オランダ王国大使公邸
オランダ王国の駐日大使館(オランダ大使館)は芝公園、東京タワーのお膝元という都心の一等地に位置しています。ここに大使館が移転してきたのは1883年ですから140年ほど昔のこと。
とはいっても日本とは400年以上の外交関係があるだけに、長崎の出島から移転してきたのはつい最近という捉え方もできるでしょう。
通常は大使館に用事でもない限り入ることもないオランダ大使館ですが、隣接するオランダ大使公邸には年に1回、誰でも入場できる日があります。それが「チューリップガーデン一般公開」の日。
▲オランダと言えば誰もが思い浮かべるチューリップが大使公邸の庭で満開になる3月下旬から4月上旬の日に、大使公邸を開放して日本の人々に自慢のチューリップを見てもらおうというイベントです。
PRチューリップガーデン一般公開
この一般公開は入場無料で完全予約制。
以前は当日並べば大行列であってもなんとか入場できたのですが、パンデミック以降は予約サイトから申し込む予約制になりました。人気のイベントということで受付開始からすぐに枠が満杯になってしまいますから、3月に入ったら日々予約サイトをチェックして、申し込みが始まったらすぐにエントリーする必要があります。
チューリップガーデンに咲くチューリップの本数は約16,000輪。春になると大使館前の花壇にもチューリップが咲き誇っているのですが、それを遥かに上回る色とりどりの邸内で見ることができてそれは圧巻です。
諸々の事情やパンデミックのため数年ほど一般公開は中断されていたのですが2022年から一般公開が再開されています。この記事では2023年の一般公開の様子を紹介します。
大使公邸
初代の大使公邸は1923年の関東大震災で倒壊し、今の大使公邸は1928年に再建築されたものです。もうじき築100年になろうかという歴史的建物です。
▲公邸の正門からみたところ。
大使公邸の設計は立教大学の校長も努めたジェームズ・ガーディナーの設計事務所です。
▲前には白いチューリップ。
そして端正な大使公邸の建物。現存する数少ないガーディナーが関わった建築です。それ以前の公邸が関東大震災で倒壊した教訓をもとに、当時の先端技術であったコンクリートが用いられています。
ちなみに六本木のスペイン大使公邸もガーディナー事務所の設計。同じ設計者の同時代の作品ということで両者はよく似ています。
▲コロニアル様式の洋館です。玄関の床は市松模様。
▲玄関ホールから前庭を見たところ。
アメリカ人建築家、ジェームス・ガーディナーは、この公邸の完成を見ずに世を去りました。ですから、オランダ王国大使公邸は、ガーディナーの遺作でもあるのです。
▲チューリップガーデンの公開日には大使公邸も特別公開として普段は入れない場所を見ることができます。
これは背景に両国の国旗が見えるので応接室でしょうか。
▲メインダイニングです。
▲邸内に置かれる花はもちろんチューリップ!
奥には1917年にオランダのデザイナーヘリット・リートフェルトが手がけたレッド&ブルー チェアが見えます。
このようにオランダの伝統家具からモダン家具まで、そしてオランダのアート作品など家具や調度品も見どころです。
▲中央広間です。
開け放たれた扉の向こうは中庭。そして特別公開の日はオランダの木靴を履いた妖精たちが歩き回っていたりします。
実際に大使が住まわれているのか分かりませんが、今も大使館の行事などに現役で使われているようです。
同時代に日本で建てられた邸宅、庭園美術館の朝香宮邸と異なり、こちらは今も竣工時の用途で使われている、いわば生きている100年前の建築です。
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庭園と大使公邸
大使公邸の広間を抜けて次は庭園へ。
▲緑が美しい庭園。庭園にはオランダをイメージさせる大きな木靴が置いてありますよ。
▲でもその前にこのベランダにも注目。
ここ、床の市松模様が庭園美術館のベランダとそっくりですね。
▲庭園のチューリップと向こうに見える大使公邸。まさに日本のオランダという光景です。
▲庭園内のチューリップたち。本当にいろいろな色のチューリップがあるのですね。
▲でも庭園からは周囲の高層ビルや東京タワーも見えて何とも不思議な感覚です。
▲オランダですからね、ミッフィー(ナインチェ)もいます。日本にキティちゃんがいるならオランダにはミッフィーがいるぞというアピールです。
▲そしてここにも嬉しそうに走り回る妖精たちがいました。
一般公開時は滞在時間は30分までという制限がありましたが、公邸の建築を見て庭園とチューリップを見ていると30分では足りないくらい。
とにかく見どころ満載なオランダ大使公邸です。
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オランダ大使館とチューリップ
チューリップは大使公邸だけでなく、公邸と大使館を結ぶ通路にも咲いていて、ここも見学可能です。
▲通路の両脇に連なるチューリップ。通勤が楽しそうです。
▲珍しい種類のチューリップです。
▲たくさん並んでいる様子を見ているだけで癒されますね。
▲ただモダンなオランダ大使館の建物自体は近づくことができません。遠くから眺めるだけ。
ぐっと湾曲した建物の設計はde weger+朝吹建築設計。
▲裏側のオランダヒルズか見たオランダ大使館。
ちなみにオランダヒルズはオランダ大使館が地主だから ”オランダヒルズ” だと思っていたのですが、単にオランダ大使館の隣だからオランダヒルズというそうです。
ストロープワッフル
チューリップガーデン一般公開の日には、チーズで有名なオランダのゴーダという街で生まれたと言われているお菓子「ストロープワッフル」が販売されています。
▲薄いワッフルにキャラメルシロップを挟んだお菓子で、コーヒーなど温かい飲み物を入れたカップの上にのせて、柔らかくしてから食べるのがオランダ風。
ティータイムにぴったりなオランダおやつです。
▲8枚入りのこれが1,000円。容器が可愛いのでお土産にも最適でした。
このように大使公邸の建物、チューリップの庭園、オランダのお菓子など、とにかく見どころが多く楽しいイベントです。チューリップの種類も毎年変わっているようですし毎年通っても飽きることがないと思います。
オランダ大使館の最寄り駅は地下鉄日比谷線の神谷町駅。3番出口から御成門駅の方に向かい芝学園下の信号を曲がって道なりに行けばオランダ大使館です。
これからも毎年予約枠の争奪戦になりそうですが、ぜひ参加してみてください。
基本情報
駐日オランダ王国大使公邸
チューリップガーデン一般公開 : 毎年3月または4月の開花時期 |