しなの鉄道とJRの小諸駅周辺で開催されている写真のフェスティバルPhoto Komoroを小諸の街を散策しながら観てきました。
浅間国際フォトフェスティバル
浅間国際フォトフェスティバルは、2018年から始まった写真のフェスティバルです。
2018年、2019年はPHOTO MOYITAの名称で、御代田町の元メルシャン軽井沢美術館跡地を中心としたエリアで開催されました。
2020年はコロナウィルスの影響で中止されたので、今年は2年ぶりの開催です。今年は、御代田町エリアではなく、小諸に舞台を変えて、Photo Komoroが8月からはじまりました。
PHOTO KOMOROは、こもろ観光局と、天王洲に本拠地を構え、IMA galleryの運営など写真関連の業界大手株式会社アマナによって共同開催の写真フェスティバルです。
作品展示スポットは10カ所。出品アーティストは8人。森山大道と小池健輔は2ヶ所での展示です。
10ヶ所のポイントを番号順に鑑賞しましたので順番にレポートします。
小諸城址 懐古園
小諸駅のすぐそばにある小諸城址の懐古園には、3作品が展示されています。
季節はずれの夏日で、紅葉はまだまだでしたが、石垣と豊かな緑の中を散策しながら、作品を鑑賞しました。11月になれば美しい紅葉と共に鑑賞できると思います。
01. 小池健輔
浅間国際フォトフェスティバルの第一回目から毎回参加しているアーティストです。
ヴィンテージ写真を使ったコラージュ作品は、ノスタルジーな空気を纏いつつも、ニヤリとさせる要素を持ち、クセになる世界観です。
会場となる懐古園の酔月橋に、とんでもなく巨大な作品「Boat」が展示されています。あまりにも大きくて近づいてしまうと、逆になんだかわかりません。そのくらい規格外のサイズの作品です。
橋の上から見下ろすとこんな感じです▼
この作品を鑑賞するのにおすすめは対面にある水の手展望台です。展望台から撮った作品の全貌はこちらです。
橋の上から展望台を望む▼
千曲川と山並みの美しい風景を眺めてから、振り返ると小池健輔のちょっと笑ってしまうコラージュ作品を鑑賞することができます。これは、絶対に美術館では見られない風景です。
02. 大坪晶
小池健輔の「Boat」のすぐそばにある武器庫の1階と2階に写真作品が展示されています。木漏れ日が美しい扉の先の武器庫の中は、外とは正反対に薄暗く、倉庫だけに閉鎖的な空間です。そんな薄暗い空間で光を放つ写真作品は、幻想的でハッとさせられました。
2階には2点の展示です。映像と見紛う作品には、武器庫と同じくらいかつての隆盛が嘘のような静かな時間が流れています。▼
03. 伊藤昊
2017年に亡くなった写真家が1964年の東京五輪に沸く銀座を写した写真です。57年前の東京五輪の写真を見ながら、いろんな意味で前代未聞だった今回のオリンピックについて考えさせられる展示でした。▼
小諸駅駅舎
懐古園の出口から徒歩5分ほどで、小諸駅に着きます。展示は、小諸駅へ向かう長い自由通路と駅の改札前のにあります。
04. 山田梨詠
小諸駅への長い長い自由通路にある作品。同じ写真が2枚並んで展示されているように見えますが、よく見ると右側は古い写真と全く同じポーズをとった作者自身です。
作品は両面あるので振り返って見てください。▼
05. 森山大道
改札前の野菜直売コーナーと共存するのは、森山大道の代表作「光と影」のシリーズです。
モノクロで捉えれた森山大道の独特の世界観と、そんな写真には目もくれず、野菜をマジ買いしている地元のおばちゃん達との対比が面白かった。写真フェスならではの光景です。▼
小諸の街中
駅からゆるい坂を登る相生町商店街に2ヶ所、本町に2ヶ所、そして小諸宿の脇本陣だった粂屋の展示の合計5ヶ所の展示があります。
PHOTO KOMOROを見ながらも、小諸の町のあちこちに溢れ出る昭和感に惚れ惚れしました。改めて、いろいろ回ってみたい場所です。
06. 二本木里美
個人的に今回のシチュエーション大賞はこの作品です。
ビルの中央に道があり、そこがトンネルになっていて、そのトンネルの先にある蔦に覆われたビルの1階スナック「夕子」の店舗跡に作品が展示されています。
