初台にある東京オペラシティアートギャラリーで開催中のスペインマジョルカ島出身のアーティストミケル・バルセロの日本初個展を鑑賞してきました。
ミケル・バルセロ
展覧会のポスターを見た時から、その名前と画風から、スペインを代表する画家アントニ・タピエスを想起したのですが、ミケル・バルセロも同じスペイン出身でした。
日本では、あまり知られていないミケル・バルセロですが、1957年スペインのマジョルカ島生まれの65歳です。
バルセロが初めて国際的な展覧会に出品したのは、カッセルで5年に一度開催される「ドクメンタ」で、1982年の「ドクメンタ7」です。なんと、当時のバルセロは若干25歳の超若手アーティストでした。
ちなみに2年に1回開催される国際展ヴェネツィア・ビエンナーレには1984年、1995年、2007年、2009年と4回参加しており、2007年はアフリカ、2009年はスペインの代表を務めました。
バルセロはドクメンタ参加以降現在まで世界的な美術家として活動しています。またその内容もスペインの過去の巨匠ピカソやミロがそうであったように、絵画だけにとどまらず、彫刻、陶芸、版画、舞台、パフォーマンス、などなど多岐に渡ります。
また、出身地マジョルカのアトリエをはじめとして、パリや西アフリカなど複数の制作拠点を持っています。
特にフランス、パリでの創作活動は精力的で、2013年にフランス文化省の芸術文化勲章「オフィシエ」を受賞するほどです。
2020年にはスペイン・カタルーニャ自治州政府よりサン・ジョルディ十字勲章も受章しています。
そんなバルセロの日本初個展ですから、見逃すわけにはいきません。
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展覧会内容
今回の展覧会の会場ですが、オペラシティアートギャラリーの場合、通常は下のフロアだけのことが多いのですが、今回は2フロアを使った大規模個展です。
カンヴァス作品
導入は、大型のペインティング作品が並びます。▼
なんかとっても日本的な絵画もありました。タコが山盛り船に乗っているこの作品は、「たくさんの蛸」2020年です。▼
セラミック
中央の大展示室は、壁面にカンヴァス作品、中央の低い展示台にセラミックの壺が並びます。▼
この壺、一つ一つオリジナリティがあって面白い造形です。▼
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大型立体
会場前半にある大型の立体作品はブロンズです。
オペラシティアートギャラリー展示後半のコリドー空間には、巨大なセラミックの立体が並んでいます。▼
上階への階段手前にもセラミックの動物達です。▼
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ブリーチペインティング
上階の展示室は、スケッチブックのドローイングや水彩などが展示されています。
この黒い肖像画は、ジャベル水という漂白剤で絵を描くブリーチペインティングです。布が漂白されるまで時間がかかるので、描いている時にその描線を確認することができません。ですから暗闇の中、手探りで絵を描くような技法です。
ポートレートのモデルは家族や親しい知人です。これは映画監督のアニエス・ヴァルダです。そっくり!描線が確認できないのに、こんなに特徴を捉えているなんて!▼
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紙作品
出品リストによると絵画は全部ミクストメディアになっていますが、おそらくこれら紙作品は、水彩だと思われます。ガラスケースには数々のスケッチブックが展示されています。▼
映像
上階では、3カ所で4つの映像が上映されています。ループで流れていて、どれもそんなに長くないし、とても面白いのでちゃんと最初から最後まで鑑賞することを強くお勧めします。
スケッチブックの中身をスライド上映▼
最も惹き付けられた映像はこれです。▼
「パソ・ドブレ」(縮約版)6分 2015年にチューリッヒで行ったバルセロと振付家・ダンサーのジョセフ・ナジによるパフォーマンスです。
バルセロは多才な人だということが実感できるパフォーマンスです。▼
こちらの記録映像もとっても興味深い内容でした。一つのモニターで音楽とコラボしたパフォーマンスと壁画制作映像が順番にループで流れます。
スペインのサラマンカで行われた音楽家パスカル・コモラードとのコラボレーションです。音楽に合わせて乾くと消えてしまう水でバルセロが絵を描き、その作品が消えてしまうまでのパフォーマンスです。
「幻影」(縮約版)7分20秒 2017年▼
「大地を描く大ガラス」7分10秒 フランス国立図書館に泥で壁画を描く制作風景▼
期間限定で展示されたパリ国立図書館の壁画は泥で描いているので、クリーニングはなかなか大変そうですが、現状復帰も可能だし、おそらく他の画材よりは安価だし、日本でもこういう試みは積極的に取り入れたらいいのになと思いました。
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基本情報
2022年1月13日[木]─ 3月25日[金]11:00 ─ 19:00 月休
東京オペラシティ アートギャラリー
新宿区西新宿3丁目20−2 MAP
水戸部七絵
prject Nで開催されている迫力の個展の様子。個展というより作家のアトリエに迷い込んでしまったのかと錯覚するような空間です。
コリドー中に匂い立つ油絵具は、まだまだ乾ききっていないんではないかと、歩みを進めたらその先に作家がまだまだ絵を描いているんじゃないかと思わせる不思議な展覧会です。
2022.1.13[木]─ 3.25[金]入場料:企画展「ミケル・バルセロ展」の入場料に含まれる
東京オペラシティアートギャラリーでの過去の展覧会はこちら▼