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円山応挙との時空を超えたコラボレーション《空想の宙(そら) 「静寂を叩く」 大乗寺十三室|十文字美信》を資生堂ギャラリーで


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資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリーでは2024年8月27日から10月20日(日)までの会期で日本の写真家、十文字美信(じゅうもんじ・びしん)の展覧会《空想の宙(そら) 「静寂を叩く」 大乗寺十三室|十文字美信》が開催されています。

商業写真から出発し、その後は日本の伝統文化や日本的美意識を伝える作品を発表し続けている十文字美信の最新展覧会です。

今回は兵庫県の真言宗の寺院「大乗寺」の客殿をテーマにしたもの。

開幕前日の内覧会にご招待いただいたのでさっそくこの展覧会の様子をレポートします。

資生堂銀座ビル 写真:建築とアートを巡る

▲資生堂パーラーが入るビルリカルド・ボフィル設計の真紅のビル。資生堂ギャラリーはこの地下にあります。

資生堂ギャラリーへは花椿通り沿いの入口から入るのが便利です。

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空想の宙(そら) 「静寂を叩く」 大乗寺十三室|十文字美信

展覧会《空想の宙(そら) 「静寂を叩く」 大乗寺十三室》の舞台である兵庫の大乗寺は決して知名度の高い寺院ではありませんが、そこには江戸時代の絵師、円山応挙(まるやま・おうきょ)とその弟子たちによる障壁画165点が国の重要文化財に指定されており「応挙寺」として親しまれています

資生堂ギャラリー, 2024, 写真:建築とアートを巡る

大乗寺の客殿には1階と2階に大小合わせて13室があり、各部屋には障壁画(しょうへきが)が残されているのですが、客殿全体が立体曼荼羅だと言われています。円山応挙が今で言う空間プロデューサー的な役割も果たしたのでしょう。

十文字美信はこの大乗寺客殿を自然光だけで撮影し、その空間を資生堂ギャラリーの展示空間全体を使って再構成しています。

200年以上前に円山応挙が作り上げた立体曼荼羅を十文字美信がどのように捉え解釈して再構成したのか、そこがこの展覧会の見どころです

展覧会は踊り場から

地下の会場に向かう階段から展覧会は始まっています

仙女 秀雪亭, 十文字美信, 資生堂ギャラリー, 2024, 写真:建築とアートを巡る

▲階段の壁面に投影される仙女。

これは大乗寺客殿の「仙人の間」の「群仙図」の一部です。なおこれは円山応挙ではなく弟子の秀雪亭の作品です。

雪の庭から「孔雀の間」円山応挙を望む, 十文字美信, 資生堂ギャラリー, 2024, 写真:建築とアートを巡る

▲踊り場の右側面に展示されているのは写真作品で《雪の庭から「孔雀の間」円山応挙を望む》。

展覧会のキービジュアルとして使われているもので、雪が降る庭から客殿の孔雀の間と応挙の障壁画を捉えたもの。

大乗寺の場所は兵庫県の香美町。つまり但馬ですから冬になれば雪が降ります

十文字美信, 資生堂ギャラリー, 2024, 写真:建築とアートを巡る

▲他にも客殿の各室を撮った写真が3点、さらに大小の写真が展示され地下へと誘います。

大乗寺十三室の生きものたち, 十文字美信, 資生堂ギャラリー, 2024, 写真:建築とアートを巡る

▲なんて可愛らしいんでしょう!

地下へと続く壁に展示されいる写真は各室の襖や小壁に描かれている生きものをクローズアップしたものです。

鳥とか犬とか。

現代の日本でモノクロでイラストを描いてみましたと言われても信じてしまいそう。応挙たちが描いたものが現代的なのか、それとも200年以上前から綿々とこの感覚が引き継がれてきたのか。

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ギャラリー空間

地下のギャラリー空間での展示のメインはインスタレーション。

「孔雀の間」円山応挙と「仏間」十一面観音像, 十文字美信, 資生堂ギャラリー, 2024, 写真:建築とアートを巡る

▲1795年円山応挙筆による大乗寺客殿「孔雀の間」の障壁画「松に孔雀図」があり、そこに客殿中央部の「仏間」に鎮座する木造十一面観音立像の姿が浮かび上がるというインスタレーションでタイトルは《「孔雀の間」円山応挙と「仏間」十一面観音像》。

この「松に孔雀図」は原寸より大きいですし光源があるので実物より細かい部分まで見ることができます

「孔雀の間」円山応挙と「仏間」十一面観音像, 十文字美信, 資生堂ギャラリー, 2024, 写真:建築とアートを巡る

▲サイズ感はこの通り。江戸時代の襖は高くても175cmくらいですから、人の身長と比べてもそれより一回り大きいことがわかると思います。

またこの写真には中央の観音像が写っていません。実は定期的に「松と孔雀図」に観音像が浮かび上がるというインスタレーションなのです。

観音像が浮かび上がるタイミングで鳴り物が鳴りますから、訪問時にもし観音像が写っていなかったら次の鳴り物の合図を待ちましょう

大乗寺十三室のイリュージョン, 十文字美信, 資生堂ギャラリー, 2024, 写真:建築とアートを巡る

▲奥の展示室には《大乗寺十三室のイリュージョン》が展示されています。

大乗寺客殿は中央に配置された「仏間」とその周囲を取り囲むように配置された10の部屋から成るのですが、襖を開閉することで異なる空間を演出できるようになっています。まさに円山応挙の空間プロデューサーとしての面目躍如。

その客殿を十文字美信が自然光だけで撮影し再配置したインスタレーションです

大乗寺十三室のイリュージョン, 十文字美信, 資生堂ギャラリー, 2024, 写真:建築とアートを巡る

▲これはそのうちの一部。「芭蕉の間」から撮ったもので、左が「山水の間」、右が「孔雀の間」。

障壁画はどれも円山応挙の筆によるものです。

実在する円山応挙の絵と空間を写真として撮り、それを使った新しい空間を絵画的に表現しているということでしょうか。なんとも見応えのある空間です

平日の空いている時間帯に訪問し、この空間に身をおいてゆっくり鑑賞したいものです

撮影について

今回の展覧会は通常の展覧会同様に写真撮影が可能です。ただし動画撮影は禁止です

写真撮影の場合もフラッシュの使用、一脚・三脚や自撮り棒の使用も控えマナーに配慮して撮影しましょう。

フューチャーソリューションLX

今年秋、資生堂の「フューチャーソリューションLX」シリーズの世界観を十文字美信が撮り下ろすコラボレーションが行われます。70年代から資生堂の広告写真を手掛けてきていますからコラボレーション自体は珍しくありませんが、今回の展覧会で十文字美信の最新の世界を見てしまっただけにどのようなクリエイティブが出てくるのか興味深いところです。

大乗寺

大乗寺と障壁画などについては大乗寺のサイトで詳しく紹介されています。

最近の資生堂ギャラリーでの展覧会▼

基本情報

空想の宙(そら) 「静寂を叩く」 大乗寺十三室|十文字美信

会期:2024年8月27日(火) ~ 10月20日(日)

休館日:月曜日

開館時間:火~土 11:00~19:00、 日祝11:00~18:00

入場無料

会場:資生堂ギャラリー

住所:中央区銀座8丁目8−3 資生堂銀座ビル B1F MAP

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