これまで、谷口吉生が設計した美術館建築国内10館、国外(NYC)1館、あわせて11館全ての美術館を訪問しました。
その中でも開催する展覧会の内容も含め好きな美術館のひとつである豊田市美術館に再訪してきました。
この美術館はその開館前から、ジョセフ・コスースの大型の常設作品がコミッションワークで入るという事を知っていたので、かなり期待していた美術館です。完成して、ジョセフ・コスースの作品と空間の共鳴の素晴らしさにとても感動したのを記憶しています。
そんな谷口吉生が手がけた美術館の中でもコミッションワークのアートの存在が極めて美しい豊田市美術館のレポートです。

豊田市美術館とは
豊田市美術館は、かつて挙母城(七州城)があった場所に、谷口吉生の設計で1995年に開館した公立美術館です。
豊田市美術館は、谷口吉生が設計した国内外の美術館11館が互いに連携・協力する建築交流ネットワークの加盟館の一つです。
豊田市美術館以外の10館は、資生堂アートハウス(静岡県)、土門拳記念館(山形県)、長野県立美術館東山魁夷館(長野県)、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(香川県)、東京国立博物館法隆寺宝物館(東京都)、香川県立東山魁夷せとうち美術館(香川県)、ニューヨーク近代美術館(ニューヨーク市)、鈴木大拙館(石川県)、京都国立博物館平成知新館(京都府)、谷口吉郎・吉生記念金沢建築館(石川県)です。
私は何年もかけて全ての美術館を巡りました。

豊田市美術館の建築
豊田市美術館は、谷口吉生が手がけた11の美術館の中で5番目に開館した美術館です。
初期でもなければ晩年でもない、ちょうど建築家として円熟期の建築と言えるでしょう。

ここの美術館の美しさは、外観にも内観にも表れています。
まず、ゆるい登り坂を登って行くと木々の間から少しづつ美術館が見えてきます。美術館が姿を表す前に、左側にはまるで巨大な彫刻のように整然とした美しさを放つスロープがあります。
美術館入り口までの空間、すなわち庭園設計はランドスケープ・デザイナーのピーター・ウォーカーによるものです。
谷口吉生とは丸亀駅駅前広場などでコラボレーションしています。
庭園には、ソル・ルイットの「柱のキューブ」やリチャード・セラの作品「ダブル・コーンズ」が来館者を出迎えてくれます。
館内に入るまでも劇的な空間が続きます。
美術館の建築の手前には緑のスレートによる直線的な柱と屋根を潜り抜け、その先に館の入り口がまるで身を隠すように設てあります。

遠目から見る外観は、土門拳記念館のシルエットとよく似ています。直線的で非常にシャープな建築です。
狂気とも感じられる目地の処理などは他の館同様です。

館に入る前に左手には、水盤へと続く横顔の美しい階段があります。
訪問時は手すりの影がストライプの美しい模様を階段に描いていました。ここにもダニエル・ビュレン!?状態です。
美しい階段はここだけではありません。

内部空間にも主役と言っても過言ではない階段がいくつも存在します。見るところが多すぎて大忙しです。
豊田市美術館のアートと展覧会
エントランス空間には、ジョセフ・コスースとジェニー・ホルツァーのコミッションワークの常設作品があります。

ここの空間に身を置いただけでも大満足してしまうくらい見応えのある圧巻の空間です。
この両作品は、いつでも鑑賞することができます。
豊田市美術館では、現代美術や近代美術にとどまらず、建築や工芸など幅広い分野の展覧会を開催しています。東京や関西からの巡回展も多く開催している印象です。
再訪時は、玉山拓郎の個展「FLOOR」が開催されていました。
開催されていたというより、この個展を見るために訪問したのが正解です。建築との調和が唯一無二の展覧会でした。わざわざ出向くべき展覧会でもあります。
豊田市美術館のミュージアムカフェ・レストラン
豊田市美術館には、ミュージアムカフェ・レストラン「レストラン ル・ミュゼ(味遊是)」があります。

3方向がガラスの開放的な空間で、正面のガラス面からは豊田市の街並みを、左側からはダニエル・ビュレン「色の浮遊Ⅰ 3つの破裂した小屋」を眺めながらのコーヒータイムやランチをいただくことができます。
訪問時は、併設する高橋郎館のリニューアル記念のデザート「銀河饗奏〜 大人のチョコレートムース」があったのでそちらをいただきました。

▲まるで漆芸のように滑らかなチョコレートは濃厚でリッチな味がしました。
ミュージアムカフェは、美術館の入館料を払わなくても一般利用が可能です。
豊田市美術館への行き方
電車・バス
名鉄「豊田市駅」または愛知環状鉄道「新豊田駅」から徒歩約15分(800m)。
車の場合
東名高速 豊田IC から約15分、東海環状自動車道 豊田松平ICから約15分、伊勢湾岸自動車道 豊田東ICから約20分。
乗用車248台収容の無料駐車場あり。
建築交流ネットワーク
これまで建築とアートで紹介してきた参加施設についてもご覧ください。
(東山魁夷せとうち美術館、MoMA、平成知新館も訪問済みですがまだ記事にしていません)
基本情報
豊田市美術館
開館時間:10:00 – 17:30 休館日:月曜日、年末・年始、展示替え期間 入館料:常設展は一般300円、高大生200円、中学生以下無料 住所:愛知県豊田市小坂本町8−5−1 MAP アクセス:無料駐車場あり |