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宮島達男のCounter Void を見たことがありますか?震災を機に消灯した六本木けやき坂の幻のパブリックアート


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Counter Void

Counter Void(カウンターボイド)という作品は六本木ヒルズ開業の2003年に設置されました。場所はテレビ朝日本社社屋で、けやき坂沿いの壁のようなもの自体が作品です。

作者である宮島達男が追求する「生と死」をテーマに制作した作品で、高さ3メートル20センチの数字6個が異なるスピードで9から1までカウントダウンします

▲昼間は白い壁に白く輝く数字が表示され、夜は白く光る壁に黒い数字が表示される仕組みです。

▲夜の六本木けやき坂での象徴的な光景を作り出していた作品でもありました。

六本木ヒルズけやき坂という昼夜を問わず多くの人が行き交う場所にある派手な作品であるにも関わらず、この「Counter Void」をSNSで見かけたりすることはほとんどありませんし、話題になったりすることもありません。

なぜならこの作品は10年以上前から消灯され動きを止めているのです。

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2011年3月13日に消灯

Counter Voidが消灯したのは2023年の3月13日。前々日、2011年3月11日の東日本大震災の発生を受け、その2日後の13日に節電の意図と犠牲者への鎮魂の意を込めて、作家自らが作品を消灯することを決断しました。

▲消灯したCounter Void。

逆に今ではこれがけやき坂の普通の景色になってしまいました。

ただその後、何回か再点灯しています。

5年後の再点灯

最初は消灯してから5年後、つまり東日本大震災から5年経った2016年3月11日、大震災後に消灯していた「Counter Void」を一度だけ再点灯しようというプロジェクトのもと、消灯したままだった作品が3日間限定で再点灯されました。

そして、この再点灯は2016年から2018年までの3年間という期間限定で毎年実施されていました。

この再点灯は、NPO法人インビジブル(渋谷区)が東京都、アーツカウンシル東京ともに2015年4月に立ち上げたリライトプロジェクト(Relight Project)」による開催でした。

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2018年最後の再点灯

3年間限定の再点灯プロジェクトの最終年、つまりCounter Void最後の再点灯は2018年3月11日から13日までの3日間。「Relight Days 2018」というプロジェクトでした。

時間は3月11日が14:46〜23:59、3月12日と13日は10:00〜23:59でした。

▲このプロジェクトも今年が最後ということで点灯の瞬間に立ち会うべく、忘れられない日時である3月11日の14:46に間に合うよう六本木ヒルズを訪問しました。

▲前日もこの作品の前を通りましたが、特に告知があるわけでもなく、本当に点灯するのだろうかと少々不安に思いつつ出かけてみると、このように多くの人が集まっていました。

宮島達男さん本人もいらしてました。 

いよいよ点灯

14:46は真昼間ですから、点灯の瞬間は思っていたよりずっと地味でした。

▲久しぶりにみるこの作品大きいですね。いつもは無機質なただの壁ですが、数字が点灯されるだけでその意味合いが全然違ってきます。

夜の「Counter Void」

この作品の真骨頂はやはり夜です。

近所なのをいいことに3月11日の消灯に立ち会うべく夜も行ってきました。

▲点灯するCounter VoidをTSUTAYA ROPPONGIから見たところ。

▲行き交う人のシルエットでさえ作品となるような変わらぬ美しい姿をみせてくれます。

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3.11の夜

23:59に消灯されるということで、その時間は作品前にてスタンバッていました。

▲点灯の際とは異なり、様子を見守る人は全くいませんでした。さらに日曜の夜なので人通りもほとんとありません。

ネガポジ反転

23:58になるとネガポジが反転しました。

▲暗がりに真っ白な数字が浮かび上がり、より数字のカウントダウンが強調されます。 

消灯の瞬間

23:59きっかりに消灯されると思い、20秒前になったら動画を取るつもりで構えた瞬間

目の前が真っ暗に。なんと30秒前に消灯されてしまったのです。

どうやら秒単位まで正確ではないようです。

せっかく夜中に出かけて行ったのに残念です。

最後のRelight Project

Relight Projectからのアナウンスは

このプロジェクトは、東⽇本⼤震災の記憶を⾵化させず、⽣きることに向き合う機会をつくるため、「生と死」をテーマに作成されたこの作品の再点灯を開催してきました。

しかし、東⽇本⼤震災から7年が経過し社会の状況が変化する中、新たな形でこのテーマに向き合う必要があると考え、3回⽬となる今回を最後に「Relight Days」 の開催終了されることになりました。

というもの。そしてRelight ProjectによるCounter Voidの再点灯は2018年を最後に終了しています。

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Counter Voidの点灯パターン

Counter Voidの点灯パターンは昼間の数字黒、昼間の数字白、夜の数字黒、夜の数字白の4種類です。

どのようにこれらが出てくるかは決まりはなく、作家もわからないそうです。

▲昼間、背景が点灯し数字が黒のパターン。

これは見やすいです。

また、この頃まではここにトーマス・サンデルの「アンナの石」というパブリックアートが設置されていました。これも現在は撤去されています。Counter Voidが消灯し暗くなったので歩行者にとって危険だからでしょう。

▲背景が消灯し数字が白いパターン。

これは案外分かりづらくて気づかない通行人も多かったと思います。

▲夜間、背景が点灯し数字が黒のパターン。

これが一番見やすく分かりやすいです。2023年風に表現すればSNS映えする光景です。

▲そして背景が消灯し数字が白い(点灯)しているパターン。

常時消灯している今は、数字が見えない状態になっている訳です。

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2020年の再々点灯

ところが、2020年に「Counter Void 2020-2021」として再々点灯が行われました。

これは森美術館の『STARS展』で宮島達男が取り上げられたことに合わせての期間限定のものでした。

▲2020年、つまりCOVID-19のパンデミックが始まった年の再々点灯は集まる人もなく静かに行われました。

点灯するのも夏に1週間、秋は月に1日、そして年末年始に10日間。全部で24日という短いスケジュール、パンデミックで六本木から人の姿が消えている時期というのも重なり、この再々点灯を見た人はあまり多くなかったと思います。

▲この時は12月24日のクリスマス・イブから年明けの1月3日までの年末年始にも再々点灯。つまりけやき坂のイルミネーションと「Counter Void」をダブルで観ることができました。ただパンデミック真っ只中ということで、本当ならカップルなどでごった返すけやき坂もひっそりとしたもの

今のところ「Counter Void 2020-2021」の再々点灯でCounter Voidを見られたのが最後。次の機会があるのかないのかわかりませんが、しばらく点灯している作品を見ることができないのは確かなようです。

今や消灯しているのが普通になってしまい、そこにこのような深遠なアート作品が存在していることを知らない人も多いような状況になっています。

作家である宮島達男の考えや作品のオーナーであるテレビ朝日の考えもあるでしょうが、できれば定期的に再点灯し人々の記憶から忘れ去られないようにしてもらいたいなと思います。

Counter Voidはそこにあるのに観ることができない、いわば幻の作品となっていますが、宮島達男の作品は東京都内の美術館で観ることができますし、パブリックアートとして展示されている作品もあるのでそちらに足を運んでみてはどうでしょうか。

2020年の再々点灯の様子はこちらの記事で詳しく紹介しています。

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