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マテリアルの魔術師!?坂茂設計 ヴェルサイユ賞を獲得した世界で最も美しい美術館「下瀬美術館」へ行ってきた!


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世界で最も美しい美術館” として2024年にヴェルサイユ賞を受賞した坂茂(ばん・しげる)設計の「下瀬美術館」へようやく訪問することができました。ユネスコが世界の優れた建築物やインテリアを表彰する「ヴェルサイユ賞」に2024年から新設されたミュージアム部門で、最優秀にあたるヴェルサイユ賞を受賞したことでいま最注目の美術館、美術館建築です。

ここは、カラフルな可動式展示室ばかりが注目されがちですが、見どころはそこだけじゃない!ということが実際に訪問してよくわかりました。

というわけで、たった一回しかない”初訪問の興奮と感動”を文章にしてお届けしたいと思います。

題してマテリアルの魔術師!?坂茂設計 世界で最も美しい美術館「下瀬美術館」へ行ってきた!です。

坂茂がどうしてマテリアルの魔術師なのか?そして、下瀬美術館の見どころを興奮状態のままレポートします。

坂茂設計 世界で最も美しい美術館「下瀬美術館」写真:建築とアートを巡る

下瀬美術館様ご招待いただきありがとうございます。


下瀬美術館とは

下瀬美術館は、プリツカー賞受賞建築家の坂茂の設計で2023年に開館しました。

広島県大竹市の晴海臨海公園に隣接し、瀬戸内海の大海原と宮島(厳島)を見渡すことができる海岸沿いに位置する私立美術館です。

巨大な市立公園に隣接する(入口は公園と一緒)ので、21_21 Design Sightが東京都の公園の土地を借りて運営しているように、下瀬美術館も公園の土地を市から借りて運営しているのかな?と思って聞いてみましたが、ちゃんと土地も取得して運営しているそうです。そりゃそうか。

美術館の運営は建築金物、建材を始めとしたパーツを製造販売する丸井産業株式会社です。

この丸井産業の創業60周年を機に美術館構想がスタートしています。

所蔵は、主に現社長の下瀬氏とその両親のコレクションで国内外の美術工芸品を中心としています。

下瀬美術館の建築

行ってみて驚いたのは、メディアで散々取り上げられているカラフルな可動式展示室だけではなく、至るところ建築として面白いポイントがあることです。

そうです!下瀬美術館は”逆マーライオン状態”だったのです!(←褒めてる)

実際に自身で訪れてわかった下瀬美術館のすごいところを書いていきたいと思います。

坂茂設計 世界で最も美しい美術館「下瀬美術館」写真:建築とアートを巡る

下瀬美術館のミラーガラスの外観!

下瀬美術館に到着して驚いたのは、外壁が鏡面だったことです。

そもそも可動式展示室以外、どんな建築なのか分かっていなかった!(予習不足を否めません)

昼 坂茂設計 世界で最も美しい美術館「下瀬美術館」 写真:建築とアートを巡る

鏡面になっているのは、外壁だけでなく内部にも!建材として内装にも鏡(ミラーガラス)がふんだんに使われていました。

また、美術館には海岸と平行にエントランス棟、企画展示棟、管理棟の3棟が建っています。

この3棟は長さ190メートル、高さ8.5メートルの「ミラーガラス・スクリーン」によって一体化されているのです。

文章だと伝わりにくいけれど、大阪・関西万博のタイパビリオンのようにミラーガラスが重要な要素なのです。

タイパビリオンは建築を半分しか作ってないものを鏡で倍に見せているけれど、下瀬美術館は、そういうわけではなくて美術館を巨大な鏡が貫いている感じです。

夜 坂茂設計 世界で最も美しい美術館「下瀬美術館」  写真:建築とアートを巡る

また、このミラーガラスは、日中は中からは見えていますが、外から中は見えません。

夜になると内部の光の効果で、外から中が丸見えになるのです。

鏡面の効果で昼と夜とでは、まるで違った表情を見せる不思議な美術館です。鏡面恐るべし。

この”見える見えない建築”は、ヴェンダースの映画「パーフェクトデイズ」の舞台となったTHE TOKYO TOILETで最も有名な坂茂の二つのトイレを想起させますね。魔術師だなぁ〜

