六本木一丁目にある駐日スペイン大使館で、現在スペインを代表するアーティストの1人マヌエル・フランケロの展覧会「モノの言語」が開催されています。共催は長崎県美術館です。
実は、昨年末からこの1月まで長崎県美術館のコレクション展でマヌエル・フランケロ「モノの言語」が開催されていました。巡回展というわけではありませんが、東京の駐日スペイン大使館に場所を移しての開催です。
そして、なかなか中に入る機会の少ない大使館に入れるのもこの展覧会ならではです。
ですから、私はこれまでスペイン大使館で展覧会があると結構な確率で見に行っています。
もちろん、展覧会会場以外をうろうろるすることはできませんし、入場時には金属探知機のゲートをくぐる必要があってセキュリティは厳重ではありますが、展覧会自体はのんびりと鑑賞することができます。
PR写真を版画に
マヌエル・フランケロは、現代スペインを代表するアーティストの一人です。
1953年にアンダルシア州のマラガで生まれ、現在はマドリードで活動しています。
最初は、絵画の分野で名を馳せたアーティストです。その驚異的な細密描写は他の追随を許さず、次世代を担う気鋭のアーティストとして注目されました。
2000年代末から絵筆をデジタルカメラへと持ち替え、新しいプロジェクトへ移行しました。
そして、2002年に版画シリーズ「モノの言語(The Language of Things)」を発表します。
しかし、その約10年前からフランケロはアトリエにある雑多なモノを定期的にポラロイドカメラで撮影し、まるで日記をつけるかのように、それらを撮りためていました。
それらポラロイド写真をもとに版におこし、和紙にプリントされた14点の銅版画作品が今回の展覧会で鑑賞できます。
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展覧会風景
ポラロイド写真を銅版画にしたこの作品群は、とても静かで私的な時間が流れています。
▲フランケロの作品の持つ静かな時間と柔らかな春の日差しが入り込むここの空間の持つ静謐さが相まって思わぬ効果を生み出していました。
それはまるで、この空間全体がインスタレーション作品のように感じてしまったのです。
▲繊細で緻密な作品はひとつひとつ丁寧にじっくり時間をかけて鑑賞したいところ。
そして、それを可能にしてくれるのがスペイン大使館の展覧会です。
▲トップライトから降り注ぐ春の光の美しさ!
スペインらしい?
シエスタがあったりして、何かとおおらかなイメージのスペインですが、だからというわけではないけれど、ちょっと気になった点。
▲そもそもピクチャーレールからワイヤーで吊るす展示方式自体、私は否定派なのですが、まぁ、それはここの空間がギャラリー専用ではないので、許容するとして、その長いワイヤーがビヨンと横から飛び出していました。
マスキングテープで額裏に貼った形跡も見受けられましたが、かなりの数飛び出していました。
とはいえ、訪問者で、そんな細かいこと気にするのは私くらいでしょうから、全てOKです。
▲これら静かな作品群には、見過ごしがちな日常に対するフランケロの鋭い観察力が凝縮されています。
写真のような版画のような、そのどちらでもあり、どちらでもない「モノの言語(The Language of Things)」はフランケロの思想が詰まった重要なプロジェクトです。
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スペイン大使館での展覧会は、昨年訪問したインテリア関係の展示会をのぞいて、ガウディ展以来だったので1年ぶりでした。
開館日や開館時間がフルタイム勤務の人には訪問難易度高めですが、時間のある方は是非行ってみてください。
2022年のガウディ展については▼
基本情報
「マヌエル・フランケロ―モノの言語」展
2023年3月17日-4月18日 月〜木10:00-17:00 金10:00-16:00 土日、4/6 、4/7 休 入場無料 港区六本木1−3−29 MAP |