。

動植綵絵, 伊藤若冲, 江戸時代, 《百花ひらく》, 2025, 皇居三の丸尚蔵館, 2025, Photo by 建築とアートを巡る

4月6日までの前期の展示は《牡丹小禽図》(左)と《桃花小禽図》(右)です。

後期は《梅花小禽図》と《薔薇小禽図》に展示替えです

美術館でお花見を

作品は花、花、花。

そのまま東御苑へ出て本物の花見をしようかとなりますが、その前に館内でもう一つのお花見をしておきましょう。

▲展示室の床に落ちた桜の花びら。

花をモチーフにした作品を鑑賞し、足元に視線を落とすとそこには桜。なんとも粋な演出ですね。

展示室の床に落ちるこの花びらも探してみましょう。小さくスポットライトも当たっていますから見逃すことはたぶんないと思います

鑑賞のポイント

実は皇居三の丸尚蔵館での展覧会は毎回密かな人気を集めています。

メディアで派手に取り上げられることも少ないので口コミでじわじわと話題になり、会期後半になると大混雑になるのだそうです。展示室自体がそれほど広くなく、同時入場者数が多くなるとゆっくり鑑賞できない状態になることも少なくないそうです。

せっかく訪問してもゆっくり鑑賞できないのはもったいないので、会期のなるべく早い時期に訪問したいです。また1日の間でも後半の方が空いてくるそうです。金・土は20時まで開いていますからそうした時間帯を狙うのも良いかもしれません。

前期は3月中に、後期は4月のGW前に訪問しておきたいですね。チケットは日時指定予約優先でチケット申込みサイトで購入できます。

さらにディープに鑑賞したいなら「展示室 de 作品解説」や「特別鑑賞会」といったイベントに参加するのも良いと思います。

「展示室 de 作品解説」は展覧会担当の研究員が展示作品から数点をピックアップし、展示室内で20分程度の解説をするというものです。開催日は3月14日(金)、4月11日(金)と5月2日(金)。いずれも午後6時35分からで、参加申し込みは不要、イベントの参加費も無料(入館チケットは必要)です。

もう一つの「特別鑑賞会」は研究員による解説付き特別鑑賞会(1時間)というもので、開催日は3月28日(金)と4月25日(金)。どちらも午後6時からの開催です。参加費は入館チケット込みで5,000円ですが展覧会図録も付いてきます。この特別鑑賞会チケットは窓口や電話での販売は行われずオンラインでの販売だけになります。詳しくは三の丸尚蔵館のこちらのページからどうぞ。

開催情報

名称:百花ひらく 花々をめぐり美

会期:2025年3月11日(火)〜5月6日(火)
前期:3月11日〜4月26日、後期:4月8日〜5月6日

開館時間:9:30〜17:00 金曜・土曜は20:00まで夜間開館

休館日:月曜日。ただし3月31日と5月5日は開館

入館料:一般 1,000円、大学生 500円、高校生以下・満70歳以上は無料

予約:オンライン(e-tix)による日時指定推奨。予約優先制。


皇居東御苑

三の丸尚蔵館で花をテーマにした展覧会《百花ひらく》を鑑賞したら、次は東御苑(ひがしぎょえん)で本物の花や植物を愛でながらの散歩はどうでしょう。

三の丸尚蔵館のある東御苑は入園料が無料、最寄り駅である地下鉄大手町駅、竹橋駅から徒歩数分、東京駅からでも歩いて10分ちょっとのアクセスの良い場所なので、東京の観光名所としてとにかく人気です。

英語では「Imperial Palace East Garden」。今どき本物のエンペラーが住む本物の Imperial Palaceなんて世界でもここくらいのものですから、インバウンドのお客さんから見ればとても有り難みがあり最近では特に人気のようです。

休園日は毎週月曜日と金曜日、それと年末年始です。特に金曜日が休園というのは見落としがちなので注意しましょう。また開門は常に午前9時ですが閉門は季節によって前後するのでこれも注意です。

さらに入園にあたっては荷物チェックがあります。バッグの中を皇宮警察の警察官が覗くだけの簡単なものですが、それでも大荷物だったりすると大変なのでできるだけ軽装がおすすめです。

桃華楽堂

東御苑には江戸時代の天守跡とか百人番所など江戸城時代の遺構が多くあるのですが、現代になって新たに建てられた建築物もあります。

桃華楽堂 皇居東御苑, 2024, Photo by 建築とアートを巡る

▲天守台(江戸城天守跡)の向かいに建つ八角形をした特徴的な建築が「桃華楽堂(とうかがくどう)」。

昭和天皇の后である香淳皇后の60歳、還暦を祝って建設された音楽ホールです。

収容人員は200名という小規模なものですがその形状やモザイク壁画もあって東御苑の中で特別な存在感を放っています。

設計は日本にいち早くアントニ・ガウディを紹介した建築家の今井兼次。早稲田大学の図書館(現在は会津八一記念博物館)や演劇博物館、戦後だと安曇野の禄山美術館などで知られる建築家で教育者です。そう言われると何となくガウディ風にも思えてきます。

江戸城趾

そして江戸城としての巨大な遺構は忘れてはいけません。

皇居東御苑, 2024, Photo by 建築とアートを巡る

▲東御苑の北の端、北桔橋門近くにあるのが「天守台」。

これは本丸の石垣で、かつてはこの石垣の上に江戸城の天守がそびえていたのですが18世紀中頃の江戸の大火で焼失後、再建されることはありませんでした。

でもその巨大さと精緻さには圧倒されます。

このように不思議な現代建築から歴史の舞台となった建物跡地など、建築好き、歴史好きなら一度は訪れてみたいのが皇居東御苑です。


基本情報

皇居東御苑

開園時間:9:00〜 季節によって16時〜18時で変動

休園日:月曜日、金曜日、12月28日〜翌年1月3日、その他

住所:東京都千代田区千代田1-1 MAP

アクセス:地下鉄大手町駅(C13a出口)から徒歩5分、二重橋駅から徒歩10分、JR東京駅から徒歩15分
東西線竹橋駅から徒歩3分で平川門、徒歩5分で北桔橋門

皇居三の丸尚蔵館

開館時間:9:30〜 17:30

休館日:月曜日、年末年始、天皇誕生日、展示替期間

入館料:一般 1,000円、大学生 500円、高校生以下、70歳以上 無料

予約:予約優先制、オンラインで日時指定推奨

住所:東京都千代田区千代田1-8 MAP

アクセス:地下鉄大手町駅(C13a出口)から徒歩5分、二重橋駅から徒歩10分、JR東京駅から徒歩15分
東西線竹橋駅から徒歩10分で平川門、徒歩15分で北桔橋門(金曜日は大手門のみ)


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