展示されているモノクロ写真は1970年代のトランスジェンダー達のポートレートです。
写真に写っている時間と展示されている場所に流れている時間があまりにもマッチしているので、時空を飛び越えて過去に戻ったような不思議な感覚に陥りました。ここは、「おおー」と思わず声が出てしまいました。▼
07. 小池健輔
旧吉池歯科が展示場所です。ここがまた、スナック夕子とはまた違った、生真面目な?!昭和が溢れています。▼
懐古園には超巨大作品の展示でしたが、こちらは顕微鏡で覗き見る超極小サイズの作品が3点です。
作品のコンセプトは一貫しているのですが、そのスケールの差が笑いが出るほど大きすぎる小池作品。超巨大作品と超極小作品、スケールを自在に変えられるのも写真の醍醐味の一つです。
顕微鏡で見る超極小作品▼
08. 森山大道
ほんまち町屋館の内部ではなく、建物の壁面には、森山大道の代表作「Stray Dog」があり得ない巨大サイズで待ち構えていました。▼
09. 水谷吉法
歴史を感じる元酒屋さんだった場所に展示されているのは、金屏風に描かれた日本画のような松の写真作品です。▼
奥行きを感じないので、絵画かな?と思うのですが、近づいてみると、やっぱり写真という不思議な作品です。▼
10. ヴィヴィアン・マイヤー
トリを飾るのは、伝説のアマチュア写真家ヴィヴィアン・マイヤーです。
1926年ニューヨーク生まれのヴィヴィアンは、シカゴで乳母の仕事をしながら、仕事の合間に街へ出てシカゴの街の写真を撮りためていました。その数なんと15万点。
それら膨大な写真の数々は本人の死後発掘され、インターネットで瞬く間に広まり、今や世界中の美術館やギャラリーで展覧会が開催されています。
私は、2015年にドキュメンタリー映画『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』を観て知ったのですが、その衝撃たるや、例えようがないくらいです。2020年のAkio Nagasawa Galleryでの日本初個展も当然すぐに足を運びました。
今回のPHOTO KOMOROでみられるのはポートレートのシリーズです。会場は江戸時代の小諸やどの脇本陣だった粂屋です。どうですか、この渋い店構え。▼
ヴィヴィアン・マイヤーの写真を畳の上で観ることになるとは!ご本人も草葉の陰で驚いてるのではないでしょうか。
写真を見ながら小諸のまちをまわってみて、PHOTO KOMOROのキャッチコピー「懐カシクテ古クテ新シイ写真体験 Neo Retro Photo in Komoro」の意味がよくわかりました。
昭和で時が止まったままの場所、もっと古い場所、そして我々が生きている令和という時間。いくつもの時空を自在に行き来するような不思議な感覚の面白いフェスティバルでした。
いろんな芸術祭が各地でたくさん開催されていますが、写真に特化しているのは浅間国際フォトフェスティバルだけです。
今のところ第1回から全部見ているので、皆勤賞狙います。
鑑賞時間
割と狭いエリアに10ヶ所だけなので1−2時間で楽勝と思っていましたが、なんだかんだランチタイムを含んで5時間くらいかけて鑑賞しました。
基本情報
2021年8月28日(土)-11月21日(日) ※会期中無休(10.粂屋火、水休)
01.02.03.懐古園9:00~17:00、
07.旧吉池歯科・09旧大塚酒店10:00~17:00、
10.粂屋11:00~16:00、
05.小諸駅駅舎の展示は6:30~19:30、
04.06.08常時鑑賞可能
入場無料 ※01.02.03懐古園は散策券(大人200円、中学生以下50円)の購入が必要
PHOTO MIYOTA 2018の様子はこちらを参照ください。▼
PHOTO MIYOTA 2019の様子はこちらを参照ください。▼
小諸まで、自動車なら東京からの日帰りも可能です。
新幹線はないので電車の場合は宿泊込みが良いかもしれません。その場合、小諸周辺はビジホや商人宿しかないので、軽井沢を拠点にするのがおすすめです。