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香川県丸亀駅前の 谷口吉生 建築 「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」が魅力的なワケ


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香川県丸亀駅前にある「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」に3度目の訪問をしてきました

駅の目の前にドーンと存在する美術館は、美しすぎる美術館建築を多数手がけているあの谷口吉生による設計です。

ここは、館の名前が表すように香川県丸亀市、すなわち地元出身のアーティスト猪熊弦一郎(いのくま げんいちろう)の作品を所蔵する公立美術館です。

谷口吉生 設計 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 写真:建築とアートを巡る
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丸亀市猪熊弦一郎現代美術館とは

丸亀市制施行90周年記念事業として、地元丸亀市出身の洋画家・猪熊弦一郎を記念する丸亀市猪熊弦一郎現代美術館が開館したのは1991年です。

略称はMarugame Genichiro-Inokuma Museum of Contemporary Artの頭文字をとってMIMOCA(みもか)です。

猪熊弦一郎からは丸亀市に約2万点の作品が寄贈されただけでなく、美術館開館にあたり、いくつかの条件が提示されたそうです。

・駅前であること ・現代美術展を開催する美術館であること ・子どもの教育に力を入れること

このことから「猪熊弦一郎美術館」ではなく「猪熊弦一郎現代美術館」という名称なのですね。

猪熊弦一郎は、美術館を「心の病院」と言い、誰でも気軽に訪れることができて、元気を取り戻す場所であるべきだと考えていました。

谷口吉生 設計 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 写真:建築とアートを巡る

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館の建築

猪熊弦一郎が存命中に開館した美術館なので、細部に渡り本人の想いが詰まっています。そんな美術館建築を設計したのは、子どもの頃から猪熊弦一郎と交流があったという建築家、谷口吉生です。

猪熊弦一郎は「美術館の建物はそれ自体がひとつの芸術作品になるようなものにすべき」という考えを持っており、まさにその想いをそのまま具現化したのが谷口吉生です。

MIMOCAの建築は本当に芸術作品そのものです。ですから、世界中から美術館として、そして建築として見学に訪れる人が絶えません。

また、谷口吉生は「美術館建築だけでなく丸亀駅前広場を含め駅周辺を一体的にデザインすること」を提案し、そのランドスケープをアメリカのランドスケープデザイナー、ピーター・ウォーカーが手がけることになりました。

谷口吉生はピーター・ウォーカーとMIMOCA開館の4年後に開館した豊田市美術館でもタッグを組んでいます。

谷口吉生 設計 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 写真:建築とアートを巡る

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丸亀市猪熊弦一郎現代美術館が魅力的なワケ

MIMOCAが他の美術館の追随を許さない魅力的なところは、星の数ほどたくさんあるのですが、特に魅力的で且つわかりやすいポイントをピックアップしていきたいと思います。

○めちゃくちゃ駅前

MIMOCAの魅力のひとつにその立地があります。

誰もが気軽に立ち寄れる場所であることは、猪熊が生前出した条件のひとつです。

JR予讃線丸亀駅の改札を出て南口に出たら迷いようがないくらい駅前です。

駅前から美術館は大きな額縁の絵が飾ってあるように見えます。

谷口吉生 設計 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 写真:建築とアートを巡る

○猪熊弦一郎作品だけじゃない

もう一つの魅力はは、猪熊弦一郎の作品を所蔵・展示する美術館だけでなく、猪熊弦一郎自身が条件とした現代美術の展覧会を開催する美術館でであるところです。

このことはリピーターとしてはとても重要で、個人の記念美術館だといろいろな切り口で展覧会を開催していても、結局同じ作家の展覧会となってしまうので、わざわざ遠方まで何度も足を運ぶ動機になりにくいというのが正直なところ。