早朝 坂茂設計 世界で最も美しい美術館「下瀬美術館」写真:建築とアートを巡る

下瀬美術館のエントランス棟

ミラーガラスの外壁をもつエントランス棟は、楕円形の丸みを帯びたフォルムが印象的で、天井にも大きな特徴があります。

2本の柱を起点に、ヒノキ集成材の梁がまるで枝を大きく広げるように放射状に延びており、大きな傘を広げたようにも見えます。

木の温もりとダイナミックなデザインが調和し、時折壁面に貼られた鏡の効果で、視界がまやかされるのも面白い空間です。

そして、エントランス棟だけではないのですが、置かれている椅子、ベンチ、テーブル、間仕切りが全て坂茂デザインのものです。

坂茂設計のホテルスイデンテラスレストラン「ヴァンサンテ」コミニティカフェ「はぐくむ湖畔」でも目にした家具も多くありました。

そう、ここでは鏡と共に木材がとても重要なマテリアルです。自然素材の代表ともいうべき木と共に多用されているのはミラーガラスです。魔術師だなぁ〜(2回目)

坂茂設計 世界で最も美しい美術館「下瀬美術館」写真:建築とアートを巡る

下瀬美術館の可動式展示室

さて、ようやく可動式展示室について。

この展示室へ入るまでの渡り廊下も海側はガラスですが、逆側はミラーです。

ここで、ミラー越しに”私と可動展示室”の自撮りができるわけなんです!

だから一人で訪ねても下瀬美術館に行った写真が撮れるんですね。

まぁそこまで坂茂が考えていたとは思いませんが。

坂茂設計 世界で最も美しい美術館「下瀬美術館」写真:建築とアートを巡る

この可動式展示室は、カラーガラスで覆われており、1辺が10 mの正方形で、水盤の上に建っています。

ご存じのとおり、可動式なので展示室の位置を移動することができます。

展示室同士は渡り廊下で繋がっていて、その入り口は全て自動ドアで繋がっています。

自動ですから人がいなければ勝手に閉じてしまうので、自分がいる展示室から隣の展示室はチラリと垣間見ることしかできません。

展示室を端から端まで見通すことはできないようになっているのです。

絶対にあえてですね。これは。

展示室の内部は純然たるホワイトキューブ。ですから、内部にいる時は、水盤の上であることも、海が目の前にあることも、全くわかりません。

そこに展示してある作品としっかり向き合うことができるようになっているのです。

可動式展示室は、水盤に設置されているものの空調は効いているし、照明だってもちろんあります。

そこで私は聞いてしまいました。設備はどこに?

10m角の展示室ですが、実は片側に設備が入っているので内部は完全なる正方形ではないんだとか。

体感ではわかりませんでしたが、そうりゃそうだよね。

坂茂設計 世界で最も美しい美術館「下瀬美術館」写真:建築とアートを巡る

そして、電気などの配管は美術館から繋がる銀のパイプ!

意匠的に処理されているから全然気にならないし、むしろかっこいい!!!さすがです。マテリアルの魔術師だわ〜(3回目)


下瀬美術館の望洋テラス

SNSやメディアで目にする俯瞰の図は、美術館の上にある望洋テラスから撮影されたものです。ここに行くのを忘れてはいけません。宮島をバックに雄大な海と下瀬美術館を昼も夜も見ることができます。

坂茂設計 世界で最も美しい美術館「下瀬美術館」写真:建築とアートを巡る

また、ここに登ると上からカラーガラスの美しい可動式展示室を俯瞰で見られるだけでなく、巨大なミラーガラス・スクリーンの存在もよくわかります。

この望洋テラスへ登るには美術館のチケットが必要となります。

夜間は宿泊者のみの利用となりますから宿泊する意味が、宿泊する理由が!絶対的にあるのがお分かりかと思います。

宿泊施設「下瀬アートヴィラ/SIMOSE ART GARDEN VILLA」についてはこちらの記事で紹介しています。

坂茂はマテリアルの魔術師だった!

