下瀬美術館にご招待いただき、坂茂(ばん・しげる)設計の ”世界で最も美しい美術館” を堪能した後は、同じく坂茂設計のSIMOSE ART GARDEN VILLAに宿泊し、坂茂建築と瀬戸内の海をじっくり体感してきました。
今回は下瀬美術館のレポートに続き、実際に宿泊したヴィラのレポートです。
やっぱり宿泊したら泊まらないと見られない景色、光、風、をたっぷり味わいたいものです。
下瀬美術館には行きたいけれど、宿泊はどうしようかなぁと思っている方々の背中をドーン!と押すレポートをしたいと思います。

下瀬美術館のSimose Art Garden Villaとは
SIMOSE ART GARDEN VILLAは、「森のヴィラ」と「水辺のヴィラ」から成っています。
各々5棟のヴィラで構成されているので計10棟ということになります。
もちろん全て坂茂の設計です。
「森のヴィラ」は、5棟それぞれ全く違う建築です。これまで坂茂が設計した別荘建築をここ下瀬のためにリデザインした4棟とここ下瀬のために新に設計した1棟から構成されています。
1棟1棟が森の中に点在していてプライバシーが守られています。さらに、森のヴィラでありながらどのヴィラからも瀬戸内の海が見えるという素晴らしいシチュエーションです。
「水辺のヴィラ」は、ガレの庭に隣接し、海岸線に沿って5棟が並んでいます。そのヴィラは、可動式展示室同様に水盤に浮いているかのように建っています。もちろん、眼前には瀬戸内の海と宮島が広がります。
ここのヴィラは全て13歳以上でないと宿泊することができません。(家具の家のみ10歳以上)
要するに、大人のための大人のヴィラなのです。
俄然行く気になりませんか?

SIMOSE ART GARDEN VILLAの建築
SIMOSE ART GARDEN VILLA のいくつかをご厚意で見学させてもらいましたので、紹介します。
紙の家
ヴィラの中で最も坂茂感の高いヴィラがこちらです。

紙管による間仕切りが部屋の中で曲線を描き、その先には浴室と露天風呂があります。
露天風呂のある坪庭まで紙管の間仕切りは続きます。要するに屋内から屋外まで続いているのです。間仕切りには途中紙管が扉になっていて間仕切りの外側に出られるようになっていました。なぜ、扉があるかというと‥。
私が最も驚いたのは、とんでもなく径の太い紙管が独立して立っていました。もしや、、これはトイレ?と思って扉を開けてみたら大正解!トイレでした!特注の紙管だそうです。
紙管の扉の先にはこの巨大紙管にあるトイレへの導線だったのです。
紙の家は、1995年に山中湖に建てられた別荘をリデザインしています。

ダブルルーフの家
屋根と天井のダブルルーフになっているヴィラです。
リビングルームと寝室が離れていて、スキップフロアになっています。
一段下がった寝室の上には屋外ジャグジーがあって、海を見渡しながらジャグジーに入れる非日常感満載のヴィラです。
元々は山中湖の傾斜地にあった別荘をリデザインしています。傾斜地だからスキップフロアになっているのですね。

水辺のヴィラ:キールスティックの家
水辺のヴィラは、55m2のA棟からE棟の5棟が横に並んでいます。広さは同じですが、内装やレイアウトは各々違います。
共通しているのは、特徴的な断面を持つオーストリアの木造素材Kielstegを壁や屋根など全面的に使用していることです。
本来は内部に使う建材なので見えないものですが、坂茂はこの木造素材を意匠的に見えるように使っています。
三角形の木造素材がハニカムユニットのように並んでいるのがキールスティックです。

「壁のない家」に宿泊
そして、私たちが宿泊したのは10棟のヴィラの中で最も広い「壁のない家」です。元々は1997年軽井沢に建てられた別荘をリデザインしたものです。
その名の通り壁がありません。壁ではなく全面サッシュです。そのサッシュを開け放つと確かに壁がない!ものすごい開放感です。
その正面には雄大な瀬戸内の海と宮島、左側には下瀬美術館の可動展示室が木々の合間から見え隠れしています。
どんだけ非日常なの!!