しかし!MIMOCAは猪熊作品だけでなく、同時代のアート、すなわちゴリゴリの現代美術の展覧会を美しい谷口建築で鑑賞できるのです。

これは、とてつもない魅力のひとつです。

再訪時は西條茜の「ダブルタッチ」展が開催されていました。

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○狂気に近い技法と設計

谷口吉生の建築が押し並べてそうであるように、ここMIMOCAも狂気とも思えるような施工技術が多用されています。

目地の統一も目を見張るポイントですが、私が今回驚いたのは、ファサードの壁画です。

前回も前々回も訪問した時には近づいたり、ひいたりして何度も見ていたのに肝心な技法に気づいていませんでした。

谷口吉生 設計 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 写真:建築とアートを巡る

猪熊が描いた作品を壁画化しているのは、壁に絵が描かれているのではなく、白い石に黒い石で象嵌がなされているのです。

ヒエー!これは施工技術というより、工芸の超絶技巧そのものです。

遠目から見て大満足していた過去の自分にこの技の凄さを伝えたいくらいです。

谷口吉生 設計 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 写真:建築とアートを巡る

このように、MIMOCAは個人の記念美術館でありながら、現代美術の企画展も同時に楽しめるだけでなく、端正で美麗な谷口吉生建築がまるで ”施工技術のデパート” 状態であることが、人々を魅了し惹きつけて止まない理由だと思います。

丸亀市猪熊弦一郎現代の展示室

展示室は、1階から3階まで螺旋を描くように階段で繋がりながら展開されています。

谷口吉生 設計 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 写真:建築とアートを巡る

展示室と展示室同士も緩やかにつながり、人の気配や作品の様子が互いに見えるようになっています。

中央の吹き抜けは清々しく広々としていて気持ちいい空間。

3階の展示室からは天井と壁の間の開口から外がチラ見えしており、外とのつながりと空間の広がりを感じるデザインに。

谷口吉生 設計 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 写真:建築とアートを巡る

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丸亀市現代美術館のCafé MIMOCA

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館には、Café MIMOCAカフェミモカ)というミュージアムカフェがあります。

今回は残念ながら利用できませんでしたが、前回訪問時はここでしっかりコーヒーブレイクの時間を持ちました。

窓からは、大空と滝、そしてまるで空に描いたドローイングのような立体作品が置かれています。もちろん猪熊作品です。

窓からそんな様子を眺めながら美術館でみた作品について振り返る時間を過ごすことができます。最高!

カフェは美術館の入館料を払わなくも利用可能です。

谷口吉生 設計 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 写真:建築とアートを巡る

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館の一日

今回初めて丸亀に宿泊したので、MIMOCAの1日を観測してみました。

谷口吉生 設計 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 写真:建築とアートを巡る

▲夜の美術館。

美しい建築はいつみても、どんな状況でも美しいのです。それを実証してくれるこの姿!

谷口吉生 設計 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 写真:建築とアートを巡る

▲日の出前。まだ照明が点灯しています。

宿泊したからこそみられる姿です。早起きしましたよ!このためだけに。

谷口吉生 設計 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 写真:建築とアートを巡る

▲朝がやってきました。照明は消灯されました。駅前なので人や車も動き出します。

その様子を見守るような佇まいのMIMOCA。

谷口吉生 設計 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 写真:建築とアートを巡る

▲太陽が美術館のフレームに差し込みます。ドローイングのように見える立体作品の影もまた美しい。


全国に個人のアーティストの記念美術館はたくさんありますが、ここ丸亀市猪熊弦一郎現代美術館は、通常の個人美術館とは一線を画します。

それは、作家本人が存命中に開館したことと、大きく関係していると思われます。そして、作家本人が美術館の在り方をとてもよく理解していたことが、今日のMIMOCAの存在につながっていると強く感じました。

MIMOCAは、アートファン、建築ファン、そして、私のようにその両方が好き!という方は必ず訪れるべき美術館です。

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丸亀市猪熊弦一郎現代美術館への行き方

電車・バス

JR四国予讃線「丸亀駅」から徒歩約1分。

車の場合

瀬戸中央自動車道 坂出北IC から約15分、高松自動車道 坂出ICから約15分。

丸亀駅前駐車場を利用。

建築交流ネットワーク

吉生氏が設計した美術館・博物館は「建築交流ネットワーク協定」を締結していて、MIMOCAもその一員です。

これまで建築とアートで紹介してきた参加施設についてもご覧ください。
(豊田市美術館、東山魁夷せとうち美術館、MoMA、平成知新館も訪問済みですがまだ記事にしていません)

基本情報

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

開館時間:10:00 – 18:00

休館日:月曜日、年末

観覧料:常設展は一般300円、高大生200円、中学生以下無料
企画展は展覧会による

住所:香川県丸亀市浜町80−1 MAP

アクセス:丸亀駅前駐車場を利用(2時間まで無料)

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