「ストップ!!ひばりくん」や「すすめ!!パイレーツ」など日本の漫画史に残る伝説的作品を数多く手がけてきた天才漫画家であり、少女や女性を描かせたら右に出るものはいないとされるイラストレーターでもある江口寿史(えぐちひさし)の展覧会「NO MANNER」が元麻布のkaikai kiki gallery(カイカイキキ ギャラリー)で開催されるということで早速行ってきました。
PRスーパーフラット
元麻布にあるkaikaikiki galleryは、日本の現代美術を代表するアーティスト村上隆が運営するギャラリーです。
村上隆は言わずもがなの存在ですが、一応説明すると日本国内だけにとどまらず海外でも大活躍しており、現在全世界的に最も有名なアーティストの1人です。
更に村上隆は2000年から、日本の伝統美術の平面性とアニメや漫画に代表される現代日本のオタク文化の平面性に共通する造形上の特徴を抽出した概念「スーパーフラット」を提唱しています。
その村上隆が、江口寿史の展覧会に寄せて書いた文章の中で____”いくつものレイヤーが折り重なる本展では、私、村上隆が2000年より20年以上提唱している「スーパーフラット」の真骨頂を理解して頂けると考えています。”(kaikai kiki gallery 展覧会について 村上隆KAIKAI KIKI GALLERYより引用)____
という言葉で文末を締めくくっています。
漫画やイラストと現代美術の垣根を軽々と往来し、超越したスーパーフラットの真骨頂、江口寿史の作品を見てみましょう。
展覧会構成
今回の個展では、新作ペインティング15点が展示されています。
作品は、村上隆の平面作品がそうであるように、全て江口寿史が描いた原画を元にカイカイキキの工房で制作され、江口寿史本人による入念なチェック作業を経て完成したものです。
そして、重要なのは昨今、日本の現代美術業界で非常に多くみられる平面的で漫画のような女性像を描く作品全ての根源であり始祖は、77年に漫画家としてデビューし数々のヒット作を世に送り出した江口寿史であるということです。
ですから、kaikai kiki galleryにいよいよ本家本元の登場!というわけです。
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大型作品
入ってすぐのギャラリースペースには9点の大型ペインティングが展示されています。
入ってすぐに、「あ!」となる作品です。
銀箔の上にシルクスクリーンされた2つの女性像、これは誰もが知るポップアートの巨匠アンディ・ウォーホル1963年の作品「ダブル・エルビス」ですね。
複数存在するとされるエルビスプレスリーのシリーズですが、江口寿史の作品もカラーとモノクロが展示されています。
そしてモノクロ作品の背景は、ウォーホルと違って日本画でよく用いられる技法の銀箔が貼られているようです。
また、カラーバージョンはドットで構成され、アメコミ、いわゆる漫画をモチーフとしたポップアートのもう1人の巨匠ロイ・リキテンシュタインを彷彿とさせます。
シェイプト・キャンバス
女性の立像の形に切り取られたシェイプト・キャンバス(変形キャンバス)の作品3点が目をひきます。
▲本当の人間の等身大くらいのスケール感です。
写真の人物の身長が約175cmくらいなので、この作品がだいたいどのくらいなのかわかるかと思います。
中央がストップ!!ひばりくんの主人公ですね。
ストップ!!ひばりくん、実は男性という設定やその美しさなど、何もかもが半世紀くらい先を行っていましたね。今考えると。
ちなみにカウボーイハットをかぶる女性のハットには、セックス・ピストルズ、ザ・フー、キッスそしてローリング・ストーンズのバッジがついているのでよくみてみてください。
▲カイカイキキで制作された作品ですから、仕事が綺麗すぎてまるで工業製品のようです。
ですから正面から見ると、キャンバスってわかりにくいのですが、サイドからよく見ると繊維が見えるのでキャンバスだとわかると思います。
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中型作品
大型作品、シェイプト・キャンバス作品と共に展示されている中型の作品2点もみてみましょう。
▲この作品の女性が使うヘッドフォンやレコードプレイヤーは江口寿史が若い頃に人気のあったオーディオブランドTechnics(テクニクス、松下電器)です。
手に取るレコードは大貫妙子の1978年にリリースされた「MIGNONNE (ミニヨン)」ですね。
江口寿史は、高橋幸宏が亡くなってすぐに追悼のイラストをインスタグラムに投稿していましたから、70〜80年代から音楽シーンで活躍していたミュージシャンに思い入れが強いのでしょう。
▲このスペースでは一番小さいキャンバス作品です。
この作品はシルクスクリーンにもなる予定だそうです。
畳スペースの作品
kaikai kiki galleryのオリジナルな空間、畳スペースには中型の作品が展示されています。
▲ヘッドホンを装着している右側の作品は、今回の展覧会のリーフレットなどにも使われている作品です。
正方形で色違い3パターンの作品が並びます。これもウォーホルの代表作マリリンからの引用でしょうか。
▲畳スペースは床暖房になっているので、とっても快適です。このスペースは靴を脱いで上がります。
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シルクスクリーン作品
ペインティングだけでなく、版画作品もあります。
額装されているのが版画(シルクスクリーン)なのでわかりやすいと思います。
▲ペインティングと違ってシルクスクリーンの版画作品は、手が届く範囲の価格のはずです。
興味がある方はギャラリーに問い合わせてみてください。
エディションは各100部です。エディション100というのは、この作品が100部制作されるという意味です。
▲版画のシルクスクリーン作品は全部で3種類展示されていましたが、今はまだないけれど、もう1作品あって全部で4作品なんだそうです。
左のヘッドフォンの女性の作品がもう1種類あるようです。(ブログ上の黄色いヘッドフォンに赤いリュックの作品)
ギャラリートーク
長野市の北野カルチュラルセンター、岩手県立美術館など全国を巡回している江口寿史イラストレーション展 彼女—世界の誰にも描けない君の絵を描いている—展が先日千葉県立美術館で終了したばかりです。
この展覧会も連日大盛況だったようですが、なんと!カイカイキキにもご本人が登場する日があるようです。
しかも村上隆と江口寿史によるギャラリートークです。夢のような組み合わせですね。
しかも参加費無料、予約も不要です。
1月29日(日) 15:00〜 kaikaikiki galleryにて
(サインの依頼等はNG)
村上隆の主宰するスペースで江口寿史の展覧会をみる日が来るとは、ストップ!!ひばりくんを夢中で読んでいた頃の自分に教えてあげたい。
そして、江口寿史をあんまり知らない若い世代の方々には、ぜひ、あのアーティストやあのアーティストが、多大なる影響を受けているのが江口寿史なんだということをこの機会に知ってもらいたいですね。
PR撮影について
基本的にいつもkaikai kiki galleryは写真撮影可能です。今回も確認したところ写真撮影も動画撮影も可能だそうです。
ただし、フラッシュや自撮り棒などはNGだと思います。
皆さんで気持ちよく鑑賞できるように常識的な行動をとりましょう。
基本情報
「NO MANNER」 江口寿史
2023年1月17日(火)- 2023年2月7日(火) 11:00〜19:00 日月祝休 入場無料 港区元麻布2丁目3−30 クレストビル B1F MAP アクセス:東京メトロ日比谷線広尾駅徒歩約8分、都営新宿線麻布十番駅徒歩約15分、東京メトロ日比谷線・都営新宿線六本木駅徒歩約14分 |