思わず叫びたくなるようなシチュエーションです。私は、旅の宿はテンポラリーな居場所なので「非日常を」求めます。
ここはこれまで泊まったどのホテルよりも非日常感高いかもしれません。
家具も、もちろん坂茂デザイン。フランク・ロイド・ライトの坂茂バージョンの照明もポイントになっています。
壁は確かに一面にしかありませんが、安心してください。サッシュがあるので、全部屋外というわけではありません。(当たり前)
唯一壁のある面は緩くアールを描いて競り上がっています。その裏側に寝室があります。
寝室は完全なる個室なので睡眠は快適です。
1泊で旅立つのが名残り惜しい気持ちにしてくれる部屋でした。
坂茂ファンはもちろんのこと建築好きは絶対泊まって欲しい部屋です。

SIMOSEのヴィラに宿泊すべき理由
建築好きが建築目的で下瀬美術館を訪れた場合なのですが、早朝から夜までの美しい変化が見られることです。
下瀬美術館に到着するのは、多くの人が大抵昼間でしょう。

そして、美術館を堪能していると段々日が暮れていき、短時間しかないマジックアワーが訪れます。
この時間を逃してはいけません。海と空が段々夜へと向かう美しい時間帯です。

刻一刻と海と空の色彩が変化し、その光を受けて美術館の建築も変化します。
そして、漆黒の夜。これも下瀬美術館の醍醐味の一つ。
対岸にあたる厳島(宮島)の南西部は人が住んでおらず灯りもないので、本当に漆黒の闇の中にライトが灯った展示室が浮かび上がります。

夜の22時には照明が消灯するそうなので、ディナーの後にゆっくり堪能したい光景です。
ここまでは実は宿泊しなくてもレストラン利用などで見ようと思えば見られます。
そして私がイチ推しするのはなんと言っても早朝です。
直島のベネッセハウスオーバルがそうであるように、海沿いの宿はゆっくり寝ていては勿体無い!
そこには早朝にしか見られないあまりにも美しい風景があります。

下瀬美術館は宮島のその向こうから日が上るのです!本当にため息が出るような美しい光景でした。
季節よって日の出の時間は変化しますから毎回きちんと調べる必要がありますが、私は早朝5時でこの光景でした。
冬ならもう少しゆっくり寝ていられるはずです。とにかく朝!それも早朝!刻々と変化する朝焼けの海と空が今でも目に焼き付いて離れません。
これを見なくては泊まった意味がありません。断言します!
SIMOSE のレストラン「SIMOSE French Restaurant」
下瀬美術館にはフレンチレストランが併設されています。
宿泊する場合、ディナーと朝食はここでいただきますし、宿泊者専用のフリーラウンジも用意されています。
もちろん宿泊せずにランチやディナー(要予約)だけの利用も可能です。

目にも美しいフレンチをマリオ・ベリーニの413CABに座り、水盤に浮かぶ可動展示室の様子を眺めながらゆっくりといただきました。

朝食は、すっかり日が上った爽やかな海を眺めながら、いただきました。
これぞ非日常!最高〜!
Shimose Art Garden Villaへの行き方
電車・バス
宿泊プランには原則として岩国錦帯橋空港、JR玖波駅、大竹駅、または新岩国駅との無料送迎が含まれています(要事前予約)。
利用しない場合は広島駅からJR西の山陽本線、大竹駅または玖波駅(くばえき)で下車。こいこいバスに乗車し「ゆめタウン」で下車して徒歩5分です。
土日祝は大竹駅間で無料シャトルバスが運行され、10分で下瀬美術館に到着します。
車の場合
山陽自動車道(広島岩国道路) 大竹IC から約5分です。
乗用車73台収容の無料駐車場があります。
基本情報
Simose Art Garden Villa
住所:広島県大竹市晴海2丁目−10−50 MAP アクセス:JR大竹駅または玖波駅からこいこいバスで20分+徒歩5分。 |