JR浦和駅から徒歩で7−8分ほどの場所にある埼玉会館は、前川國男設計の建築です。
埼玉会館は、前川設計の代表作のひとつ東京文化会館などにみられるようなコンクリートのモダニズム建築から、東京都美術館などのように全面的に打ち込みタイルを使用した建築へ移行するちょうど過渡期の建築です。
全面的に打ち込みタイルを使用しつつも所々ポイントにコンクリートが使われています。また、東京都美術館などのようなレンガに見える打ち込みタイルではなく、ランダムな焼き色が美しいタイルが使われていて、非常に温かみのある建築です。
PR埼玉会館
埼玉会館は、1966年に竣工しました。前川國男61歳の時の仕事です。
最近では、皇居のお濠端にあった東京海上日動ビルが惜しまれつつも解体され、今や跡形もなく更地になってしまいました。
そんな中、埼玉会館は、登録有形文化財への指定を目指しているなど、その維持保存に力を入れています。
埼玉会館建築見学ツアー
保存に力を入れている埼玉会館では、定期的に建築見学ツアーを開催しています。今回は、その建築見学ツアーに参加してきましたので、レポートしたいと思います。
ちょうど東京文化会館のバックステージツアーに参加したばかりだったので、その比較も楽しく参加しました。
埼玉会館の建築見学ツアーはいくつかのグループに分けて行われました。集合場所に集まった時点で既にグループ分けはされており、各グループ約10人くらいに対して2名のスタッフがつきます。そのスタッフの方の解説を聞きながら埼玉会館を巡ります。
各グループによって巡る順番が違うので、見学ポイントで他のグループとかち合う事もなく、終始少人数での見学だったのがよかったです。
東京文化会館のバックステージツアーは、有料で競争率も激しくなかなか簡単に参加できませんが、埼玉会館の建築見学ツアーは申込予約制ではあるものの参加費は無料です。
埼玉会館のツアーは申込多数の場合は抽選ということでしたが、実際抽選になったのかそうでなかったのかわかりません。いづれにしても初応募で初参加することができました。もしかしたらラッキーだったのかな?
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埼玉会館小ホール
建築ツアーで最初に見学したのは小ホールです。
▲小ホールのサイドの壁面はコンクリートはつり塗装仕上げで落ち着いた色味で構成されています。
▲コンクリートはつり塗装仕上げの壁の前に吊られた照明は雲丹のようなかわいい形をしています。もちろん、この照明も前川のオリジナルデザインです。
▲座席の色は落ち着いた深いグリーン。通路も同様の色のカーペットです。背後の壁は明るめのブラウン系のプレキャスト音響壁です。
▲扇型に配列された座席にジグザグになった通路が特徴的です。
小ホール上
小ホールの屋上部分も見学することができました。ここは屋外ですが、普段は通行禁止になっているので行くことのできない場所です。
▲大雨の後の建築見学でしたので濡れていますが、見学開始と同時に雨が止み、屋外の見学もできました。屋根が盛り上がっているところが小ホールの天井です。
▲手すり下の意匠も前川らしいデザインに。
▲この屋外照明もかわいい。東京都美術館の屋外照明はルイス・ポールセンでしたが、これはオリジナルのようです。
▲この景色が見たかった!前川國男事務所のスタッフがかかりきりでレイアウトしたというタイルの模様。これを俯瞰で見たかったのです。ちょっと雨上がりで写真だとわかりにくいのですが、細かくデザインされています。また、座面が焼き物の椅子、これ、なんと可動式だそうです。ただ、とんでもなく重いので動かすことは簡単ではないそうです。力に自信のある方は動かしてみてください。
▲小ホール屋上からしか見られない場所です。焼きもののタイルと窓のレイアウトが可愛いですね。
▲この視点も小ホールの屋上部分からのものです。いつかこのコンクリートのベランダに出てみたいなあ。
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大ホール
埼玉会館のメインホールである大ホールです。1315名収容可能な木のホールです。
▲小ホールとは打って変わって明るくて華やかな印象です。華美な装飾はないのに華やかに感じるのは木目の温かみと照明の柔らかさでしょうか。
▲黒いロケットのような照明が個性的です。座席は赤系です。
▲座席の仕切りはなんと大理石!おそらくビアンコカラーラでしょう。ゴージャスですね。
▲感動的だったのが1階席と2階席をつなぐイエローの階段空間です。美しい〜
▲さらに、建築見学ツアーならではの場所。楽屋も見学してきました。なんと鏡の周りに前川カラーの照明が。珍しいですね。
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椅子と照明
埼玉会館にはたくさんの前川ポイントがあります。
▲やっぱり目を引くのは椅子です。おそらく天童木工でしょうね。
▲木で座面がカラフルな椅子と違って無機質でクールな椅子です。
▲大ホール周りにあった椅子。黄色い壁とコーラル系の座面の組み合わせがなんともかわいい。
▲こちらも曲げ木の技が効いているので天童木工でしょう。天井の照明もゴージャスです。
この電球がぶら下がっているタイプで別デザインの照明も大ホールの階段室などにありました。いい感じです。好きだわぁ。
▲壁の前川カラーとマッチしています。
▲内部の照明もオリジナリティあふれるものでしたが、外部の照明も前川國男らしい照明です。前回の訪問は日中だったので点灯している様子を初めてみました。夜の埼玉会館も雰囲気あってすごく印象的です。
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前川ポイント
あらゆるところにポイントがありますが、荒々しいコンクリートが描く柔らかな曲線。これは今でいうギャップ萌えなディティールですね。
▲小ホールの入り口の様子です。
▲小ホールの扉の取手です。中央に行くに従って細くなっているデザインです。濃紺と木のカラーリングがスタイリッシュで知的な印象を受けます。
色とマテリアルの組み合わせの妙が至る所にあってぼーっとしてられない見学会です。それが楽しい!
前回の訪問ではただ訪問したので、一般人が行けるところだけを見学したのですが(当たり前)、やはりツアーに参加すると普通いきなり行っても入れないホール内や楽屋も見られるので楽しいです。
ホールの内部は東京文化会館の方が大掛かりですが、これは予算と利用者や演目等々の違いでしょうね。
東京文化会館より地域に根ざしていてリピーターも多い埼玉会館は、シンプルで飽きのこないデザインになってるなぁと感じました。
埼玉会館の建築見学ツアーについて
興味のある方はぜひ埼玉会館建築見学ツアーに参加してみてください。
2024年の埼玉会館建築見学ツアーは以下の予定です。(事前申込制)
5月11日(土)(終了)
7月6日(土)★夜間ツアー(終了)
8月24日(土)★こども建築見学ツアー
10月19日(土)
12月21日(土)
2月15日(土)
おおよそ1ヶ月前から予約開始予定
予約申込については埼玉会館の公式HPをチェックしてください。
埼玉県の建築
基本情報
埼玉会館
さいたま市浦和区高砂3-1-4 MAP アクセス:JR浦和駅(西口)下車徒歩約6分 |