下瀬美術館に行って、気づきました。

これまで、スイデンテラスや前述のカフェ、レストランだけでなく、豊田市博物館や、富士山世界遺産センターPam、そしてTHE TOKYO TOILETのプロジェクトの中でもヴェンダースの映画効果もあり、世界的に有名になった透明から不透明になる二つのトイレなど、色々坂茂建築を巡ってきました。

坂茂というと一般には、紙管の建築が取りあげられがちですが、手がけた仕事は決して紙管の建築ばかりではありません。(紙管の建築は大震災という非常事態に生まれたものです。)

日の出 坂茂設計 世界で最も美しい美術館「下瀬美術館」写真:建築とアートを巡る

ガラスや木を巧みに使いこなした建築がたくさんあります。むしろ紙管の建築より多いのです。代表作のポンプドゥー・センター・メスやスウォッチ・グループ新本社は、紙管の建築ではありません(訪れていないので内装に紙管が使用されているかどうかは未確認)

村野藤吾が階段の魔術師と言われていますが、坂茂は紙管の建築家ではなく、紙、鏡、ガラス、木などあらゆるマテリアルをその場所、その用途、その建築に合わせて魔術師のごとく使う建築家です。

ですから、坂茂はマテリアルの魔術師だったのです!

下瀬美術館のエミール・ガレの庭/Émile Gallé’s Garden

下瀬美術館には、とっても素敵なお庭があるのです。

春の訪問だったので八重桜を始め、藤の花まで見ることができました。大きな藤棚が設えられていたので、今後成長していくのが楽しみです。

坂茂設計 世界で最も美しい美術館「下瀬美術館」写真:建築とアートを巡る

この庭は、美術館のコレクションにもなっているアール・ヌーヴォーを代表する工芸家、「エミール・ガレの庭」です。

実はガレは、芸術家であると同時に植物学者としても活動していたんだとか。

ここの庭園では、そんなガレの作品にたびたび登場する植物を中心に、瀬戸内の温暖な気候に合わせた植栽を見ることができます。

エミール・ガレの庭は、美術館のチケットが必要となります。


下瀬美術館の展覧会

これまでさまざまな展覧会を開催してきましたが、現在下瀬美術館で開催されているのは、この美術館としては初となる現代美術の展覧会です。

詳細はこちら《周辺・開発・状況 -現代美術の事情と地勢-》

展覧会の様子は動画で▼

下瀬美術館のミュージアムショップとミュージアムカフェ

下瀬美術館のエントランス棟には、ミュージアムカフェとミュージアムショップがあります。

カフェもショップも広い円形の空間のなかに間仕切りなしで設置されています。

カフェのテーブルと椅子はもちろん坂茂。三日月型のテーブルはつなげたり離したりできるデザイン。

テラス席で海と可動展示室を眺めながら過ごすことも可能!

ミュージアムショップには下瀬美術館のオリジナルグッズがたくさんありました。坂茂の紙管のオブジェまで!

私は、思わずエミール・ガレの作品をモチーフにしたバックが可愛すぎて即購入しました。かわいい。

このバッグを持って広島のおりづるタワーに行ったらスタッフの女性に「あ!下瀬美術館!私も好きなんです!」と声をかけられ、しばし広島の美術館談義に花を咲かせてしまいました!

坂茂設計 世界で最も美しい美術館「下瀬美術館」写真:建築とアートを巡る


下瀬美術館への行き方

電車・バス

広島駅からJR西の山陽本線、大竹駅または玖波駅(くばえき)で下車。こいこいバスに乗車し「ゆめタウン」で下車して徒歩5分。

土日祝は大竹駅との間で無料シャトルバスが運行され、10分で下瀬美術館に到着します。

車の場合

山陽自動車道(広島岩国道路) 大竹IC から約5分。

乗用車73台収容の無料駐車場があります。

坂茂建築▼

基本情報

下瀬美術館

開館時間:9:30 – 17:00

休館日:月曜日、年末・年始、展示替え期間

観覧料:一般 2,000円、高大生 1,000円、大竹市民 1,500円、中学生以下無料
企画展・特別展は展覧会による

住所:広島県大竹市晴海2丁目−10−50 MAP

アクセス:JR大竹駅または玖波駅からこいこいバスで20分+徒歩5分。
土日祝はJR大竹駅から無料シャトルバスで10分。
自家用車では大竹ICから5分、無料駐車場あ


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