静岡県浜掛川市にあるなんとも可愛らしい建築藤森照信設計のねむの木こども美術館どんぐりと数寄屋建築の名手中村昌生が設計を手がけた吉行淳之介文学館に行ってきました。ねむの木学園には他に坂茂設計のねむの木こども美術館緑の中があるのですが、改修工事中で建物を見ることができませんでした。
ねむの木学園、ねむの木村
ねむの木学園は、女優の宮城まり子が1968年に設立した肢体不自由児の養護施設です。設立当初は静岡県の御前崎市にありましたが、1997年に現在の掛川市に移転してきました。
この掛川市の山中に点在する社会福祉法人ねむの木福祉会及び学校法人ねむの木学園が運営する施設群の総称をねむの木村と言います。
このねむの木村には、学園の他にねむの木こども美術館どんぐりと緑の中、そして吉行淳之介文学館があります。これら2つの美術館と1つの文学館は一般の人でも入場可能な施設です。
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ねむの木こども美術館どんぐり
2007年に開館した美術館で、ねむの木村にある美術館、文学館の中では一番新しい施設です。
ねむの木こども美術館どんぐりは、ねむの木学園の創立者の宮城まり子さんが、浜松市にある秋野不矩美術館を見て、自然に溶け込む美術館をと藤森照信に設計を依頼したそうです。
秋野不矩美術館は、長野県茅野市にある藤森建築第一号の神長官守矢史料館を秋野不矩さんが見て、藤森照信に設計を依頼しています。いい建築を作ると自然に繋がっていくものなんですね。
どんぐりの様子は動画を参照ください。▼
どんぐり
この美術館の特徴はなんと言っても、ドーム型の大展示室の屋根が特徴です。このドーム屋根の部分をどんぐりに見立て「どんぐり」という名称になっています。
この特徴的などんぐり屋根は、学園の子供たちや職員が総出で手もみした”手もみ銅板”を柿状に葺いてできています。
ただ、完成してからいくら手で揉んでも、これだけの数になると微妙な差は吸収されてしまい、見た目は均質化して、印象が工業製品に近づいてしまったと藤森照信が語るように、秋野不矩美術館の茶室望矩楼や茅野市の茶室高過庵のあの手作り感の溢れる印象とは少し異なるかもしれません。
麦の絵
美術館の外壁には学園の子供たちよる「麦の絵」が描かれていて、藤森建築の中でもすこぶる可愛さを発揮しています。
また、どんぐり状の先に続く屋根にのる芝棟には季節になると、青々とした芝生と赤い花が咲くそうです。この芝棟の芝を植える作業は、学園の子供たちと共に秋野不矩美術館同様、縄文建築団が参加しました。
館内には、学園の子供たちが描いた作品約120点が展示されています。ただし、館内の撮影は禁止です。
どんぐり基本情報
10:00-17:00 入館料:一般・大学生600円、 小中高生:250円
静岡県掛川市上垂木3399−1 MAP
アクセス バス/JR掛川駅北正面5番乗場「ねむの木美術館前」行で約20分
車/新東名森掛川ICから約10キロ(約15分)、東名掛川ICから(約20分)
*コロナウィルス感染拡大により2022年3月末日まで休館中2022年4/1より再開予定
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吉行淳之介文学館
ねむの木学園の宮城まり子の事実婚のパートナーであり、「驟雨」で芥川賞を受賞した小説家です。また妹は女優の吉行和子で、母がNHK連続テレビ小説「あぐり」の主人公のモデルで日本の美容師の草分けだった吉行あぐりです。
吉行淳之介文学館は、本人が70歳で亡くなった5年後の1999年に開館しました。設計は中村昌生です。
中村昌生
文学館の設計は中村昌生です。中村昌生は建築史研究の対象とされていなかった茶室や数寄屋建築を本格的に研究し、そこで得た知見を生かして設計活動を行った建築史家であり建築家です。
京都伝統建築技術協会の設立や、桂離宮の修理事業など、伝統建築の保存活動も行なった人物です。
和でも洋でもない空間
酒田市にある中村昌生設計の出羽遊心館を訪れた宮城まり子さんがその佇まいに感銘を受けて文学館の設計を依頼しています。
和でも洋でもない、安らぎのある空間で、茶室のある文学館を作りたいというのが宮城まり子さんの要望でした。
まさにその言葉通りの凜とした空間で、心落ち着く建物です。奥には平家の茶室があり、特別な展示の時だけ開かれます。
館内は撮影禁止です。
文学館基本情報
10:00〜17:00 入場料:一般・大学生600円 小中高生250円
静岡県掛川市上垂木3190-1 MAP
アクセス バス/JR掛川駅北口「ねむの木美術館前」行約20分吉行淳之介文学館前下車
車/新東名森掛川ICから約10キロ(約15分)東名掛川ICから(約20分)
Advertisementねむの木こども美術館 緑の中
どんぐりから700mほどの場所にあるねむの木こども美術館緑の中は、1999年に開館した美術館です。設計は坂茂です。
豊かな緑を背景に自然光だけで作品を鑑賞することができる美術館なので、館内には自然光が降り注ぎ、建物の内外が一体となった空間です。
しかし、大変残念ながら改修工事中で、外観でさえ全く見ることができませんでした。▼
静岡県掛川市上垂木 MAP
はま松ハウス
2012年竣工の静岡県浜松市内にある個人邸です。本当にたまたま通りがかって見つけました。こちらも手もみ銅板による建築で、屋根からはニョッキリと植木が飛び出しています。
雨樋のデザインも藤森照信建築らしい形状です。▼
はま松ハウスを見られたおかげで静岡県の藤森照信建築はコンプリートしました。
しかし、ねむの木村の建物群は、緑豊かな季節に来た方がよりよく見えると思います。
機会があれば「緑の中」の改修工事が完了したのちの新緑の季節に再訪したいです。
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